閉幕後も“迷走”続ける平昌五輪 事後活用計画定まらず 費用負担も論争に

スポーツ異聞
山林として復元予定だった平昌五輪のアルペンスキー場はスキー場として存続させる計画が持ち上がった(ロイター=共同)

 平昌冬季五輪が2月25日に閉幕した後も“迷走”を続けている。歓声に沸いた競技場の事後活用計画がいまだに確定しておらず、維持運営費の出資比率をめぐっても政府と開催地・江原道の交渉が難航しているのだ。韓国メディアからは、事後計画をまともに立てられず、巨額負債を抱えた2014年仁川(インチョン)アジア大会の二の舞を危惧する声があがっている。

 韓国メディアは最近、主務官庁の文化体育観光省が12カ所の競技場すべてを維持する方針を固めたと報じた。山林として復元予定だったアルペンスキー競技場も、スキー場として存続させる計画という。

 国際オリンピック委員会(IOC)は近年、膨大な予算を浪費する五輪に対する批判を意識し、競技場などの効率的な事後活用計画の策定を強調している。平昌五輪については2017年7月末までに計画を策定するよう要請していたが、平昌側の作業は間に合わなかった。

 8月にIOCのグラニ・リンドベリ調整委員長から苦言を呈された後も計画は定まらず、五輪開幕直前の今年2月4日には、トーマス・バッハIOC会長が直々に開幕前に計画提出を要望した。しかし、五輪が閉幕した今も、計画は確定していないという。

 計画の遅れに伴い、不都合が噴出し始めている。

 韓国紙、中央日報(日本語電子版)によると、スキー競技が実施された旌善(チョンソン)アルペンセンターは、当初計画では山林に復元されることになっていた。

 旌善アルペンセンターが造成された可里旺山(カリワンサン)は生態系豊かな場所で、2012年6月にスキー競技会場に確定した際は、環境保護団体が激しく反発した。その影響で工事着工が2014年10月にずれ込んだ。

 山林庁は「(当初計画の)方針に変わりはなく、前提条件が崩れると社会的に葛藤を招くだけだ」としている。しかし、2064億ウォン(約206億円)をかけて切り開かれた山の原状回復には477億ウォン(約48億円)、最大で1000億ウォン(約100億円)がかかる見通しだ。

 この費用は江原道が負担することになっており、原状回復で巨費を支出するより、韓国で唯一の国際スキー連盟(FIS)認定の滑降コースを、地域経済の発展や選手育成などのために利用するべきだとの意見が高まっている。

 地域の経済団体会長は「近視眼的な環境の論理に押されて競技場を原状回復するという計画に反対する」とのコメントを発表した。朝鮮日報によると、韓国スキー連盟は3月14日から署名運動を展開し、3月末までにパラリンピック出場選手ら600人余りの署名を集めたという。さらに、大統領府と国会にもスキー場存続の請願書を提出するという。

 「五輪開催が成功した」とされるのは、競技場や施設をどれだけうまく事後運用できるかに掛かっている。建設費だけで4700億ウォン(約470億円)が投資された2014年仁川アジア大会では結局、仁川市が13兆ウォン(約1兆3000億円)ともされる巨額の負債を抱えた。

 3月末に自由韓国党の全希卿(チョン・ヒギョン)議員が発表した平昌五輪の競技場運営収支の分析結果では、競技場を運営し続ける場合、年間58億ウォン(約6億円)の運営赤字が発生する。年間36億8200万ウォン(約3億7000万円)の赤字と試算されるアルペン競技場と合算すると、赤字額は計約95億ウォン(約9億5000万円)に上る。

 中央日報によると、韓国の都鍾煥(ト・ジョンファン)文化体育観光相は最近、「政府は予算をサポートして平昌五輪関連施設を当初の建設目的通りに維持する計画だ」と述べた。市民が活用する体育施設や大学の多目的施設、既存のスキー場と連携しての活用法などが挙げられている。

 また崔文洵(チェ・ムンスン)江原道知事は、平昌五輪施設の活用法の一つとして、2021年冬季アジア大会の南北共同開催を推進する考えを示した。そのためにアルペン競技場が必要だという。

 ただ、競技場の運営費をどう確保し、どのくらい政府と地元自治体が分担するかに関しては、政府内でも調整が難航している。昨年の財政自立度が全国平均(47.1%)を大きく下回る21.3%の江原道は75%の国費支援を要求しているが、政府は難色を示しているという。

 財政支援した場合、アジア大会の赤字を補填している仁川市など他の自治体との間で、公平性の問題が浮上しそうだと中央日報は指摘する。

 都文化体育観光相は「五輪と他の国際大会は意味が違う」と平昌支援に前向きだが、韓国のネットユーザーは「軽率に誘致した五輪が施設の過剰な増設問題に苦しむのは当たり前」などと冷ややかだ。