【経済インサイド】今の大学1年生の就活日程が東京五輪で変わるは本当か 他に狙いは? - 産経ニュース

【経済インサイド】今の大学1年生の就活日程が東京五輪で変わるは本当か 他に狙いは?

企業の合同会社説明会に参加した学生ら=3月1日、東京都中央区(松本健吾撮影)
企業の合同会社説明会に参加した学生ら=3月1日、東京都中央区(松本健吾撮影)
企業の合同会社説明会に参加した学生ら=3月1日、東京都中央区(松本健吾撮影)
「3年生の12月」に解禁されていた平成25年卒業予定の学生を対象にした合同会社説明会=平成23年12月1日、大阪市北区(沢野貴信撮影)
 2021年卒業予定の大学生の就職・採用活動の日程が再び変更される可能性が強まっている。今の大学1年生が対象となるが、経団連が、就職活動ルールの見直しに着手したからだ。2020年東京五輪・パラリンピックで「説明会や面接の会場が不足する」というのが理由だ。だが、五輪は建前に過ぎず、「会社説明会」「採用面接」の解禁をそれぞれ現在の「3年生の3月」「4年生の6月」から前倒ししたいと考える企業が多くなったためではないかとされる。就活ルールそのものの不要論も強まる中、議論の行方が注目されそうだ。
(※3月30日にアップされた記事を再掲載しています)
 経団連は3月12日の会長・副会長会議で、就活ルール「採用選考に関する指針」の見直しを議論。まず、今の大学2年生が対象となる20年春卒業の就活日程については、現行スケジュールの踏襲を決めた。
 4月に3年生になるため、もはやこの時期に日程を変更すると、企業や学生が大混乱に陥る恐れが大きいためだ。
 会議の終了後に記者会見した経団連の榊原定征会長は「他にも議題が多く、指針は20年卒の日程で現状維持を決めただけで、それ以降については、突っ込んだ議論はできなかった」と説明した。ただ、21年卒については、見直しを含めて検討を始めるという。
 これに先立ち、榊原氏は7日に福岡市内で会見し、21年卒について「東京五輪でこれまで通りに採用活動ができない」と語り、見直し議論に入る考えを示していた。
 というのは面接などの採用選考期が、7月開幕の東京五輪と重なり、首都圏ではセミナーなどに使う大会場の多くが既に予約されている。榊原氏は「オキュパイ(occupy=占拠)されている」と表現した。
 経団連はこうした状況を踏まえ、(1)説明会と採用面接の解禁を3月に一本化(2)ルールを「一つの目安」と緩める(3)採用面接の解禁を6月から4月に前倒し▽(4)ルール自体の廃止-の4案を軸に検討を進める。
 だが、本当にオキュパイが動機なのだろうか。
 経団連会員企業の幹部は「五輪がどうのこうのというよりは、今の日程が本当にいいのかを議論してほしいという会員企業から強い要望があり、議論しようということになった」と打ち明ける。
 このため、21年卒だけでなく、22年卒以降も含む抜本的な就活スケジュール変更を検討する可能性が高い。
 会員企業からは、15年卒まで定着していた会社説明会、採用面接の解禁をそれぞれ「3年生の12月」「4年生の4月」とするスケジュールに戻してほしいという意見が多い。
 さらに、景気回復に伴って人手不足が深刻化し、学生に有利な「超売り手市場」が続く中、企業からは「経団連の就活ルールを守っては、いい人材を獲得できない」(流通企業の採用担当者)と悲鳴が上がる。
 事実、今年1月に就職情報会社が主催した合同企業説明会には、多くの経団連の会員企業が出展した。3月の説開会解禁というルールは形骸化しつつある。
 経団連副会長に首脳を送り込んでいる大手企業の担当者は「自社ではなく、業界の説明をしている」と、苦しい釈明を繰り返す。
 こうした実態の中、五輪を“錦の御旗”にして、就活ルールの撤廃や前倒しを求める企業の声は日増しに強まっている。
 近年、就活日程はめまぐるしく変化してきた。就活で学生の授業出席が難しくなったのを受け、政府が経団連に後ろ倒しを求めると、16年卒は会社説明会の解禁を「3年生の3月」に、採用面接の解禁を「4年生の8月」にずらした。しかし、就活の長期化が問題となり、17年卒からは面接の解禁を6月に前倒しし、今のスケジュールに。こうした度重なる制度変更は、学生からも企業からも不評だ、
 一方、経済同友会の小林喜光代表幹事は「そもそも『定期採用をやっているのが日本経済にとって最大のハンディキャップだ』とフランスのある財界人が言っていた」と話すなど、新卒一括採用が現状に合わなくなってきたと指摘する企業も増えている。一部の業種では、既卒や外国人を含め1年を通して必要な人材を採用する「通年採用」が定着しつつある。
 今回の議論で、ルールの撤廃やスケジュールの大幅な前倒しが実現すれば、企業にとっても学生にとっても影響は大きい。今の大学1年生(4月から2年生)は気が気でないだろう。(経済本部 平尾孝)