蓮舫氏、確定申告現場視察が幻に “森友”で国税庁長官の引っ張りだし画策

野党ウオッチ
2月1日、参院予算委員会で質問に立つ立憲民主党の蓮舫氏(斎藤良雄撮影)

 衆院予算委員会では平成30年度予算案の審議が終盤を迎えている。野党側は新たに発覚した働き方改革関連法案をめぐるデータ問題で攻勢を強める一方、引き続き森友学園問題でも追及の手を緩める気配はない。強く求めているのは前財務省理財局長の佐川宣寿(のぶひさ)国税庁長官の証人喚問だが、与党側は応じていない。なかなか国会に姿を現さない佐川氏にしびれを切らし、参院の野党では確定申告現場の視察で佐川氏を表に引っ張り出す計画が進められていた。主導したのは立憲民主党の蓮舫参院国対委員長(50)だった。

(※2月26日にアップされた記事を再掲載しています)

 今月14日、参院予算委の野党理事懇談会で、森友問題をめぐり確定申告が始まる16日午前に佐川氏の案内による税務署視察を与党に申し入れることが決まった。予算委委員の蓮舫氏は理事懇後、記者団に「予算委になかなかお越しいただけないのであれば、現場に行って長官に直接話を聞くというのは私たちの責務だと思っている」と訴えた。

 佐川氏は国税庁長官の就任記者会見を開かず、現在はマスコミの取材を避けるようにホテル暮らしをしているとも伝えられている。野党はそんな佐川氏にターゲットを絞っている。

 野党は年明け早々から佐川氏の存在が確定申告に影響を与えかねないとして辞任を求めていた。立憲民主党の枝野幸男代表(53)は1月のNHK番組で佐川氏について「政府の国会での説明がおかしかったと会計検査院が結論を出した。おかしな説明をしていた人が長官をやっている」と述べ、「けじめをつけるべきだ」と強い口調で語った。

 与党は野党による佐川氏の証人喚問要求をはね返し続けてきた。そこで参院の野党が練った策が確定申告の現場視察だった。

 麻生太郎財務相(77)は今月13日の衆院予算委で、佐川氏が国税庁長官を務めていることで「当然そういうこと(苦情)が起きることは十分あり得ると思っておかないといけない」と述べ、徴税業務に影響が出る可能性を示唆していた。

 それならば、ということか。蓮舫氏は「どのような影響が出るのか出ないのか、影響が出ないようにどのような努力をしているのかを長官から説明いただきたい」と主張した。現場の税務署を佐川氏の案内で視察する計画について、立憲民主幹部は「蓮舫氏のアイデアだ」と明言した。

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 結局、16日の視察は実現しなかった。衆院予算委で佐川氏に証人喚問の要請が出ていることを理由に与党が拒否したからだ。

 通常、委員会の理事会や理事懇談会後に内容を記者に説明するのは野党第一党の理事の役割だ。現在参院の第一会派は民進党(42人)だが、なぜか今回前面に立ったのは参院野党第四会派(6人)に過ぎない立憲民主党の蓮舫氏だった。

 視察が実現しなかった経緯が報告された15日の野党理事懇後も、蓮舫氏は当たり前のように代表して記者団の取材に応じ、与党の拒否について「『はい、そうですか』で終わる話ではない」と強調。「引き続き佐川長官から話をうかがいたい」と語った。

 国有地を管理する財務省理財局のトップだった佐川氏に森友問題について説明責任を求めることは正当だ。一方で、確定申告初日の午前中という繁忙期に国会議員がぞろぞろと現場視察に赴くことは税務署の職員にとって迷惑な話だろう。与党との合意を視察の前提とするならば、そもそも与党が同意する見込みは少なく、実現性は乏しかった。

 蓮舫氏は過去にもそんな現場視察にこだわってきた。19年3月、当時の松岡利勝農水相(1945~2007年)に多額の事務所費計上疑惑が浮上した。松岡氏が事務所で還元水装置や暖房機器などに当てたと正当性を主張したことを受け、蓮舫氏ら当時の民主党議員が議員会館の松岡事務所を「アポなし」で訪れた。

 松岡氏は同じ時間帯、国会内で閣議に臨んでいた。事務所に本人がいなかったことは明らかだった。それでも蓮舫氏は押しかけ、戸惑う事務所スタッフをよそに入り口そばの流し台をさし「水道はここにしかないですね」などと指摘した。

 そうかと思えば、民進党代表だった28年末には、大火に見舞われた新潟県糸魚川市を視察する前、仕事納めで党職員にこう述べていた。

 「私が愛されているなあと思うのは、今日が仕事納めのはずなのに、今日も明日も地方出張です」

 「明日は糸魚川に視察に行くことになりましたが、素晴らしい仕事ぶりを発揮して、移動だけで1都5府県です。『こんな日程をありがとう』と、最後に役員室の皆さんに愛情を込めてお伝えをしたい」

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 佐川氏との面会にこだわる蓮舫氏だが、野党内で必ずしも認識を共有しているわけではない。

 予算委の野党筆頭理事を務める民進党の川合孝典氏(54)は15日の理事懇後、記者団に「別に現場で佐川さんから話を聞くことにこだわっているわけではない。現場にどういう支障が出ているのかを見たいということだ」と述べた。約2カ月前まで蓮舫氏と同じ政党の同僚だった川合氏は、佐川氏の視察同行にこだわらない考えを示したのだ。

 現場を視察して佐川氏と面会することを「責務」と強調する蓮舫氏。まずは野党間の見解を束ねる求心力がもとめられている。 (政治部 小沢慶太)