【iRONNA発】習近平主席「終身独裁」 トランプ政権は「巨竜退治」できるか 江崎道朗氏 - 産経ニュース

【iRONNA発】習近平主席「終身独裁」 トランプ政権は「巨竜退治」できるか 江崎道朗氏

活動報告を終え、習近平国家主席(右)と握手する全人代常務委員長の張徳江氏 =11日、北京の人民大会堂(共同)
江崎道朗氏
 中国の春秋戦国時代、秦王政が史上初の中華統一を成し遂げたのは紀元前221年のことである。それから2千年余り。現在の最高指導者、習近平氏が国家主席の任期制限を撤廃した。「終身独裁」の始まりは何を意味するのか。(iRONNA)
 近年、習氏率いる中国共産党政府の横暴は目に余る。尖閣諸島を含む東シナ海での挑発行動などに象徴されるように、軍事力と経済力を使った強引な拡張主義は、アジア太平洋諸国の反発を買っている。そして、この拡張主義が、トランプ政権を誕生させたという側面がある。
 2013年、中国人民解放軍は「ショート・シャープ・ウォー」(短期激烈戦争)といわれ、ミサイルと海上民兵によって沖縄・南西諸島を攻撃し、米軍が助けに来る前に日本を屈服させるという軍事侵攻計画を作り、その訓練を実施した。この事実を米太平洋艦隊の情報部門の責任者であるジェームズ・ファネル大佐がつかみ、同盟国日本に伝えるべきだと提案したのだが、当時のオバマ政権は否定的だった。米軍はオバマ政権の間、南シナ海での中国による軍事基地建設を阻止する活動をさせてもらえなかった。
 こうした状況から、2016年の大統領選では、米軍再建を主張するトランプ氏を、米軍関係者は死にもの狂いで応援した。この応援がなければ、ヒラリー民主党政権になっていたはずだ。そもそも米国は一枚岩ではない。オバマ前大統領のように中国びいきの人たちをパンダ・ハガー(パンダに抱きつく人)と呼び、一方で中国の台頭に警戒心を抱いている人たちをドラゴン・スレイヤー(竜を退治する人)と呼ぶ。このドラゴン・スレイヤーの筆頭格がファネル大佐だ。
反中戦略を進める米国
 中国が軍事大国になった背景に、経済的な発展がある。言い換えれば、中国の経済発展をスローダウンさせれば中国軍の力は落ちる。そこで通商、金融、軍事、外交を組み合わせて中国の軍事的台頭を抑制しようという対中政策を提唱しているのが、『米中もし戦わば』(文芸春秋)の著者で経済学者のピーター・ナバロ氏だ。トランプ大統領は就任当初、米国の通商政策の司令塔として新設した「国家通商会議」のトップに、このナバロ氏を据えた。
 だが、トランプ大統領が当選した直後、北朝鮮による弾道ミサイルと核開発問題が浮上した。実はオバマ政権の間に軍事費が大幅に削られたため米軍が弱体化してきており、すぐ北朝鮮に対して軍事行動を起こせる状況ではなかった。ゆえに時間稼ぎの必要もあり、トランプ政権は中国の習氏と組んで北朝鮮に圧力を加える方策を採用し、対中強硬策を控えてきたが、はかばかしい成果は見られなかった。
 そこでトランプ大統領は昨年12月、安全保障政策の基本方針を示す「国家安全保障戦略」の中で、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難した。このトランプ政権の「反中」戦略を真っ向から批判したのが、パンダ・ハガーたちであった。
 だが今回、中国共産党自らが「長期独裁を目指す」と主張した。ドラゴン・スレイヤーとすれば、「やはりトランプ政権の反中戦略は正しい」となる。長期独裁を目指す習氏のおかげで米国では、ドラゴン・スレイヤーの力がますます増していくだろう。
期待される日本
 そして、ドラゴン・スレイヤーが期待しているのが、日本である。「インド太平洋戦略」と称して東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などと経済、安全保障、外交の3つの分野で関係を強化しようとしている安倍政権を高く評価している。
 期待が高いだけに実際に軍事紛争が勃発した際、日本が軍事的に貢献できなければ、日米同盟は致命的な傷を負いかねない。何よりもさらに独裁体制を強化した習政権はますます日本に対して牙をむくことになるだろう。特に尖閣諸島は極めて危険な状態だ。
 この危機に対応するためには、日本自身の防衛体制の強化、つまり防衛大綱の全面見直しと防衛費の増額、そして憲法改正を進めるべきだ。
【プロフィル】江崎道朗 えざき・みちお 評論家。昭和37年生まれ。国会議員の政策スタッフとして安全保障、インテリジェンス、近現代史の研究に従事。著書に『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)など多数。
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