【経済インサイド】中国農村部「中間所得層拡大」で日本経済にも朗報? - 産経ニュース

【経済インサイド】中国農村部「中間所得層拡大」で日本経済にも朗報?

中国の野菜農家(ロイター)
収穫作業を進める中国の農家(ロイター)
中国・柳州市の電気自動車生産工場。中国政府はEVなどの先端技術を次の成長の原動力と位置づけている=2017年12月(ロイター)
 貧しかった中国の農村部で、家電や自動車などを買える「中間所得層」の比率が増えるかもしれない-。こんな予測をこのほど、日本の内閣府がまとめた。中国には日本企業の拠点が約3万2000あり、日本からの輸出額も米国向けに次ぎ第2位だ。米国との「貿易戦争」などによる中国景気の減速懸念もささやかれ始めたが、消費の裾野の広がりは日本経済にとって朗報だ。
 中国経済は依然、高水準の成長を続けている。2017年の実質国内総生産(GDP)成長率は前年比6.9%で、政府目標の「6.5%前後」を上回った。習近平指導部が進めたインフラ整備が投資を刺激したほか、好調な世界経済が輸出を引っ張ったためだ。
 ただ、足元では経済の減速懸念が強まり始めている。一つは、米国との貿易戦争が激化する可能性が強まっていることだ。トランプ米大統領は3月22日、中国製品に対する追加関税を命じる文書に署名した。中国による知的財産権の侵害を理由とした制裁措置で、対中貿易赤字の削減が目的だ。トランプ氏は「これこそが私が大統領に選ばれた理由だ」と言い放った。
 中国側は翌23日、「報復関税措置を準備している」と発表した。ただ、対米輸出が減少すれば、今後、中国景気が鈍化する可能性がある。
 もう一つは中国の内需減速懸念だ。国家主席の任期を撤廃するなど権力固めを終えた習氏は今後、過剰供給の解消に向け、鉄鋼分野の国有企業淘汰(とうた)といった構造改革を進めるとの観測が上がっている。国内投資のスピードダウンは経済成長の鈍化要因となる。
 ただ、GDPの約4割を占める個人消費は底力を増す可能性が出てきた。内閣府の分析によると、耐久財などの買い手となる中間所得層の割合が今後、増えるかもしれないからだ。
 内閣府はまず、英調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの定義に基づき、次のように分類した。
 1人あたりの年間可処分所得が1.3万元(約21万5800円)未満の人は「低所得層」。食品や衣類といった生活必需品のみ買える。
 1.3万~6.7万元(約111万2200円)の人は「下位中間所得層」。生活必需品のほか、家電など価格の安いモノやサービスを購入できる。6.7万~20万元(約332万円)の人は「上位中間所得層」。乗用車やブランド品のほか、北京、上海といった大都市で住宅に手を出すことが可能だ。20万元以上の人は「高所得層」で、海外旅行など高価格のモノやサービスにお金を払える。
 内閣府によると、中国の農村部に住む人の05年の可処分所得を平均すると、すべて「低所得層」に分類できたという。
 しかし16年を分析すると、より裕福な人が増えた。農村部の可処分所得上位2割以内に入る人の平均額は2万8448元(約47万2237円)、同2~4割以内の人の平均額は1万5727元(約26万1068円)で、いずれも「下位中間所得層」のレベルに分類できるようになった。一方、上位4割以内に入らない人は依然「低所得層」にとどまっている。
 内閣府は農村部の可処分所得が上がってきた理由について、「外資も含め、企業が沿岸部から内陸部へ進出するようになり、農村部に住む人が、農業だけでなく、より賃金の高い工業にも携わるようになったことなどがあるとみられる」と分析している。
 今後、14~16年の平均と同じスピードで農村部の可処分所得が伸びた場合、上から4~6割以内の人も、「低所得層」から「下位中間所得層」へ“出世”するという。ちなみに、都市部の可処分所得の16年の平均をとると、すべて「上位中間所得層」か「下位中間所得層」。20年もこの構造は変わらないとみられる。
 内閣府は「家電や自動車、ブランド品の購入が可能となる『中間所得層』の農村部での比率上昇が、今後、中国の消費を下支えしていく」と指摘している。
 中国経済は日本経済にも影響が大きい。16年度の日本からの輸出総額(71兆5253億円)のうち、中国向けは17.9%の12兆8347億円で、米国向け(14兆1187億円、19.7%)に次ぎ2位を占めた。中国向け輸出品のうち、上位を占めるのが、スマートフォン用などの半導体といった電子部品(7.4%)、科学光学機器(6.1%)などで、完成車も4.1%と多かった。
 また外務省によると、中国に進出した日本企業の拠点数は16年10月現在、3万2313に達し日本からの海外進出企業の約45%に上る。特に製造業や卸売業、サービス業、小売業などの業種が多くなっている。
 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、農村部などで中間所得層が増えれば、「日本経済にとって、圧倒的にプラスが多い」とする。現地の日本企業のモノやサービスの販売、日本からの輸出の拡大につながるからだ。さらに小林氏は「訪日旅行客の増加につながる可能性がある」としており、日本国内での観光需要や買い物需要拡大に波及することも期待できそうだ。(経済本部 山口暢彦)