「高アル」で缶べろ?「ストロング系」ビール・缶酎ハイ人気のウラに厳しい家計事情

経済インサイド

 ビール類の出荷量が平成29年まで13年連続で最低を更新する中、アルコール度数の高いビールや缶酎ハイの販売が好調だ。今年は3月から4月にかけて業務用ビールや輸入ワインの値上げがあり、アルコール飲料への逆風は強まっているが、「高アル」は1缶で早くべろべろに酔える「缶べろ」商品として節約志向にマッチ。ビール大手4社は飲み応えを高めた新商品も投入し、販売増を狙う。

 「新商品によって新たな需要を創出し、総市場の拡大を目指す」

 1月9日、東京都内で開かれたアサヒビールの30年事業方針説明会で平野伸一社長はこう述べ、4月17日に発売するアルコール度数7%のビール新商品「グランマイルド」をアピールした。改正酒税法の施行でビールの定義が変更され、麦芽やホップ以外の副原料の使用が緩和されることに対応し、ハーブの一種であるレモングラスを使って高アル飲料特有のアルコール臭などを抑制した自信作だ。

 ビールや缶酎ハイの平均的なアルコール度数は5%程度。公正競争規約でビール類は度数6%以上の飲料を「高アルコール」と表示可能なことを踏まえ、大手4社は個別に高アルを定義している。アサヒはビール類6%以上、缶酎ハイ7~9%▽キリンビールはビール類6%以上、缶酎ハイ7%以上▽サントリービール・サントリースピリッツはビール類6%以上、缶酎ハイ8%以上▽サッポロビールはビール類、缶酎ハイともに7%以上-を高アルとしている。「ストロング系」と呼ぶビール会社も多い。

 各社とも高アルに力を入れるのはここ数年の高い販売実績があるからだ。5年ほど前に登場した高アル缶酎ハイをきっかけに、高アル全体の販売量は毎年10%以上伸び続けており、29年実績でアサヒの缶酎ハイ「もぎたて」は前年比約3割増、サントリーの缶酎ハイ「-196℃ストロングゼロ」も13%増を達成している。28年に限定発売だったサッポロの缶酎ハイ「超男梅サワー」は3倍超も増えた。

 最近は品質向上で高アルビールも伸びており、昨年7月に発売されたサントリーの第3のビール「頂」は年末までに222万ケース(1ケースは大瓶20本換算)を販売。キリンの第3のビール「のどごしストロング」は1月23日の発売以降、すでに100万ケースを突破し、「他の新商品に比べ販売ペースが速い」(同社)と高い評価を得ている。

 高アル好調の背景には、景気回復の波に乗れない厳しい家計の状況がある。

 総務省の29年の総世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は1カ月平均24万3456円となり、物価変動を除いた実質で前年比0.2%減と4年連続の前年割れ。厚生労働省の毎月勤労統計調査では、29年の実質賃金(速報)は0.2%減と2年ぶりのマイナスに転じ、労働者の購買力の低下が浮き彫りとなっている。

 市場調査会社のアナリストは「賃金も伸びずに家計に余裕がない中で高アルはコストパフォーマンスがいい上、最近は味もよくなってきているので、たくさん飲酒するヘビーユーザーの支持を集めている」と分析する。

 高アル支持層が拡大していることを追い風に、各社はビール、缶酎ハイの両面作戦で高アル飲料の販売増を図っている。ビールと缶酎ハイで需要の食い合いが起きそうにも思われるが、キリンの調査によると、一日の飲酒シーンの中でビールから缶酎ハイという流れで飲む人が多く、「高アルビールだけ、高アル缶酎ハイだけになることはなく、味覚の変化などを理由に飲み分けている」(同社)という。

 価格の高さなどを理由に主力のビールが長期低落傾向に見舞われるビール各社にとって高アル飲料は経営を支える期待の星であり、各社からは「ビール市場活性化の一助になる」(アサヒ)、「ボリュームが大きいので、救世主となる可能性がある」(サントリー)との声も聞こえてくるが、そう簡単ではない現実もある。高アルゆえに消費者が購入量を減らしてしまったら元も子もないのだ。サッポロは「今後定着するか否かは分からない」と冷静だ。

 そこでカギを握るのがコンビニエンスストアなどで高アルを「1本買い」する消費者となる。スーパーなどで倹約してまとめ買いをするわけではないので、手にとってもらえた分だけ売り上げが伸びる。前出のアナリストは「これまでアルコール飲料の流行は外食から家庭へという流れだったが、高アルは家庭からという新しいパターンになる。これが定着したら非常に評価されるだろう」と注目する。各社がいかにコンビニ客にアピールしていくかが今後の高アルの行方を左右していくことにもなりそうだ。(経済本部 桑原雄尚)