南極観測船「しらせ」艦長に聞く 「えりすぐりの船乗り」で151日間の任務完遂 「海上自衛官としてロマン感じる」

びっくりサイエンス
南極から戻った海上自衛隊の砕氷艦「しらせ」=19日、神奈川県横須賀市の海自横須賀地方総監部

 日本の南極観測に欠かせない海上自衛隊の砕氷艦「しらせ」が今月11日、151日間の任務を無事に終えて帰国した。今回は例年よりも氷が薄かったといい、日本国内では南極を舞台としたアニメが人気を博した。4回目の南極行きを終えた艦長の宮崎好司1佐に航海を振り返ってもらった。(科学部 小野晋史)

     ◇

 --お疲れさまでした

 「ほっとしている。観測隊を運び、越冬の補給物資も送り届けた。しらせの乗組員も元気に帰ってきた。船や航空機を含め、無事故で任務を完遂できたことは大きい」

 --南極はどうだったか

 「今回は昭和基地周辺の氷が薄く、天候や現場海域を見極めながら順調にたどり着いた。でも着いてからが大変で、氷が薄いと重量物を雪上車で輸送するのは危ない。海水温は0度以下なので(氷が割れて)人が沈んだら大変だ」

 --氷が薄かったとは

 「安全に作業するには2メートル以上の厚さが欲しい。それが今回は1メートルを切る所も多かった。そのため、厚い氷がある基地から500メートルほどの所に船を持っていった。(氷が少なかった)15年前に並ぶ近さだ」

 --地球温暖化の影響か

 「15年前は氷が全くないほどだったが、4年ほど前はものすごく厚かった。温暖化とは直結せず、短期的な現象だと観測隊も言っていた」

 --分厚い氷に船首で体当たりして、割りながら進む「ラミング」はどうだったか

 「氷が薄かったので行きに27回、帰りに1回だった。さすがに1回は少ない。ちなみに15年前は0回だったが、それに次ぐ少なさだ」

 --ラミングのこつは

 「なかなか一言では言えない難しさがある。操艦の号令をかけるのがわれわれ幹部の仕事。その号令をかけるタイミングや、船をおもかじ、取りかじしながら行きたいところに持っていく。そして氷を思うように崩していくのは難しい。自衛官としても、なかなかできない経験だ」

 --南極へ行くには暴風圏も通らなくてはいけない

 「『吠える(南緯)40度、狂う50度、絶叫する60度』という。(この緯度には)大陸がないので次々と低気圧が来て、まともに当たるとしける。ただ、今は船の性能が良くなり、天候も予測できて低気圧を避ければ割と穏やかに航行する。今回の最大傾斜は片側に19度なので、もう片側と合わせても30度ちょっとだった。先代のしらせは最大で片側53度、もう片側は41度で、合わせて90度を超える揺れだった」

 --南極に着いた後は

 「昨年12月23日から今年2月15日まで1カ月半ほど基地周辺にいた。1月中旬に少し離れ、海洋観測の支援やお土産の氷を取ったりした。氷が薄かったので広範囲の行動ができた。ペンギンやアザラシ、鯨も見ることができ、乗組員全員が満喫した」

 --海上自衛官にとって「しらせで南極に行く」ことの意味は

 「船や航空機を運用して国家事業である南極観測事業を行うことは海自の一つの役割だ。それに海上自衛官として南極に行けるのはロマンを感じる。見渡す限り氷の世界。人生観が変わり、小さなことでくよくよしなくなる。命の洗濯に行ける」

 --簡単な任務ではない

 「しらせは幹部の編成が海自で最も充実している。艦長、副長、航海長、運用長といった、運航幹部の上から3~4人は護衛艦の艦長経験者。こんな海自の船は他にはない」

 --それはなぜか

 「単艦で普通の海と違う場に行き、日本からは何の物的支援も得られない。自分たちで解決して帰ってくるだけの経験者、えりすぐりの船乗りを集めている」

 --航海中に女子高生が南極へ行く『宇宙(そら)よりも遠い場所』というアニメが放送され、しらせがモデルとなった船も登場した

 「私はまだ見ていないが、ゴールデンウイークで広島県呉市の家に帰ったら家族で見てみようと思う」

 --艦内で話題になったか

 「私たちの行動中に放送されたので、帰国してから見た人が何人かいて、話題になった。『これで南極に行きたいと思う若い世代が増えるだろうね』などと。これを機に、しらせ乗組員や観測隊員として南極に携わる人が増えてくれると良い」