「表」は青年実業家、「裏」は詐欺団リーダーの男 関係者がその素顔を激白

衝撃事件の核心
青年実業家と詐欺団リーダーの顔を使い分けた加藤竜太容疑者を逮捕した警視庁

 30代にして会社を興した青年実業家の男には知られざる「裏の顔」があった-。都内の50代の無職女性からキャッシュカードをだまし取ったとして、警視庁捜査2課が、詐欺の疑いで逮捕した東京都江東区有明の不動産会社代表、加藤竜太容疑者(37)。同課によると、加藤容疑者は、警察官や金融庁職員を装ってキャッシュカードをだまし取る詐欺団のリーダーだった疑いがあるという。表社会と裏社会、双方を行き来した男の“二重生活”の一端を関係者が明かした。

被害総額は8000万円以上か

 平成29年10月上旬、東京都小金井市に住む50代の女性の自宅に1本の電話がかかってきた。

 受話器を取った女性に電話口の向こうから男がこう話しかけた。

 「あなたが銀行のお金を引き出される被害に遭っているかもしれません」

 「警視庁の刑事」を名乗る男は、摘発した詐欺グループの犯人の中に女性の個人情報を所有する者がいたと主張。電話の主は、さらにこうたたみかけてきた。

 「被害に遭っているか調べてみますから、口座番号を教えてください」

 突然の事態に慌てた女性は男の求めに応じる。

 しばらくして、女性の自宅に「金融庁職員」と称する男が現れ、女性からその場でキャッシュカード3枚を受け取った。

 しかし、一連のやりとりは詐欺グループが仕掛けたワナだった。電話をかける「掛け子」とカードを受ける「受け子」。連係プレーで女性からまんまとカードを手に入れたのだ。

 詐欺グループは、女性からだまし取ったカードの口座から180万円を不正に引き出していたという。

 「男たちのグループは、千代田区内の雑居ビルを拠点に、同じ手口での詐欺を繰り返していた。29年5月から10月にかけて100件以上も犯行を重ね、被害総額は少なくとも8000万円以上に及んでいた」(捜査関係者)

「表の顔」は不動産会社代表 「裏の顔」は…

 だが、悪事も終焉(しゆうえん)の時を迎える。

 警視庁捜査2課は、小金井市の女性が被害に遭った直後の10月17日、詐欺グループの5人を逮捕した。

 その後、地道な突き上げ捜査を重ねた同課は徐々に詐欺グループの全貌に迫っていく。さらに3人を摘発し、2月7日、グループの中で9人目の逮捕者となったのが加藤容疑者だった。

 裏社会で詐欺グループの頂点に君臨していた加藤容疑者だったが、表社会では意外ともいえる「顔」も持っていた。

 「加藤は確かにうちの代表です。ただ、会社にはほとんど顔を出していなかったから、会社以外の所で何をやっているかは知らなかった」。困惑気味に明かすのは東京都江東区の不動産会社に勤務する男性だ。

 「深川の八幡さま」として知られる富岡八幡宮にほど近い住宅街の一角。

 門前町の風情を残すのどかなエリアに建つマンションの一室に加藤容疑者が経営する不動産会社がある。

 登記簿などによると、会社は28年8月に資本金800万円で設立。マンション用地や中古住宅の売買の仲介をおもな業務としているという。

 捜査関係者によると、加藤容疑者が率いていたとされるグループには20代~40代の男十数人が所属していたというが、前出の男性は、「代表は取引先との商談も精力的にこなしており、変わった様子は一切ありませんでした。会社には詐欺グループとの関連をうかがわせるような人間が出入りするようなことはなかった」と証言する。

 会社経営のかたわらでは、江東区有明の高級マンションの高層階に居住し、セレブ然とした日常を過ごしていたとされる加藤容疑者。しかし、悪事の上に築かれた偽りの栄光はもろくも崩れ去った。

 前出の男性は、「会社は創業直後の決算では赤字でしたが、その後は順調に業績を伸ばし、今期は黒字が期待できるところまできていた。上場企業との取引もあり、まさにこれから、というときだったのに…。事件によって先行きは全く見えなくなった」と肩を落とした。