政府が調査することか!? 収束しない韓国「団体追い抜き」問題のその後

スポーツ異聞
平昌五輪のスピードスケート女子団体追い抜き準々決勝で、韓国はキム・ボルム(右端)らがノ・ソンヨン(右から2人目)を置き去りにして大問題に発展した(共同)

 平昌五輪で2月19日に行われたスピードスケート女子団体追い抜きでの「選手置き去り」問題が韓国でいまだに波紋を広げている。韓国メディアによると、韓国大統領府は3月6日、大統領府のインターネットサイトに寄せられた国民請願を受けて第三者機関を設置して真相解明に乗り出すと表明した。大統領府がそこまで関与するのかという疑問の声も出ているが、61万人以上がサイトに批判を書き込んだことで選手のスポンサー契約が解消されるなど、「人民裁判」の様相を示している。(※3月18日の記事を再掲載しています)

 3人1組で滑走するスピードスケートの団体追い抜き。縦に並んだ3人が先頭を入れ替えながら滑り、最後尾の3人目のブレードの先端がゴールした時点のタイムで競われる。金メダルを獲得した日本選手の三位一体感が評価されたように、勝敗を決するにはチームワークが重視される。

 ところが、2月19日に実施された平昌五輪準々決勝で、韓国は前方を滑走した2選手=キム・ボルム(25)、パク・ジウ(19)=が、最後尾の選手=ノ・ソンヨン(28)=を約4秒、距離にして約40メートル置き去りにしてゴールした。異様な光景はすぐに疑問が呈された。中央日報は、前方2人が2分59秒台をマークし、4位で準決勝に進出した米国が2分59秒75だったため、3人が一体になってゴールしていれば準決勝進出の可能性を残したと残念がった。

 試合後の会見が炎上に拍車をかけた。キム・ボルムは最後尾のノ・ソンヨンのせいにするような発言をし、あざ笑うような表情を見せたという。大統領府のサイトには批判の書き込みが相次ぎ、キム・ボルムらの代表資格の剥奪を求める請願が投稿された。

 これを受けて、大統領府は3月6日、真相調査の実施を表明。朝鮮日報によると、文化体育観光省はスポーツ公正人権委員会を設置し、スポーツの不正問題に対する政策案を立案して対処する方針を説明した。

 韓国スケート連盟に関しても選手の暴行事件や五輪出場選手の登録ミスなど、さまざまな問題が発生していたため、代表選考や管理なども同時に調査するという。

 連盟への調査は、不祥事が頻発しているためだ。平昌五輪で金メダルを獲得したショートトラック女子3000メートルリレーのメンバーだったシム・ソクヒ(21)は五輪直前の今年1月、幼少時代から指導を受けていたコーチから暴行を受け、精神的なダメージを受けた。前回ソチ五輪の際には女子代表選手に対するセクハラでコーチが解任されるなどしていた。

 また、今回の置き去り問題で図らずも主役となってしまったノ・ソンヨンは1月に連盟の手続きミスで代表の資格がないことが判明し、代表から一時離脱。その際「韓国代表であることが誇らしいわけではない。国のために出場したくない」などと怒りをあらわにしていた。ロシア選手の資格喪失によって辛うじて五輪の舞台に立ったが、1月24日から2月8日まで練習ができていなかった。ほかの選手に比べて練習不足は否めなかったのだ。

 ノ・ソンヨンは3月8日に韓国SBSテレビの報道番組に出演し、連盟はメダル獲得の可能性が高い種目に対して特別待遇を施し、ほかの選手とは格差があると発言した。女子団体追い抜きに関して連盟は「捨てるつもりだったと思う」と明かした。

 一方、大統領府が「置き去り問題」に関与する必要があるのかと疑問も出ているという。国民の声を聴くという趣旨で設置された大統領府の国民請願制度に、この問題がふさわしい内容なのかと否定的な見方もある。

 大統領府のサイトに書き込まれたことで、キム・ボルムはスポンサーから契約延長をされなかった。キム・ボルムは2月24日の女子マススタート決勝で銀メダルを獲得したが、レース後、氷上に置いた韓国国旗を前に両膝をつき、「申し訳ない」と頭を下げる事態となった。

 韓国経済新聞は大統領府のサイトが人民裁判の場となっているとした上で、キム・ボルムの例は「人民裁判の効果が発揮された」と過度な批判世論に警鐘を鳴らした。