【経済インサイド】欧州中銀の総裁ポスト 「盟主」ドイツは“悲願”の獲得なるか - 産経ニュース

【経済インサイド】欧州中銀の総裁ポスト 「盟主」ドイツは“悲願”の獲得なるか

ドラギ氏の後任の欧州中央銀行(ECB)総裁として最有力視されている、ドイツ連邦銀行(中央銀行)のバイトマン総裁(ロイター)
ドイツのフランクフルトにある欧州中央銀行(ECB)の本部。2019年秋に任期が切れるドラギ総裁の後任人事に注目が集まる(ロイター)
 世界の主な中央銀行のトップ人事は、2月に米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が就任し、4月に任期が満了する日銀の黒田東彦総裁の再任も国会の同意を得た。次は、2019年秋に任期が切れる欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の後任人事に注目が集まる。欧州最大の経済大国でありながら総裁を一度も出したことがないドイツの出身者がその座を射止めるかが焦点となる。
 ECBは1998年の設立で、統一通貨ユーロを導入する19カ国の統一的な金融政策を担う中央銀行だ。歴代の総裁は、初代がオランダ出身のウィム・ドイセンベルク氏、2代目がフランス出身のジャン=クロード・トリシェ氏、そして3代目が現在のマリオ・ドラギ氏でイタリア出身。任期は8年間で、2011年11月1日に就任したドラギ氏は19年10月31日までだ。
 ドイツは、16年のユーロ圏の名目国内総生産(GDP)の29.1%を占め、経済規模は域内で突出している。ECBの本部も独フランクフルトにある。ECBの設立以降、執行部の一角をなす専務理事には一貫してドイツ出身者が名前を連ねてきたが、総裁、副総裁を一度も送り込んだことがない。
 今年5月31日に任期が切れるポルトガル出身のコンスタンシオ副総裁の後任には、スペインのデギンドス経済相が内定済みだ。ECB執行部は総裁と副総裁、4人の専務理事の計6人からなるが、その3分の2にあたる4人が19年末までに交代する予定で、執行部の顔ぶれは大きく変わる。
 ドラギ氏の後任のECB総裁として最有力視されているのが、ドイツ連邦銀行(中央銀行)のバイトマン総裁だ。国際通貨基金(IMF)などを経て、史上最年少の43歳で独連銀総裁になった。就任前は、メルケル独首相の首席経済顧問を務めていた。
 「ついにドイツの番だ」-。独有力誌シュピーゲルは17年5月、情報の出所は示さず、メルケル氏とショイブレ財務相(当時)がバイトマン氏をドラギ氏の後任として推すことになっていると報じた。報道の真偽は別として、ドイツにとって自国出身者をECB総裁に据えるのは“悲願”とみる向きは多い。
 というのも、ドイツは11年にもトリシェ氏の後任をめぐって苦杯をなめた経験があるためだ。このときも独連銀のウェーバー総裁(当時)が次期ECB総裁として最有力視され、メルケル政権も後押ししていたが、ギリシャに端を発した南部欧州の金融危機を受けたECBの対応策に異論を唱えたウェーバー氏が任期途中で独連銀総裁を辞任する事態に。ドイツは有力な自国候補を擁立できず、イタリア銀行(中央銀行)総裁だったドラギ氏が3代目のECB総裁に選ばれた。
 今回は副総裁を南部欧州のスペインが得たことで、ドラギ氏の後任はドイツなど北部欧州から出るという連想が働きやすくなる。
 ただ、ドイツがバイトマン氏を次期ECB総裁に推すとしても、執行部の人事で強い影響力を持つフランスやイタリアなど他のユーロ圏の主要国の支持を取り付ける必要がある。昨年には、フランス銀行(中央銀行)のビルロワドゥガロー総裁が候補として取り沙汰されるなど、既にさまざまな憶測が流れている。
 また、ドラギ氏の任期満了と同じ19年10月31日には欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長(ルクセンブルク出身)、11月30日にはトゥスクEU大統領(ポーランド出身)の任期が相次いで切れる。みずほ証券の竹井豊シニアエコノミストは「ECBの執行部人事は、こうしたEU機関の主要人事も絡めて、各国の駆け引きやさや当てが繰り広げられる。『政治の世界』が含まれている」と話す。
 下馬評通りにバイトマン氏がECB総裁の座を射止めれば、51歳での就任で、独連銀総裁就任時と同じく最年少となる。日米のカウンターパートである黒田日銀総裁(現在73歳)やパウエルFRB議長(同65歳)と比べて大幅に若く、英イングランド銀行(中央銀行)のカーニー総裁(同53歳)とほぼ同世代だ。
 ユーロ圏の金融政策を討議するECBの政策理事会では、執行部6人に域内の各国中銀総裁のうち持ち回りの15人を加えた計21人が投票権を持つ。バイトマン氏は、金融引き締めに積極的な姿勢が最も強いメンバーの1人として知られており、ECB総裁に就けば金融政策は引き締め方向に傾くとの見方が出ている。
 ただ、竹井氏は「ドイツ1国の中銀総裁とは違い、ECB総裁は19カ国のユーロ圏全体を見渡した上で最適な金融政策を講じなければならない。政策理事会の他の有力者との合意形成が重要になる」と指摘する。
 既に利上げ局面にあるFRBに続く形で、ECBも量的金融緩和策の一環として進めてきた資産買い入れの減額に17年から動いており、8日の政策理事会でも声明文から「必要なら量的緩和の規模や期間を拡大する可能性」との文言を削るなど、今後も緩和策縮小を慎重に進めるとの見方が多い。竹井氏は「だれが次期ECB総裁になっても、緩和策を手じまう『出口政策』を円滑に進めることが最大の課題だ」と語る。
(経済本部 森田晶宏)
 欧州中央銀行(ECB) 統一通貨ユーロを導入するユーロ圏19カ国の統一的な金融政策を担う中央銀行。1998年に設立され、本部はドイツのフランクフルトにある。日銀や米連邦準備制度理事会(FRB)などと並ぶ世界の主要な中銀で、市場関係者の注目度は高い。ユーロ圏の金融政策はECBの政策理事会が決定し、ユーロ圏各国にある中銀はその指図に従って金融調節を行う。