【野党ウオッチ】千載一遇の政権追及チャンスでも失われない旧民主党のDNA - 産経ニュース

【野党ウオッチ】千載一遇の政権追及チャンスでも失われない旧民主党のDNA

「働き方改革虚偽データ疑惑野党合同ヒアリング」に出席した立憲民主党の長妻昭代表代行(中央)ら=2月27日午後、国会内(斎藤良雄撮影)
衆院予算委員会で質問に立った希望の党の玉木雄一郎代表=2月5日、衆院第1委員室(斎藤良雄撮影)
記者会見に臨む麻生太郎副総理兼財務相=9日午後、東京都千代田区の財務省(納冨康撮影)
官邸に入る加藤勝信厚生労働相=2月27日午前、首相官邸(斎藤良雄撮影)
平成24年3月、参院決算委員会で答弁する小宮山洋子厚生労働相=参院第1委員会室(酒巻俊介撮影)
 昨年の衆院選の民進党分裂で弱体化が懸念された野党勢力だが、2月中旬以降は存在感を増している。裁量労働制をめぐる厚生労働省調査のデータ不備に続き、学校法人「森友学園」への国有地売却問題に絡む財務省の決裁文書改竄と、立て続けに「敵失」が発覚したためだが、民進党系野党にはどうしても旧民主党から連綿と受け継ぐ「二重基準」が見え隠れする。
 「行政の長として責任を痛感している。国民の皆さんに深くおわびする」
 12日、官邸で記者団に囲まれた安倍晋三首相(63)はこう述べて頭を下げた。財務省理財局が森友関連の決裁文書について200カ所以上も改竄を指示していたという不祥事が明らかになり、首相の表情は沈痛にならざるを得なかった。
 首相のおわびは厚労省のデータ不備問題に続き今国会で2回目だ。首相は1月29日の衆院予算委員会で「厚労省の調査によれば、裁量労働制で働く人の労働時間は一般労働者よりも短いというデータもある…」と発言した。
 そのデータはずさんだった。1日の労働時間が24時間を超え、あるいは同一人物の1日の労働時間が1週間の労働時間よりも長いなど、明らかな異常値が多数含まれていたのだ。首相は答弁を撤回し、謝罪した。
 国のトップが省庁の不手際により謝罪を繰り返す事態は異常だが、野党にとっては攻勢に転じる絶好の機会である。
 希望の党の玉木雄一郎代表(48)は2月20日の記者会見で、厚労省のデータ問題について「有利な状況を作り出すためのデータの捏造であるとの疑惑が払拭できない」と語った。データは平成25年度の「労働時間等総合実態調査」で外部の委託業者が策定した。
 ただ、調査は24年8月、民主党政権の小宮山洋子厚労相(69)の下で計画されたものだった。加藤勝信厚労相(62)は2月26日の衆院予算委員会で、この事実を明らかにした上で「安倍政権が裁量労働制を拡大するために実施した」との指摘を否定したが、議場にいた立憲民主党の議員らは黙ってはいなかった。
 「問題ない! 論点が違う!」とのヤジの中、加藤氏に質問した自民党の橋本岳衆院議員(44)は冷静に切り返した。
 「『関係ない』とのヤジが飛ぶが、確かに大臣はこんな調査の細かいところまでは把握されない。だとすれば、今の加藤氏の責任を問うということにもつながらないのではないか」と牽制し、省庁のデータ活用の適切な運用を求めた。
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 裁量労働制のデータ不備問題に続き、安倍政権を揺るがす不祥事が発覚した。3月2日に朝日新聞が報じた財務省による森友学園の決裁文書「書き換え」疑惑だった。
 「厚労省のデータもフェイク! 森友関係の決裁文書もフェイク! 答弁もフェイクなら、首相自身が責任を取らなければいけない!」
 立憲民主党の辻元清美国対委員長(57)は3月7日の党会合でこう語気を強めた。日本維新の会を除く6野党は連日、野党合同ヒアリングを開き、追及を強めている。
 今回の文書改竄は国会審議の前提を覆す。希望の党幹部は「前代未聞で前例は承知していない」と述べた。しかし、実は省庁の地方局による文書改竄は民主党政権時の22年にも発覚していた。
 改竄された文書は厚労省東北厚生局(仙台市)が作成した福島県の柔道整復師の養成専門学校に対して行った実地調査結果に関する文書だった。19年に情報公開法に基づく開示請求を受けて公開する際、東北厚生局の職員が文書から「未承認カリキュラムで授業時間不足が生じる」などと記された部分を削除し、同校への指示内容などが記された行政文書が、別の文書に差し替えられた。
 22年に再び同じ文書の開示請求があり、請求者が19年の文書にない記述に気付いたという。削除を行った職員は「再三、照会や苦情を受け、ノイローゼ気味だった」などと釈明し、減給1カ月(10分の1)の懲戒処分を受けた。当時の上司3人も訓告などの処分を課せられた。
 ただ、当時厚労相だった現立憲民主党の長妻昭代表代行(57)は22年6月の記者会見で「民主主義の根幹である情報公開制度の中であってはならないことが起こった」と反省の弁は述べたが、辞任も処分もなかった。もちろん当時の菅直人内閣の総辞職もなかった。
 森友文書改竄に絡み、麻生太郎財務相(77)の進退も追及する元民主党の玉木氏は3月9日、記者団から民主党政権時の不祥事を問われると、「当時の事案は詳しく承知していない。それぞれの案件についての背景はそれぞれだろう」と言葉を濁した。
 当初は近畿財務局主導とみられていた森友文書問題だが、麻生氏は「財務省理財局の指示で書き換えが行われた」と認めた。本省の指示による大規模な書き換えや削除があった森友文書の件と、出先機関の東北厚生局の事案を同列に扱うことはできない。とはいえ、公文書改竄の一点で「内閣総辞職せよ」と叫ぶ元民主党の議員は、決して「前代未聞」というわけではなかったという事実ぐらいは踏まえた上で発言してはいかがだろうか。 (政治部 奥原慎平)