海外進出を加速する「丸亀製麺」トリドールの野望と死角

経済インサイド

 讃岐うどんチェーン店「丸亀製麺」などを展開するトリドールホールディングス(HD)が脅威的な成長を遂げている。国内外企業の相次ぐ買収で3月末のグループ店舗数は、10年前の10倍弱の世界1540店と急激な伸びだ。創業者の粟田貴也社長が掲げるのは2025(平成37)年時点での世界6000店舗の展開。思惑通りに世界の外食産業で「鳥」のように羽ばたけるか。飛躍への挑戦はなおも続く。

 「常にチャレンジ(挑戦)を続けることで、わが社は次のステージ(段階)へ、未来へ向けて進むことができると信じている」

 今年4月1日。マカオで開いた入社式で粟田社長は194人の新入社員を前にこう宣言した。同社が海外で入社式を開くのは3年連続。16年は米ハワイ、17年は台湾の台北だった。

 海外で入社式を開く狙いについて、同社は「世界を舞台とした事業展開にかける当社の思いを伝えるのが目的」と説明する。実際、同社はここ数年で海外展開を加速してきた。11年4月に米ハワイに初出店したのを皮切りに、現在12の国と地域で200店以上を展開。今年3月末の海外出店数は約530店にのぼり、国内を含む全体の3分の1は海外だ。

 粟田社長が目指すのは海外の出店をさらに加速させることで、25年ごろまでに売上収益を現在の約5倍の5000億円に増やすこと。この時点で描く出店数は世界6000店。うち国内は2000店で売上収益は約2000億円、海外は4000店で約3000億円というのが同社の狙う理想の姿だ。

 4月には主力業態の丸亀製麺をシンガポールで初出店。20年度までに、同国内で10店舗の展開を目指すなど出店ラッシュは続く。ただ、自社の海外出店のみで目標に到達するのは困難だ。

 このため、目標達成に向け、効果的に使うのが国内外企業の買収戦略だ。この1年間でみても国内外で多くの企業を買収した。海外では昨年5月に香港でスパイシー麺の人気チェーン運営会社の買収を決め、11月には同じく香港で、別のスパイシー麺の人気チェーン運営会社を立て続けに買収。香港で同業態のシェア7割を買収で手中に収めた。

 国内でも新業態の発掘に向け買収戦略を繰り返している。とりわけ国内での出店拡大に向けた期待が大きいのが、昨年7月に運営会社の株式を取得してグループ化した大衆酒場「晩杯屋(ばんぱいや)」だ。立ち飲み形態が主力で、割安なつまみを気軽に「一人飲み」できる店づくりが人気で、現在、東京都内を中心に約40店を展開する。トリドールが晩杯屋に目を付けたのは、外食界で難しいとされる大衆酒場の複数店舗展開をこなしていたことなどを評価したため。実際、出店している店舗をみると縦長の店もあれば、横に広いタイプ、2階建てと幅広い。

 トリドールの主力業態である丸亀製麺や焼き鳥店「とりどーる」などが入店できない物件でも出店余地があり、トリドールが収集してきた物件情報を活用すれば、安い家賃で出店を加速できる可能性があるわけだ。トリドールは晩杯屋を早期に500店態勢に増やす方針を示しており、丸亀製麺に続く、国内の主力業態に育成したい考えだ。

 国内外での巧みな買収戦略を駆使して右肩上がりの成長を続けるトリドール。快走を続ける中で死角はないのか。あるとすれば海外展開が急速に増え「補給線」が広がっていることだ。先例はトヨタ自動車。1990年代後半~2000年代前半の急速な海外生産の拡大により「補給線が伸びきった」ことで、末端の拠点まで目配りが届きにくくなった。その結果として、10年頃のトヨタ車の世界各地での大規模リコール(回収・無償修理)につながった歴史がある。

 海外展開が増えるほど難しくなる管理運営の課題をどう克服し、世界有数の外食企業への足場を築くのか。粟田社長の経営力が改めて問われることになる。(経済本部 今井裕治)

 トリドールホールディングス 1985年に兵庫県加古川市で創業。2000年に讃岐うどん「丸亀製麺」1号店を同市にオープンし、急成長を遂げる。現在は丸亀製麺のほか、焼き鳥店「とりどーる」、醤油ラーメン専門店「丸醤屋」、焼きそば専門店「長田本庄軒」などを幅広く経営。国内ではフランチャイズ展開せず、全ての店舗が直営店で店舗ごとに製造している。神戸市に本社を置き、東京都品川区に東京本部を置く。18年3月末時点のグループ店舗数は1540(国内1012、海外528)。