【野党ウオッチ】働き方改革どこ吹く風…深夜の与野党攻防で生じた一晩で1297万円の仰天残業代 - 産経ニュース

【野党ウオッチ】働き方改革どこ吹く風…深夜の与野党攻防で生じた一晩で1297万円の仰天残業代

衆院予算委員会で河村建夫委員長と協議する野党理事(手前)。与野党の攻防は「国会の華」ではあるが…=2月26日、衆院第1委員室(斎藤良雄撮影)
深夜の与野党攻防の「戦果」をアピールする声が相次いだ6野党の合同集会=2月27日、国会内(斎藤良雄撮影)
2月28日、「1日遅れ」で平成30年度予算案が自民、公明両党の賛成多数で可決された衆院本会議(春名中撮影)
自民党の二階俊博幹事長との会談に臨む日本維新の会の遠藤敬国対委員長(手前)=2月23日、国会内(斎藤良雄撮影)
 「働き方改革」「生産性革命」-。安倍政権の看板施策が全く浸透していないのが、ほかならぬ国会である。深夜の国会に費やされた多額の血税は熟議のための必要経費なのか、それとも与野党の「プロレス」によって生じた冗費なのか。われわれ納税者はよくよく見極める必要がある。
 立憲民主、希望、民進、共産、自由、社民の6野党が2月27日に国会内で開いた合同集会は異様な熱気に包まれた。
 「予算(案の衆院通過)を1日ずらすことができた。これから中身をどのような形で勝ち取るかが私たちの責任だ」
 民進党の増子輝彦幹事長(70)がこう力を込めたかと思えば、共産党の小池晃書記局長(57)は「旧知の戦友であるかのような連帯感が生まれている」と共闘の深化を喜んだ。25日に社民党幹事長に就任したばかりの吉川元氏(51)は「初仕事から夜中まで戦うことは光栄の極みだ」と高揚感をにじませた。
 各党の幹部が誇らしげに語ったのは、26日深夜から27日未明にかけて繰り広げられた平成30年度予算案の衆院採決をめぐる与野党攻防の「戦果」である。
 与党は当初、27日の衆院予算委員会で予算案を採決し、同日中の本会議で衆院を通過させることを目指していた。ところが、働き方改革関連法案の提出断念を求める立憲民主党などは予算案を含む採決日程の協議を拒否し、26日夜は与野党幹事長・書記局長会談が断続的に開かれる「夜なべ国会」の様相を呈した。結局、与党は27日の採決を断念し、予算案は28日に衆院を通過することになった。
 さて、日付をまたぐ与野党のつばぜり合いを冷ややかに見つめていたのが、6野党とは距離を置く日本維新の会の遠藤敬国対委員長(49)である。採決先送りが固まった27日未明、国会内の党の控室に戻った遠藤氏は苦笑交じりに語った。
 「これだけ生産性の低い国会はない。働き方改革逆行国会だ」
 日程闘争の末に法案を廃案に追い込むことができるというならまだしも、「1日ずらすことができた」というアピールは多くの国民にとって理解しにくい。
 しかも、与野党の攻防には国会職員も付き合わされることになる。いったいどのくらいの残業代が「夜なべ」のために費やされたのか。遠藤氏が衆院会計課に算出を求めたところ、仰天の数字が明らかになった。
 開示されたデータによると、26日夜に残業した衆院の職員は657人。比較の対象として公開を求めた国会召集前(今年1月15日)は156人で、4倍以上に増えたことが分かる。
 657人の超過勤務手当の合計は1297万1118円に及んだ。民間企業で働く人の年間平均給与422万円(国税庁の平成28年民間給与実態統計調査)の実に3倍以上の額が一晩で吹っ飛んだ計算だ。加えて、深夜帰宅などで使用されたタクシー代の合計は82万9910円だった。
 ある職員は27日の午前2時に退勤し午前7時には出勤している。働き方改革の議論でしばしば登場する「勤務間インターバル」(終業から始業までに一定の休息を設けること)の概念もどこ吹く風である。
 ちなみに参院や国会図書館などを合わせた国会全体の残業者数は905人(1月15日は324人)で、超過勤務手当の合計は1747万6201円に達した。
 国会職員だけではない。与党が描いていた日程通りに審議が進めば、27日は衆院予算委の締めくくり質疑が行われることになっていたため、26日夜は多くの官僚が答弁の準備のために待機を余儀なくされた。遠藤氏は各省庁に対しても残業状況の開示を求めており、4月初めごろにデータが示される予定という。
 もちろん、6野党の抵抗が税金の浪費を招いたと断じるつもりはない。野党が徹底抗戦に出た背景には、裁量労働制に関するデータ不備問題があった。ずさん極まりない厚生労働省の失態に対し野党が猛批判を浴びせたのは当然といえる。与党側には、野党に折れる余地がないと判断して早々に採決先送りを決断する選択肢もあったはずだ。
 いずれにしても、働き方改革法案をめぐる攻防が、国会職員らに厳しい「働き方」を強いた展開は皮肉というほかない。 (政治部 松本学)