防衛協力で囲い込み 中国の南シナ海拠点化 装備品移転協定拡大中

外交安保取材

 日本政府が中国による南シナ海の軍事拠点化に対し、南シナ海を囲い込むように沿岸国との防衛協力を拡大している。4月18日にマレーシアとの防衛装備品・技術移転協定に署名し、東南アジアではフィリピンに続き2カ国目となった。インドネシアとも同協定の締結に向けて交渉中で、南シナ海西側のベトナムとの協議も視野に入れる。哨戒機の供与などを通じて沿岸国の海上監視能力を強化し、対中包囲網を敷きたい考えだ。

 日本が防衛装備品の移転に関する協定を締結したのは、全体を通じてマレーシアで9カ国目。武器輸出を事実上禁止してきた「武器輸出三原則」に代わり、政府は平成26年4月に「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。これ以後、米欧の主要国に加えて、アジアの関係国とも協定の締結が広がった。

 新たな三原則は、紛争当事国でないことや国連安全保障理事会の決議に反しない場合などに限って防衛装備品の移転を認めたもので、装備品の国際的な共同開発や他国への供与などに道を開いた。

 28年2月に協定に署名したフィリピンとの間では昨年3月、海上自衛隊の練習用航空機「TC90」2機を貸与した。防衛装備品移転協定に基づく他国への自衛隊機の貸与はこれが初めてで、同年5月には改正自衛隊法を成立させ、装備品の無償譲渡も可能になった。

 今年3月に「TC90」3機の無償譲渡を実現させ、貸与していた2機も無償譲渡に切り替えた。さらに日本政府は装備品の移転だけではなく、パイロットの訓練や装備品の整備支援といった能力構築支援(キャパシティ・ビルディング)もあわせて行っており、受け入れ国との関係強化も図っている。

 外務省幹部は「日本にとっては不要となった練習機でも、フィリピンにとっては哨戒機のようなものだ」と話し、南シナ海沿岸国へのさらなる装備品移転に意欲をみせる。

 1992年に米軍がフィリピンから撤退して以降、間隙を突くように中国は南シナ海で勢力圏を確立した。日本にとって重要な海上交通路(シーレーン)である南シナ海の不安定化は、日本の戦略的利益にかかわる問題だ。

 一方で、中国の海洋進出の脅威は日本が接する東シナ海でも深刻さを増しており、日本は、より近海の東シナ海に防衛の比重を置かざるを得ない。

 南シナ海周辺国への装備品移転を強化する背景には、沿岸国の海上監視能力を高めることで「少しでも中国との勢力を均衡させたい」(日本政府関係者)との思惑もある。

 とはいえ、インフラ開発を中心とした経済圏構想「一帯一路」を推進する中国の資金力は東南アジア諸国にとって魅力的で、中国との対立が先鋭化することは避けたいのが本音だ。

 フィリピンとの防衛装備品移転協定に署名してからTC90の無償譲渡が実現するまでには2年の月日を要した。有償であれば、装備品一つとっても東南アジア諸国には大きな買い物で、無償協力であったとしても、自衛隊にとって不要になったものと譲り受ける側のニーズが必ずしも合致するわけではなく、装備品の移転には時間がかかることも課題だ。 (政治部 大橋拓史)