俳優、遠藤憲一「家族の旅路 家族を殺された男と殺した男」(フジテレビ系 土曜日午後11時40分)

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ドラマ「家族の旅路」(フジ系)出演の俳優、遠藤憲一(宮川浩和撮影)

経験したことのない犯罪者役

 「刑務所に入る役はいっぱいやりましたが、今回は心のひだを前面に出す、経験したことのない犯罪者の役。興味を持ってやらせてもらいました」

 小杉健治のミステリーを連続ドラマ化した本作で、一家3人を惨殺した罪によって死刑が確定した柳瀬光三役を演じる。死刑執行を待つ身だったが、自分が殺した被害者の息子・浅利祐介(滝沢秀明)が再審請求担当の弁護士として現れ、隠された事件の全貌が次第に明らかになっていく。

 妻・あかね(横山めぐみ)は男と出奔。がんに侵され、赤ん坊の長男を抱え途方に暮れる柳瀬を親身に世話してくれた一家をなぜ惨殺したのか? 再審請求は死刑執行を遅らせるため? 真犯人はほかにいる? 事件の後消えた長男の行方は? さまざまな疑問が浮かぶ序盤の展開。

 「犯行を自白したのに、裁判で一転して犯行を否認し再審請求した男と、浅利と面会したときの、すべてをあきらめ死刑執行を待つ男。視聴者に、どちらが本当だろうと疑問を持たせ、後で、あの表情はこういうことだったんだ、とわかるように表現していくのが難しい」

 テーマは、家族や大切な人を「愛し抜くとはどういうことか」だという。「そんなテーマを真っ向から描くことが難しい時代ですので、久々にぐっと入り込んでやっている」とも。難しい役だが、それだけにやりがいも十分なようだ。

 柳瀬と長男、浅利の育ての親になってくれた伯母夫婦(益岡徹、いしのようこ)、末期がんで余命いくばくもないあかね、あかねと再婚相手との娘で、浅利に再審を依頼した礼菜(谷村美月)。17歳で家出、奔放に暮らしてきた娘を今も許さないあかねの父(目黒祐樹)。さまざまな親子の愛が複雑に交錯する。

 「それぞれ置かれた立場が違うし、愛し方も違う。ドラマを見てくれた人が、自分にふさわしい家族の愛の形を見つけてくれたら」

 存在感のある演技派俳優として幅広い役柄をこなすが「どの作品でも使ってよかったと思われるように、一生懸命工夫してやっていく。簡単にやれる役はひとつもない。よりおもしろく、より深く。役者にはゴールはない。それが苦しさであり面白さですね」。(文化部 栫井千春)

 〈えんどう・けんいち〉昭和36年生まれ、東京都出身。58年、ドラマ「壬生の恋歌」(NHK総合)でデビュー。以後ドラマ「真田丸」(NHK総合)、「ドクターX」(テレビ朝日)、「お義父さんと呼ばせて」(フジテレビ)、映画「その男、凶暴につき」「誰も知らない」「うさぎ追いし 山極勝三郎物語」「ミックス。」など出演多数。ナレーターとしても活躍中。