【経済インサイド】鹿鳴館の地に新たな「ミッドタウン」 三井不動産が仕掛ける“文明開化”再現 - 産経ニュース

【経済インサイド】鹿鳴館の地に新たな「ミッドタウン」 三井不動産が仕掛ける“文明開化”再現

「東京ミッドタウン日比谷」1階のアトリウムは意匠を施したデザインで、芸術の街・日比谷を意識させる=東京都千代田区(佐久間修志撮影)
東京ミッドタウン日比谷6階のパークビューガーデン。植栽を日比谷公園(奥)と同種にする工夫で一体的な景観を形成する=東京都千代田区(佐久間修志撮影)
東京ミッドタウン日比谷6階のパークビューガーデン。植栽を日比谷公園と同種にする工夫で一体的な景観を形成する=東京都千代田区(佐久間修志撮影)
東京ミッドタウン日比谷のビル外観。「ダンシングタワー」のコンセプトを採用した流麗な曲線が特徴(提供写真)
日比谷公園から眺める東京ミッドタウン日比谷。6階部分の植栽は同公園と同種を使用して一体感を醸成する(提供写真)
東京ミッドタウン日比谷の周辺マップ(三井不動産提供)
 東京・日比谷の新ランドマークとなる複合施設「東京ミッドタウン日比谷」が3月29日開業する。各エリアで再開発が進む東京都心だが、日比谷はかつて日本の近代文明化を象徴する外交との社交場、鹿鳴館(ろくめいかん)を擁し、今も劇場や映画館などが集積する芸術・文化拠点。開発する三井不動産はこうした歴史的伝統を受け継ぎ、日比谷を日本有数の芸術の街として深化させる狙いだ。2020年東京五輪・パラリンピックを控え、“文明開化”の再現はなるのか-。
 「霞が関の官公庁街や丸の内などのビジネス街、銀座などの商業地という異なる特徴的なエリアの結節点であり、高度成長をリードしてきたアイデンティティーがある。この個性を生かして新たな価値を創造していきたい」。三井不動産の菰田正信社長は1月下旬の記者会見で、日比谷開発の成功に自信を見せた。
 ミッドタウン日比谷は地上35階(地下4階)建ての高層複合ビルで、約18万9000平方メートルの延べ床面積にオフィスや商業テナントが入居する。地下1階から地上7階までは商業エリアとして映画館やレストランなど60店舗が入る予定で、6階には別に、ベンチャー企業の支援拠点「BASE(ベース)Q」を設けた。
 三井不動産が、都心の複合型再開発の旗艦ブランド「東京ミッドタウン」の名称をつけるのは六本木に次いで2カ所目だ。満を持したネーミングには、菰田社長も強調した抜群の立地環境への期待の大きさがにじむ。
 日比谷は皇居や日比谷公園という豊かな自然環境を有しながら、日本有数のビジネス街である大丸有(大手町、丸の内、有楽町)、日本随一の商業地・銀座に近接。日比谷公園を挟んで官公庁街も目と鼻の先だ。これらの商圏から人の流れを呼び込めば、平日から週末・祝日まで切れ目のない多様な需要を取り込める。
 そのための吸引力として位置づけられるのが、芸術・文化拠点としてのイメージ戦略だ。日比谷は明治時代に「文明開化」のシンボル的存在となった鹿鳴館が位置したエリア。「ダンシングタワー」というコンセプトで波打つようなデザインをビルの外装に採用したのも、鹿鳴館で開かれた舞踏会になぞらえたイメージ戦略の一環だ。
 歴史経緯もあり近隣には日比谷公会堂(改修中)、日生劇場、東京宝塚劇場などの劇場や映画館も多数、集積する。ミッドタウン日比谷では、11スクリーン(約2200席)のシネマコンプレックス「TOHOシネマズ日比谷」を新設して、既存の文化インフラに一層の厚みを加えた。
 日比谷の歴史や文化インフラの蓄積をミッドタウン自身の強みとして生かすには、周辺との一体感が欠かせないが、6階に設けられた庭園「パークビューガーデン」には日比谷公園と同種の樹木を植えて切れ目のなさを強調する。オープン後はミッドタウンが核となって、演劇をテーマにした「Hibiya Festival(日比谷フェスティバル)」を継続的に実施する計画だ。
 日比谷街づくり推進部の山下和則部長は「日本随一の観劇街が日本版ブロードウェーになる」と話す。
 東京五輪を前に、東京都心部では不動産大手による再開発がめじろ押しだ。特に今年は複合ビルなどの竣工(しゅんこう)が重なり、オフィスの大量供給が見込まれる。近年は都心部の賃料上昇傾向を背景に、不動産大手はビル事業などで堅調な業績を維持するが、供給が続けば今後はエリアごとの優勝劣敗が鮮明となる可能性も否定できない。
 競争激化の中で、三井不動産は「東京ミッドタウン」を新たな都市開発ブランドとして水平展開し、再開発事業で競合との差別化を図る。菰田社長は「どの物件と申し上げる段階にないが、可能性としては複数、これでやりたいというのがある」と打ち明けており、日比谷で成功モデルを確立したい考えだ。
 「結節点かつ要所」という菰田社長の日比谷評は、大丸有や銀座と比べて、この街が久しく「バイプレーヤー(脇役)」の域を出ていなかったことの裏返しでもある。“現代の鹿鳴館”を舞台にした第2の文明開化は起きるのか。業界全体が行方を注視している。(経済本部 佐久間修志)
 三井不動産 江戸時代の豪商・三井高利の流れをくむ三井グループの不動産会社として昭和16年創業。業界最大手で平成29年3月期の売上高は1兆7044億円。これまで日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」(東京都千代田区)のほか「ららぽーとTOKYO-BAY」(千葉県船橋市)、東京・日本橋(中央区)再開発など数多くの開発案件を手がけ、2020年東京五輪・パラリンピック選手村の建設事業者にも選ばれた。
 鹿鳴館 明治16年、井上馨外務卿の提唱で、イギリス人建築家のコンドルが旧薩摩藩上屋敷跡(現在の東京都千代田区内幸町)に建築した洋館。風俗習慣を欧化することで、欧米諸国との条約改正を果たす狙いがあった。伊藤博文首相や政府の高官が夫人、令嬢を伴って外国人を招待し、華やかな宴会や舞踏会が開催された。しかし、行き過ぎた欧化は世間から批判され、華族会館として払い下げられた。昭和15年に取り壊された。