【経済インサイド】資金調達、地元同意、エネルギー政策…原発専業「日本原電」に立ちはだかるいくつもの壁 - 産経ニュース

【経済インサイド】資金調達、地元同意、エネルギー政策…原発専業「日本原電」に立ちはだかるいくつもの壁

日本原子力発電の東海第2原発=茨城県東海村
日本原子力発電の東海第2原発=茨城県東海村
東海第2原発の安全対策に必要な資金について日本原子力発電(右側)から報告された原子力規制委の審査会合=4月5日、東京都港区
敦賀原発1号機の原子炉格納容器上部=福井県敦賀市
本体建設工事が中断している敦賀原発3、4号機の建設予定地=福井県敦賀市(加藤浩二撮影)
 原子力発電を専門に手掛ける日本原子力発電の経営の綱渡りが続いている。東京電力福島第1原発の事故後、同社は全く再稼働できず収益が悪化。一方で、再稼働を目指す東海第2原発(茨城県)の安全対策費は膨らみ、株主の東京電力ホールディングスなどに資金調達の支援を頼まざるを得ない状況だ。政府が太陽光発電など再生可能エネルギーを電源の「主力」とする方針を示す中、原発の「パイオニア(先駆者)」を自任する同社の存在価値が問われている。
 「東電と東北電力から資金支援が得られるのは確実といえるのか」「確実に支援頂けると考えている」
 原子力規制委員会が4月5日に開いた東海第2原発の審査会合。委員からの質問に、日本原電の木村仁常務はこう強調した。
 日本原電が保有する4基のうち2基は廃炉作業中で、残る東海第2原発と敦賀原発2号機(福井県)も稼働停止が続いている。敦賀3、4号機の増設計画の国の審査は、福島第1原発事故以降は中断したままだ。
 収益の大半をまかなう「販売電力料」は、東電など大手電力5社が支払う維持・管理費など基本料金のみ。平成29年3月期は最終損益が64億円の赤字(前期は12億円の黒字)に転落し、経営状況が悪化している。
 そのため再稼働の可否を判断する規制委は昨年11月、1740億円に上る安全対策費の調達に関し、債務保証の担い手などを示すよう要求。日本原電は、東海第2原発の電気を購入する東電と東北電に支援を要請していた。
 これに対し、東電、東北電は3月30日に書面で「資金支援を行う意向がある」と回答した。両社ともに「法的拘束力のある約諾ではない」と条件を付けたため審査会合では委員から確認が入ったが、審査は一つのハードルを越えた形だ。
 だが、経営の安定には依然として課題が山積だ。日本原電の廃炉を除く2基のうち敦賀原発2号機は昨年末に安全審査を再開したが、直下に活断層があるとの指摘がある。日本原電は否定するが、規制委が認めれば廃炉は必至だ。
 「最後のとりで」ともいえる東海第2原発も原則40年の運転期限を迎える今年11月までに、再稼働審査と延長運転の審査に合格しなければ廃炉となる。全ての原発が廃炉になれば、電力販売を柱とする経営が成り立たなくなる恐れがある。
 東海第2原発が審査に「合格」しても、再稼働には地元同意が不可欠になる。日本原電は3月に茨城県と立地自治体の東海村に加え、水戸市など周辺5市も対象とする新たな安全協定を結んだからだ。安全協定に法的拘束力はないが、5市の一つでも反対すれば再稼働は困難になった。
 さらに、政府のエネルギー政策の転換が大きな課題を突き付ける。政府は今夏にまとめる「エネルギー基本計画」で、原子力への依存度を「可能な限り低減する」という方針を維持する一方、再エネを電源の「主力」と明記する見込み。日本原電の村松衛社長は「(原子力は)再エネと同じ非化石エネルギーとして、低炭素化に必要な電源に位置付けてほしい」と主張。他電力の廃炉支援や海外事業で生き残りを図る考えだが、原発専業会社は成長を描きにくい環境に陥っている。
 経営改善に向け、日本原電は来年1月に本社を東京・神田から、賃料の「約4割」安い秋葉原周辺に移転する予定。ただ、業績改善には、本業の「発電」による電力販売の復活が欠かせない。
 東海第2原発の再稼働を実現して経営を立て直すことができるのか、原発専業会社の役割は終わるのか-。昭和41年に国内初の商業用原発である東海発電所の営業運転を実現した日本原電は大きな岐路に立っている。(経済本部 会田聡)
 日本原子力発電 昭和32年設立の原発専業会社。東京電力ホールディングスをはじめ大手電力9社と電源開発が出資する。茨城県にある国内初の商用原発の東海発電所は廃炉作業中。福井県の敦賀原発1号機も廃炉が決まり、2号機は原子炉建屋直下に活断層があると指摘され、再稼働は見通せない。電気が売れなくても大手電力から受け取れる基本料金が収益源になっている。平成29年3月期連結売上高は1099億円、最終損益は64億円の赤字。
 東海第2原発 茨城県東海村で、昭和53年11月に営業運転を始めた日本原子力発電の沸騰水型軽水炉。出力は110万キロワットで、水戸市など半径30キロ圏内の自治体に約96万人が暮らしている。平成23年の東日本大震災で自動停止し、同年5月から定期検査中。日本原電は原子力規制委員会に対し、再稼働に向けた審査を26年に申請、29年11月には運転期間の20年延長を申請した。