コーチ経験なしに不安の声も ヤンキース新監督のブーンって誰

スポーツ異聞
キャンプ開始を前に会見するヤンキースのブーン新監督。その手腕が注目の的だ(AP)

 米大リーグの名門で、最多の27度もワールドシリーズ優勝を誇る強豪でもあるニューヨーク・ヤンキースの新監督にアーロン・ブーン氏(44)が就任、スター軍団を率いて米フロリダ州タンパで春季キャンプをスタートさせた。

 あれっ? ブーンって誰だっけ。「名前は聞いたことがあるな」と思ったファンも多いのではないか。それもそのはず、大リーグの球史に残る名勝負とされる2003年、アメリカンリーグ優勝決定シリーズ(ALCS)ヤンキース-レッドソックス第7戦で、延長十一回、サヨナラ本塁打を放ったヤンキースの三塁手だ。

 松井秀喜外野手(当時、現ヤンキース・ゼネラルマネジャーアドバイザー)の大リーグ1年目の年。松井は、この試合でもスタメンに入っていた。日本でも生中継されたので覚えているファンも多いはずだ。

 試合は、レッドソックスのエース、ペドロ・マルティネス投手の快投に強打のヤンキース打線が手を焼き、劣勢に。ところが、2-5で迎えた八回、ヤンキース打線が火を噴く。1死からデレク・ジーター内野手が右越えの二塁打を放ち、反撃の口火を切る。バーニー・ウィリアムス外野手の適時打で、まずは1点。松井が右翼線への二塁打で二、三塁に。続くホルヘ・ポサダ捕手がポテンヒット(記録は二塁打)で二塁走者の松井が好走塁と好判断をみせ、5-5の同点に追いついた。松井がホームベースを踏む際、巨人時代にはなかった小躍りしながらのジャンプは話題を呼んだ。

 一方で、ブーンは途中出場。全く蚊帳の外だったのだが、最後の最後に一発を放ち、“おいしいとこ取り”といった印象。米国のメディアも「まさか、ブーンが」と驚くほどだった。

 そんな地味な印象のブーンは引退後、スポーツ専門局であるESPNの解説者を務めていたところ、昨年12月の面接を経て、6人の候補者の中から監督の座を射止めた。このブーン、選手としての実績はさほどあるわけではない。

 祖父(レイ)、父(ボブ)、兄(ブレッド)がメジャーリーガーというまさに野球一家に生まれ、育った。高校卒業時にも、ドラフト指名されたが、それを蹴って南カリフォルニア大へ進学。レッズからドラフト3巡目で指名され、入団。03年のシーズン途中でヤンキースに移籍し、ALCSの活躍で名を馳せるのであるが、翌04年2月、禁止されているバスケットボールに興じて、左膝の靱帯を切る大けがをし、解雇された。少々、軽率な性格は否めないようだ。

 ヤンキースをクビになった後、インディアンス、マーリンズ、ナショナルズ、アストロズと渡り歩くも、10年に引退を表明した。

 これまでヤンキースの監督といえば、古くはビリー・マーティン(1928~1989年)、最近では名将と名高いジョー・トーリ(77)やジョー・ジラルディ(53)ら実績もある面々が指揮を執ってきた。

 これに対し、ブーンの実績は特筆すべきほどではない。通算1152試合に出場、1017安打、126本塁打、555打点。コーチ経験のない指揮官に、米メディアも、ブーン氏がどんな手法でチームを率いるのか、興味津々だ。

 「ニューヨーク・ポスト」(電子版)は「ヤンキースのキャンプはアーロン・ブーン次第だ」との見出しで、「ブーンの状況は他に類をみない。なぜなら、彼はどのレベルでもコーチなどを務めたことがないからだ」と指導者の経験がないことを不安視しているようだ。

 辛辣なことで知られるニューヨークのメディア。恐らくはブーンのキャンプを手ぐすねを引いて待っているだろう。お手並み拝見といったところか。

 ブーンは低い下馬評を、良い意味で裏切るかにも注目だ。