1億円ビットコイン強盗未遂 おもちゃの札束示した少年らの“お粗末”犯行の一部始終

衝撃事件の核心
押収された、メモ帳などで作った偽の札束=3月6日午前、警視庁赤坂署

 投機熱が高まっているビットコイン(BTC)をめぐり、1億円分の強奪未遂事件が起きた。昨年11月、東京都内で少年4人が仮想通貨取引関連会社の男性社長(27)を取り囲み、「早くコイン送れ!」などと脅迫する異様な事件が発生。この事件で警視庁は今年3月までに、BTCを指定したアドレスに送金させて奪おうとしたとして、清掃会社社長の男や少年ら計6人を強盗未遂容疑で逮捕した。巨額のBTCを奪い取ろうと画策した男らの犯行だったが、その手口はあまりにも“お粗末”と呼べるものだった。

風呂場の扉開けたら…

 犯行現場となったのは東京都港区のホテルの一室。昨年11月、被害に遭った男性社長は、BTC取引の仲介役の男性と運転手の男性とともにホテルを訪れた。男性社長は、運転手の男性をロビーに待機させた上で、仲介役の男性とともに2人で部屋へと向かった。

 まず、仲介役の男性が部屋に入る。相手方は「1人で部屋に行く」と約束していた。実際に部屋にいたのは若い男1人だけだった。しかし、高額の現金取引だったため、男性らは用心深くなっていた。「念のため室内を確認する」と男に伝え、バスルームの扉を開けると、そこには少年2人が隠れていた。

 異常を察知した男性はとっさに部屋を飛び出した。実際はこのとき、クローゼットにさらに別の少年1人も隠れていたという。

 仲介役の男性は難を逃れたものの、今度は廊下で待っていた男性社長が室内に引きずりこまれた。少年らは男性社長を蹴りつけ、手足を押さえ込んでナイフを示しながら「コイン送れ!」「早くコイン送れ!」と脅したという。

「100万円」の札束

 警視庁の調べによると、男性社長と少年らを含む犯行グループとは、仮想通貨売買の希望者らが集う招待制のコミュニティーサイトを通じて知り合い、取引することになったという。サイト内では仮想通貨の売却希望者や購入希望者がそれぞれ条件を提示。サイトでは取引成立までに、複数の仲介役の人物が間に入ることも多いという。

 犯行グループは「1億円分のBTCを現金で購入したい」とする内容を投稿し、男性社長は今回現場に居合わせた仲介役の男性らを介して取引に応じることを決めた。

 グループは男性社長を信用させるため、「現金1億円」の写真を送るなどして信用させていた。しかし、この1億円は実際は偽物。ディスカウントショップで販売されていた1万円の札束を模したジョークグッズ「100万円札メモ帳」の一番上に本物の1万円札を貼り付けたものだった。さらに本物らしく見せるために、マスキングテープで作った帯封を巻き付けていた。

「報酬もらえるから」

 男性社長は仲介役の男性が呼んだホテル従業員らに救助され、少年4人も駆けつけた警察官に身柄を確保され、あえなく現行犯逮捕となった。

 男性社長に暴行を加えた少年らは地元の不良仲間で、後に逮捕された清掃会社社長の滝本佑樹容疑者(27)も少年の1人の地元の知り合いだった。警視庁少年事件課は、滝本容疑者らがさらに別の人物から犯行の指示を受けていたとみて捜査している。

 少年らは犯行に関与した理由として「1人100万~200万円の報酬を受け取れると聞いたから」と供述。中にはBTCを別のアドレスに送金する仕組みや、そもそも仮想通貨がどういうものか理解していない少年もいたという。

 巨額の強奪を企てながらも、手口がずさんすぎた今回の事件。捜査幹部は「重大な犯罪だということを分かっているのか。今後も特殊詐欺の『受け子』のように、気軽な気持ちで仮想通貨がらみの犯罪に加担する少年も増えるのでは…」と頭を抱えている。