朝日は自社の慰安婦報道直視を

阿比留瑠比の極言御免
江陵オリンピックパークほど近くの鏡浦湖のほとりにたたずむ慰安婦像=江陵(桑村朋撮影)

 現在の日本はもう、歴史問題を持ち出せば真偽を確かめることすらせずに、すぐに頭を下げたかつての日本とは違う。そのことを、韓国は知るべきだろう。

 「慰安婦問題解決についても、加害者である日本政府が『終わった』と言ってはならない」

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が1日、こう演説したことに対し、日本政府は日韓合意に反するとして、ただちに厳重抗議した。文氏が何を言おうと、すでに合意内容を履行している日本側は、微動だにするつもりはない。

 そもそも、慰安婦問題に関して日本が加害者で、慰安婦が被害者という見方は、慰安婦が日本軍・官憲に強制連行されたか、性奴隷化されたのでなければ成り立ちにくい。

 これらについても、日本政府は明確に否定するようになっている。堀井学外務政務官は2月27日、ジュネーブでの国連人権理事会演説で、こう指摘した。

 「『性奴隷』という言葉は、事実に反するので使用すべきではない。この点は日韓合意の際に韓国側とも確認していた」

 「慰安婦強制連行という見方は、故吉田清治氏が虚偽の事実を捏造(ねつぞう)して発表し、日本の大手新聞社の一つにより、事実であるかのように報道されたことで、国際社会にも広く流布された。しかし、これは後に、完全に想像の産物であったことが証明されている」

 堀井氏は「この大手新聞社自身も後に事実関係の誤りを認め、正式に読者に謝罪している」とも述べた。名指しはしていないが、朝日新聞のことである。

 こうした日本の立場や朝日新聞の果たした役割については、杉山晋輔駐米大使も外務審議官当時の平成28年2月に、ジュネーブでの国連女子差別撤廃委員会で同様にこう訴えている。

 「(慰安婦強制連行説は)朝日新聞社により事実であるかのように大きく報道され、日本と韓国の世論のみならず国際社会にも大きな影響を与えた」

 「『性奴隷』といった表現は事実に反する」

 以前の日本は、「強制連行」「性奴隷」などと決めつけられても事実関係を争おうとしなかった。「これまでも何度も謝罪してきた」などと実質的に相手の主張を認めるような釈明を繰り返し、嵐が過ぎるのを待つばかりだった。

 日本外交が、これまでの敗北主義を改め始めたのは歓迎したい。韓国には「日本には言っても無駄で、全て反論されるだけだ」と理解させるべきだろう。

 ただ問題は、吉田氏の虚言を18回も取り上げ続け、世界に広める共犯者的役割を果たした朝日が、今回の堀井氏の発言を報じていないことである。2月28日付朝刊国際面に、ソウル発の「慰安婦問題で日韓応酬」というミニニュースは載っていたものの、堀井氏の言葉はどこにもない。

 朝日は2年前の国連女子差別撤廃委に関する記事でも、杉山氏が自社の過去報道に言及した部分は一切報じていない。その一方で、あろうことか外務省に杉山氏の発言は「遺憾」だとする申し入れを行った。

 そこから反省はくみ取れず、逆に、都合の悪いものにはフタをしようという意図ばかりが浮き上がる。

 「歴史に由来する人権問題に心を砕きつつ、喫緊の懸案に共に取り組む。そんな日韓関係への努力を滞らせる余裕はない」

 朝日は1月10日付社説ではこう訴えていた。そうならばなおのこと、自社の慰安婦報道が日韓関係を険悪にした事実を、もっと直視すべきではないか。(論説委員兼政治部編集委員)