外来種のアメリカザリガニ、日本で繁栄した驚きの習性とは

びっくりサイエンス
アメリカザリガニ

 子供の頃、近所の水路などでアメリカザリガニを捕まえた経験のある人は少なくないだろう。大きなはさみを持ち、堂々とした赤い姿はペットとして人気が高い。全国各地で見かけるこの外来種は、いったいどうやって異国の地で今日の繁栄を築いたのか。その理由の一端が東京大の研究で明らかになった。

(※2月17日にアップされた記事を再掲載しています)

 アメリカザリガニは名前の通り米国原産。昭和2年に食用のウシガエルの餌として国内に持ち込まれ、各地の川や沼、水田などに生息域を拡大。在来の生物を食い荒らし、水草を刈って生態系を破壊する厄介者だ。数が増えすぎ、もはや根絶は難しいとされている。

 外来種の多くは本来と異なる環境だと定着しにくいが、アメリカザリガニが勢力を伸ばした理由は何か。東大チームは、彼らがはさみで水草を刈り取る行為に着目した。雑食性のため水草も食べるが、刈るだけのことも多い。なぜ、そんな不可解なことをするのか。謎を解こうと実験に踏み切った。

 アメリカザリガニを入れた水槽に、餌となるトンボやユスリカの幼虫を入れると、ザリガニの数が多いほど幼虫は減少した。ここに水草を一緒に入れると、幼虫の減少が食い止められたことから、水草が幼虫の隠れ家になっていることが分かった。

 また、水草を入れると、ザリガニの数が多い水槽ほど体重が増えた。数が多いと餌の奪い合いになり、体重は増えにくくなりそうだが、そうではない。水草もたくさん刈り取られるため餌を見つけやすくなり、効率よく食べられるようになったと考えられる。

 次に、ザリガニが刈り取れないプラスチック製の人工水草を用意。これをたくさん入れると幼虫が多く生き残り、ザリガニの体重増加は抑えられた。人工水草が幼虫を守り、ザリガニの成長を抑制したとみられる。

 この結果から、水草を刈り取ること、つまり都合のいいように自ら環境を変えてきたことが、日本における勢力拡大の要因の一つと考えられるという。

 今回の実験では、アメリカザリガニの数の増加を直接確かめたわけではない。ただ、自然界でも加速度的に大発生することがあるといい、水草を刈り取る行動が効いているようだ。

 チームのメンバーで現中央水産研究所研究員の西嶋翔太さんは「根絶できない以上、駆除だけでなく、アメリカザリガニが刈りにくい水草を池に入れるなどして、在来種を支える環境を作る対策も現実的ではないか」と提案する。

 ちなみに神奈川県で育った記者は子供の頃、赤いザリガニが捕れるとアメリカザリガニ、茶色いとニホンザリガニだと友達と騒いだものだ。ところが、ニホンザリガニはもともと、北海道や東北地方の一部にしか生息していないという。

 西嶋さんは「関東にいるのは基本的にアメリカザリガニ。体の色は小さいときは茶色がかり、大きくなるにつれて赤くなる」と指摘する。恥ずかしながら今回の取材で、幼少期以来の大きな誤解が一つ解けた。(科学部 草下健夫)