後味の悪さが残った山中慎介-ネリ戦 フェアが前提のはず

スポーツ異聞
WBCバンタム級タイトルマッチで山中(右)は 体重オーバーのネリのパンチに沈んだ(大橋純人撮影)

 なぜ戦わねばならないのか? 不公平な体重で。テレビ桟敷で飛び跳ねるメキシコ選手を眺めながら、むなしい気持ちになったファンも多かったのではないか。(※3月10日の記事を再掲載しています)

 3月1日、東京・両国国技館で開催された世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級タイトルマッチ。山中慎介(35、帝拳)がルイス・ネリ(23、メキシコ)に2回TKOで敗れた。

 前日の2月28日に行われた計量で、ネリは53.5キロの体重制限を実に2.3キロもオーバーする55.8キロだった。何と2階級上に相当する重さで、周囲をあきれさせた。それから2時間の猶予が与えられたが、再計量でも54.8キロでクリアできなかった。

 53.3キロで一発クリアした山中が、ネリをにらみつけ、「ふざけるな」と口走ったのも、むべなるかなだった。

 試合は、山中が勝てば王座に復帰し、引き分けか負けの場合は王座が空位-という条件で行われたが、圧倒的な体重差はいかんともしがたい。1回に最初のダウンを喫した山中は2回にも3度崩れ落ち、レフェリーが試合を止めた。勝っても、王座に復帰をしないというのに、ネリは歓喜の雄たけびを上げた。

 体重で余裕のあるネリと厳しい減量をこなした山中とのタイトルマッチは、明らかに不公平。もともと無理がある試合だった。WBCの対応も素早かった。大幅超過を「受け入れがたい」としてネリの事情聴取を行うことを明らかにするとともに、ネリに無期限資格停止処分を科した。

 これだけにとどまらない。WBCはネリへのファイトマネーについて未払い分の7割の支払いを凍結するよう、帝拳側に指示したのだ。すでに、3割は契約時に支払っているので、どうしようもない。WBCとしても最大限の処分を下した形だ。

 近年、日本選手の相手が減量を失敗するケースが目につくようになった。昨年5月に行われたWBCフライ級では比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)の相手、フアン・エルナンデス(メキシコ)が体重超過した。

 ボクシングは、体重ごとに細かく階級が分かれ、争うスポーツだ。2階級も上の相手と対戦することはあり得ないし、ネリの体重超過はボクシングというスポーツそのものが成り立たなくする可能性すらある由々しき事態といえる。

 それでなくとも、ネリは昨年8月に行われた山中戦の前の7月に受けたドーピング検査で禁止薬物ジルパテロールに陽性反応を示したことが判明している。そのほかにも、使用するグローブがメキシコ製から突如として日本製へ変更を要求されるなど、誠実さを欠いていた。

 今回の件について、ネットやテレビのワイドショーなどでも、ネリに対する批判が相次いだ。

 では、前日計量で一方が体重超過した場合、どうするのがベストなのか?

 やむを得ず現行方式で対応するのも一案だろう。試合を中止にする選択もあり得る。体重超過が決まった時点で王座を移行させることは難しいだろうか。ボクシング界がじっくり協議をして改善策を出すときに来ている。

 ■山中慎介(やまなか・しんすけ) 1982年10月11日、滋賀県生まれ。辰吉丈一郎に憧れ、南京都高入学後にボクシングを始める。専大4年でプロ転向、2011年11月にクリスチャン・エスキベル(メキシコ)を破り、無敗でWBCバンタム級王者に就く。12連続の防衛に成功したが、17年8月にネリに屈し王座陥落。再戦にも敗れ引退を表明した。サウスポーでストレート系を得意とした。プロ戦績は31戦27勝(19KO)2敗2分。

 ■ルイス・ネリ(Luis Nery) 1994年12月12日、メキシコ・ティファナ生まれ。2017年8月に山中を破ってWBCバンタム級王座を獲得したが、事前のドーピング検査で陽性反応を示して調査が行われた。故意に摂取した確証が持てなかったため再戦となったものの、減量に失敗して王座剥奪された。プロ戦績は26戦26勝(20KO)。