【経済インサイド】ANAがビジネスジェット機のチャーター手配ビジネスに参入するワケ - 産経ニュース

【経済インサイド】ANAがビジネスジェット機のチャーター手配ビジネスに参入するワケ

ホンダジェットの客室。奥にはトイレがある=3月28日、東京都大田区(日野稚子撮影)
ホンダジェットのコクピット。見やすい液晶パネル画面が特徴=3月28日、東京都大田区(日野稚子撮影)
ホンダジェットの昇降口。扉を開くと備え付けの階段がお目見えする=3月28日、東京都大田区(日野稚子撮影)
ホンダジェットの後ろ姿。翼幅(主翼の端から端までの長さ)は約12メートルと大型旅客機に比べれば小ぶりだ=3月28日、東京都大田区(日野稚子撮影)
ホンダジェットの昇降口横に書かれたロゴ=3月28日、東京都大田区(日野稚子撮影)
「ホンダジェット」の前で記念撮影に応じる(左から)双日の藤本昌義社長、ANAホールディングスの片野坂真哉社長、ホンダエアクラフトカンパニーの藤野道格社長=3月28日、東京都大田区(日野稚子撮影)
「ホンダジェット」の前で記念撮影に応じる(左から)双日の藤本昌義社長、ANAホールディングスの片野坂真哉社長、ホンダエアクラフトカンパニーの藤野道格社長=3月28日、東京都大田区(日野稚子撮影)
 全日本空輸を傘下に持つANAホールディングス(HD)が、ビジネスジェット機のチャーター手配事業に今夏参入する。一部の大手企業が幹部の海外出張時に航空機をチャーターしていることに着目した。総合商社の双日と共同出資会社を設立。ホンダの子会社で小型ジェット機「ホンダジェット」を製造・販売するホンダエアクラフトカンパニーとも連携する。航空機をチャーターすれば仕事の効率を高められるとアピールし新市場を開拓する。
 「投資家向け広報(IR)で、海外の投資家を短期間に効率的に回るような需要があると思う」
 3月28日、羽田空港の全日空格納庫。タイの首都バンコクから飛来したホンダジェットの横で記者会見した片野坂真哉(かたのざか・しんや)ANAHD社長はこう語って自信をにじませた。
 ANAHDが参入するチャーター手配事業のメインターゲットは企業や財界の幹部、政府要人だ。顧客は、全日空が就航する北米や欧州の空港で、各国の国内定期便に乗り換える代わりにチャーター便を使う。
 ANAHDが51%、双日が49%を出資して新会社「ANAビジネスジェット」を設立する。まず、北米での乗り継ぎ便や日本から海外への直行便を手配。平成30年度下期中に欧州、31年度以降にハワイや東南アジアでも展開する方針だ。
 ANAHDが自らビジネスジェット機を保有してチャーター便を運航するのではなく、チャーター便を運航する企業に客の希望する日程を伝えて手配するビジネスだ。米国ではチャーター便運航は現地法人に限られ、自ら乗り出すのは「現実的ではない」と判断した。
 双日は、全日空の航空機調達で長年のビジネスパートナーであることに加え、米領グアムや日本でビジネスジェット機の運航を手がけている。藤本昌義社長は「(日本から全日空の国際定期便)ファーストクラスで米国に着くと出入国審査までは全日空スタッフのおかげでスムーズだが、(米国内の)国内定期便で転々と回ると乗り継ぎで時間がかかり、飛行機を待たなくちゃいけない。(それを解消したいという)ニーズは多いと思う」と指摘。事業開始3年後には売上高10億円規模になると見積もる。
 日本の企業幹部が、チャーター便で国内外を移動するという事例はあまり聞かない。しかし、ANAHDグループ経営戦略室経営企画部の吉田秀和副部長は、製造業を中心に十数社の経営幹部に聞き取りした結果、「役員の海外出張が入ると、現地支社のスタッフが四苦八苦しながらチャーター便を手配していた」と打ち明ける。
 では、米国でビジネスジェット機をチャーターすればどれくらいの費用になるのか。日本を出発し、ロサンゼルス→フェニックス→サンフランシスコ→ロサンゼルスの出張は、ホンダジェットを使えば米国滞在が4日間から2日間に短縮されるとの試算だった。この旅程の場合、搭乗2週間前購入の米国内の定期便航空券(ビジネスクラス利用)と3泊分のホテル料金を合わせた費用は1人当たり30万円から。ホンダジェットだと、チャーター代に1泊分のホテル料金などを含め同60万円程度。これとは別に着陸料や駐機料が必要だが、トータルコストは定期便利用の2倍プラスアルファだ。
 ANAHDはビジネスジェット機をチャーターすれば出張日程を短縮できるほか、機内で会議などもでき、時間を有効活用できるとPRする。航空大手の同社が手がけることで安心感を高められるとも見込む。吉田氏は、富裕層向けのぜいたく品という“誤解”が利用を阻んでいると強調する。
 ホンダエアクラフトの藤野道格(みちまさ)社長も「欧米では普通にチャーター便が使われているのに、日本ではぜいたく品の印象がある」と説明する。
 ホンダエアクラフトは今回、ANAビジネスジェットに対し、渡航距離や搭乗人数など顧客ニーズに合わせ、ホンダジェットを所有するチャーター便運航企業の紹介などの支援を行う。
 藤野氏は「北米や欧州への出張でホンダジェットを知ってもらいたい。日本にもホンダジェットが離着陸できる空港が84あり、東京-仙台間は30分と新幹線より速い」とPRした。
 記者会見に集まった報道陣はホンダジェットの機内を見学。内装の色調は落ち着いたアイボリーで統一され、客席は4席。身長165センチの記者が乗り込むと、少しかがまなければ移動できない。
 ホンダジェットの隣に駐機していた全日空の旅客機と比べると、やはり「小さい!」と思ってしまったが、時間を無駄にせず、効率よく移動できるのであれば、“許容範囲”かもしれない。
 ANAHDは来年、総2階建ての超大型機エアバスA380機をハワイのホノルル便に投入する。「マウイ島やハワイ島など(島々を渡り歩く)アイランドホッピングを楽しみたい旅行客にもチャーター便を提供したい」(片野坂社長)と夢は膨らむ。
 3社の合言葉は「ビジネスジェットをもっと身近に!」。効率よく出張できるというメリットが日本の企業に受け入れられれば、ANAHDの新ビジネスは大きく飛躍しそうだ。(経済本部 日野稚子)