東芝が中期経営計画の発表見送り 再建まだ波乱含み

経済インサイド
東芝は四日市工場で建設中の第6棟への設備投資を米ウエスタンデジタル(WD)と共同で行う(東芝提供)

 東芝が今春に予定していた中期経営計画の発表を見送り、年内を目標に来年度からの経営再建の道筋を示す「変革プラン」を策定する方向に転換をした。4月1日付で会長兼最高経営責任者(CEO)に元三井住友銀行副頭取の車谷暢昭(のぶあき)氏(60)が就任したのを機に、これまでの延長線上ではなく、一から再建策を練り直す。名門復活へ満を持して登板した車谷氏は、どんな青写真を描くのか-。

 「一種の変革が必要となるのに、やってはいけないのは中途半端な計画を出すことだ」

 車谷氏は4月早々、産経新聞のインタビューに応じ、方向転換の理由をこう説明した。

 もともとの中期計画は今春発表を想定し、昨年後半から策定に着手。昨年11月の平成29年9月中間決算の記者会見では平田政善専務が「早期に売上高営業利益率(本業のもうけを示す営業利益の売上高に占める割合)5%」「社会インフラで利益の出せる会社に」と大まかな方向性を打ち出していた。

 だが、これらはいずれも年明けに車谷氏のトップ就任が決まる前までの構想。車谷氏が“ダメ出し”をしたのではと勘ぐってしまうが、車谷氏は「ベストプラクティス(最善の手法)をみんなで努力してつくりたい」と発展的な転換を強調した。

 車谷氏は、本社に経営企画部などから10~20人単位のチームを編成。今後は事業部なども含め100~200人単位の全社プロジェクトとする意向で、5カ年の計画を年内に公表する。

 「一番詳しい事業部長や現場にプランをつくってもらい、膝詰めでモデルをつくっていく」。車谷氏が現場にこだわる背景には自身が銀行出身で事業会社の経験がないこともありそうだが、これまで世界初の数々の技術を生み出してきた東芝のDNAこそが、早期復活の鍵とみているからにほかならない。

 だが、再建への課題は山積している。経営危機のたびに有望事業を売却し、稼ぎ頭の半導体メモリー子会社「東芝メモリ」も売却を前提に「非継続事業」とした結果、30年3月期の売上高はピーク時の半分の3兆9000億円に減り、営業利益もゼロの見通しだ。

 昨年12月の大型増資で3月末の債務超過を解消したが、「財務的に再建のスタートラインに立っただけで道筋は見えていない」と危機感を募らせる。

 こうした中、車谷氏は今後策定する「変革プラン」でどのような具体策を見据えているのか。「コスト」「事業構成」「ビジネスモデル」という3段構えの変革がプランの肝になる。

 まず、挙げるのが基礎体力の強化、すなわち高コスト体質の是正だ。車谷氏は東芝を「極端な人員余剰はないが、売上高原価率が他社に比べて非常に高い」と分析する。単純にいえば、調達価格が高く、製品の販売価格が提供価値に比べて安いということだ。「経営難の企業はここが甘く、ベースの収益力が落ちていることが多い」と言い切る。

 続いて、選択と集中による事業構成の見直しだ。東芝メモリ売却後の事業は「社会インフラ」「メモリーを除く半導体」「エネルギー」「情報システム」「事務機器」という構成。さらに事業部は22~23ほどあるが、この全事業について徹底的に議論し、「勝てるゲームプランができる事業に経営資源を集中しキャッシュを増やす」方針だ。

 最大のポイントとなるのが、東芝の柱となるインフラ事業での「リカーリング(循環)型ビジネスモデルへの転換」だ。製品単品だけを売る仕事のやり方では付加価値を創出しにくい。そこで、モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)で顧客の課題を解決するビジネス(ソリューションビジネス)を提供し、サービス課金などで継続して収益を得る事業モデルの確立を目指す。

 これらのプランの具体的な計画を詰めるのはこれからだが、実際に東芝が再び成長軌道に乗るのは容易ではなさそうだ。

 リカーリングビジネスは日立製作所やソニーなどの競合も強く志向するビジネスモデル。東芝が他社と差別化し顧客を獲得するのは並大抵ではない。また、事業の主体とする社会インフラは3年先の受注が決まっているビジネスであり、収益性を短期間で改善するのは難しい。増資で株主に名を連ねることになった海外ファンドなど「物言う株主」(アクティビスト)が納得するような高い収益水準に数年で引き上げられるかも疑問符が付く。

 そして何より、再建の前提だった東芝メモリの売却はいまなお、見通しが立っていない。当初は3月末を予定していたが、中国当局からの独占禁止法審査の承認は得られないままだ。2兆円の売値が付いた売却手続きがこのまま長期化すれば、財務戦略や成長投資への影響が出るのは必至だ。

 東芝メモリの売却をめぐっては、増資で債務超過を回避できたため、海外株主から撤回を求める声も。

 車谷氏は4月の時点では「方針を変える必要はない」と言い切ったが、その一方で、「浮き沈みの激しい(メモリーのような)ビジネスが適量あるのは悪いことではない」とも述べた。東芝メモリ売却がいつまでも中ぶらりんのままで、変革プランを詰めることはできるのか。波乱含みの展開になる可能性もゼロではない。(経済本部 万福博之)

 東芝の再建問題 東芝は平成27年に発覚した不正会計問題で業績が悪化。その後、米原発事業で巨額損失を出し、29年3月末で負債が資産を上回る債務超過に。2年連続の債務超過で上場廃止になるのを避けるため、稼ぎ頭の半導体事業の売却を決断したが、中国当局からの独占禁止法審査の承認が得られていない。その代わり、巨額増資で債務超過を回避した。不採算のテレビ事業から撤退し、パソコン事業も抜本的な見直しを進めている。

 車谷暢昭氏(くるまたに・のぶあき)東大卒。昭和55年三井銀行(現三井住友銀行)。副頭取などを経て平成29年5月にCVCキャピタル・パートナーズ日本法人会長兼共同代表に就任。30年4月から東芝会長兼最高経営責任者。愛媛県出身。