名門・東北大で起きた留学生集団薬物事件 こうして薬物汚染は広がった!

衝撃事件の核心
ニコラス被告が住んでいた東北大の国際交流会館=2月14日、宮城県仙台市

 ヘロインやMDMAを密輸し、所持したとして麻薬取締法違反罪で起訴された東北大(仙台市)のオーストラリア人留学生、クロトフィル・カラム・ニコラス被告(20)。仙台地裁で開かれた初公判の被告人質問で、同大の別の留学生6人にコカインを譲り渡した理由を語った。7人はいずれも入国して1年足らず。旧帝国大学の名門・東北大で、薬物汚染はどう広がっていったのか。

 ニコラス被告は昨年10月、ヘロイン0・98グラム(3万円相当)と合成麻薬MDMA6・99グラム(2万8千円相当)の入った郵便物を、自分宛ての国際郵便で海外から大学寮の部屋に発送させたとして12月に逮捕された。同12月には、自宅でコカイン6・53グラムとヘロイン0・07グラムを所持。1月に起訴された。

 公判では、ニコラス被告は過去にも薬物の使用歴があったことが明らかにされた。

 郵便物は友人を通じて英国から取り寄せようと目論んでいたが、その手口は、何のカムフラージュもすることなく、通常郵便で発送させるという「稚拙で軽率」(弁護側代理人)なものだった。

 ニコラス被告が昨年12月に逮捕されてから約1カ月後。同大の6人の留学生が、ニコラス被告から無償でコカインを譲り受けたとして逮捕された。ニュージーランド、スイス、フィリピン、オーストラリア、スウェーデン、ボスニア・ヘルツェゴビナ国籍の男女6人は、いずれも昨年、同大に入学した仲間だった。

 ニコラス被告と6人の関係が結びついたきっかけは、授業でも、サークルでも、アルバイトでもなかった。

  見られたから…

 つなげたものは麻薬。公判での被告人質問ではニコラス被告は動機について、「(逮捕された6人のうち数人に)学生寮で使用しているのを見つけられて、一緒に使おうと誘った」と証言した。学生寮のおのおのの部屋だけでなく、東北随一の繁華街・国分町(こくぶんちょう)のクラブのトイレでもコカイン若干量を渡していたという。

 東北大のホームページによると、同大では平成29年5月1日現在、中国人の1044人を筆頭に国費・私費合わせて計2028人の外国人留学生を受け入れている。こうした東北大の留学生は事件をどう受け止めているのか。

 イギリス国籍の男子留学生(22)は「マリファナが法的に認められている国もあるが、それを持ち込めると思ったのだろうか。勉強しに日本へ来ているのに、なぜ法律を犯すのか」と憤った。

 被告は交換留学枠で、1年間留学生活を送る予定だった。同大は「事実の解明に努めるとともに、留学生の受け入れにあたっての審査体制の強化と留学生への禁止薬物に関する教育に徹底して取り組む」とコメントを出している。

  違法でない国も

 だが、留学審査にも困難が伴う。大学関係者によると、例えば大麻などの使用が違法でない国の留学生を受け入れる場合、留学を希望する学生の情報を照会するときに麻薬などの使用歴を問うことに対して、「強制はしづらい。あくまで任意で申し出てもらうしかないが、現実的ではない」という。

 初公判で被告は「全て事実です」と起訴内容を認めた。検察側は論告で「見つかった薬物はコカインだけで217回分にのぼる。相当な量で、犯行は悪質だ」と指摘し、懲役3年を求刑した。

 被告人質問では「多くの人に迷惑をかけて申し訳ありません」と謝罪し、法廷では終始反省の色を見せたニコラス被告。弁護側は執行猶予付き判決を求め、即日結審した。

 なぜ麻薬を無償で譲り渡したのか。口止めのためか、友人になりたくて、カネを取るのは気が引けたのか-。譲り受けた6人はすでに不起訴処分となっている。ニコラス被告はひとり、3月に判決を言い渡される。

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 【東北大学】東京大、京都大、北海道大などと並ぶ「旧帝国大」の一つで、明治40(1907)年6月、東北帝国大学として創立。初代総長は澤柳政太郎。「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」の理念を掲げている。ホームページなどによると、大正2(1913)年には日本の大学として初めて、3人の女子の入学を許可した。学部は、文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部、医学部、歯学部、薬学部、工学部、農学部。大学院や留学生を含めた学生数は18019人(平成29年5月1日現在)。総長は里見進氏で第21代。役員・職員数は6433人(同)。