【経済インサイド】首都圏人気マンションのキーワードはズバリ「始発」「都心へのアクセス」 - 産経ニュース

【経済インサイド】首都圏人気マンションのキーワードはズバリ「始発」「都心へのアクセス」

最寄り駅から秋葉原まで最短17分ながら3LDKが2980万円からという割安な価格帯で人気を集める「シティテラス八潮」=埼玉県八潮市
大型マンションの建設が相次ぐ神奈川県海老名市
マンションの開発が相次ぐ北綾瀬エリア=東京都足立区
 地価や建築費の上昇を受けて首都圏の新築マンションは価格上昇が鮮明だ。不動産経済研究所によると平成29年の平均価格は前年比7.6%高い5908万円と、バブル最盛期以来27年ぶりの水準となった。価格上昇が目立つのは都心や主要駅の駅前再開発などの限られた物件で、家計に余裕のある共働き世帯が買い手の中心となる。しかし、こうした層は限定的。市場の牽引(けんいん)役である若いファミリーを中心とした多くの顧客層は、他のエリアに狙いを定めた購入活動を進めている。人気エリアのキーワードは「始発」「都心へのアクセスのよさ」だ。
 「電車の中から富士山を眺めるのが楽しみだったのに、見えにくくなった」。東京メトロ千代田線北綾瀬駅(東京都足立区)の周辺に住む40代の会社員が指摘するように、沿線ではマンション開発が相次いでいる。
 北綾瀬駅は現在、綾瀬駅で乗り換えなければ代々木上原方面に向かえず、事実上の「支線」の駅だ。ところが、平成31年からは代々木上原方面との直通運行が始まり、都心へのアクセスが一気に向上するため、人気が高まるとみられているからだ。
 価格上昇も顕著。駅前で毎日のようにチラシを受け取るその会社員は「感覚的には1年で1000万円は高くなっているのでは」と話している。総合地所やタカラレーベンなどデベロッパー(開発業者)が販売合戦を繰り広げており、業界関係者は「人気エリアとして大化けする可能性が高い」と指摘する。
 首都圏マンション市場で「都心好調、郊外不調」といったイメージが定着する中、始発駅の人気は意外に堅調だ。大和ハウス工業が27~28年に売り出した「プレミスト高尾サクラシティ」(同八王子市、416戸)は「郊外の大規模物件は苦戦するのでは」といった外野の声を裏切り、7期の分譲が全て即日完売した。最多販売価格帯は3LDKタイプの3500万円台。徒歩6分の場所にあるJR高尾駅は中央線の始発駅で、座って新宿や東京に通勤できることが魅力となったのだ。
 3LDKが6000万円台後半から7000万円台半ばとちょっと値段はお高いが、住友不動産の「シティテラス杉並方南町」(同杉並区、298戸)も人気の物件。31年度には徒歩1分の東京メトロ丸ノ内線方南町駅を基点として、乗り換えなしで東京や新宿に直接アクセスできるようになるからだ。
 利便性という観点から脚光を浴びているのが、東京都足立区に隣接する埼玉県八潮市。この地で同社が販売しているのが「シティテラス八潮」(493戸)で、これまでのモデルルームへの来場者のうち荒川区や江戸川区といった都内の東部や北部の住民が約6割を占める。
 こうしたエリアのマンションは都心に近いにもかかわらず割安感があったが、地価の上昇などによって手が届きにくい価格になりつつある。一方、シティテラス八潮は、つくばエクスプレスの最寄り駅から秋葉原駅(東京都千代田区)まで最短17分という近場にかかわらず、3LDKで2980万円からという割安な価格帯。若いファミリー層をひきつけている。
 神奈川県の中央地域に位置する海老名市も新たな激戦区として注目を集めるエリアの一つ。小田急電鉄の特急ロマンスカーが2年前から海老名駅に停車するようになり、小田急の複々線化によって都内への通勤時間が大幅に短縮されたのが大きな理由だ。
 西口の再開発エリアを中心に、地上31階建ての「リーフィアタワー海老名アクロスコート」(売り主は小田急不動産など・304戸)やツインタワー型の「グレーシアタワーズ海老名」(同相鉄不動産など・477戸)、「海老名ザ・レジデンス」(同サンケイビルなど・412戸)といった大型物件の開発が相次いでおり、駅の通路沿いには各物件の大きなポスターがずらりと並ぶ。
 手に届きやすい価格帯も注目の的。海老名ザ・レジデンスの3LDKの価格は3700万円台からだ。
 始発やアクセスといったキーワードに大型商業施設を組み合わせると、購入層を引き寄せる磁力は大きく増す。例えばプレミスト高尾サクラシティの場合、120店舗で構成される「iias(イーアス)高尾」との一体開発が決め手となった。海老名のマンション群も「ららぽーと海老名」まで徒歩数分という利便性が人気の要因だ。
 業界関係者がこれからマンション開発が活発化すると指摘するのは、神奈川県東部を基盤とする相模鉄道の沿線。31~34年度にJR東日本、東京急行電鉄と相互乗り入れを始めるためで、主要駅の二俣川(横浜市旭区)から新宿までの所要時間は、15分程度短縮される見通し。このエリアを得意とする相鉄不動産を中心に開発競争は激化するとの見方が強い。
 「働き方改革が進み(場所の制約を受けずに柔軟に働く)テレワークが普及すれば、郊外型マンションの優位性が再び見直されるはず」-。業界内ではこうした見方も浮上しているが、テレワークの本格普及については、まだまだ時間を要するのは必至だ。
 当面は、始発と都心へのアクセスのよさをターゲットとした開発・販売合戦が主流となりそうだ。(経済本部 伊藤俊祐)