だました相手からさらに搾り取る… 「親心につけこむ卑劣な手口」架空コイン詐欺

衝撃事件の核心

 だました相手をさらにだます-。高齢者らから40億円超をだまし取ったとされる詐欺集団の実態が警視庁の捜査で明らかになった。架空のコインの販売を持ちかけて現金を詐取したとして、警視庁は詐欺の疑いで、東京都内の貴金属販売会社の実質的経営者の男ら7人を逮捕した。捜査関係者によると、男らは別の投資詐欺を仕掛けた被害者らに「被害を回復できる」と誘いかけ、2度にわたって金を搾り取ったという。産経新聞の取材に応じた詐欺グループの関係者が老獪(ろうかい)な“だまし手口”を語った。

親心につけこむ卑劣な「二重詐欺」

 「わが子の行く末を案じる親心につけ込んだ」

 2月上旬、産経新聞の取材にこう話したのは50代の男性。警視庁生活経済課が1月31日、詐欺容疑で摘発した貴金属販売会社「千笑(現ゴールドスター)」に一時出入りし、同社の内情を見聞きしていたという。

 捜査関係者によると、実質経営者として逮捕された薬師神学容疑者(51)らは、平成25年11月~26年9月、「英国ロイヤルベビー記念コイン(Bコイン)」と称する架空のコインの販売事業をめぐり、高齢者らから多額の現金を詐取した疑いが持たれている。

 薬師神容疑者らとも親交があった男性は、そのやり口を「実に巧妙だった」と振り返った。

 最初の詐欺の舞台となったのは、当時、「若山」と名乗っていた薬師神容疑者が20年8月に東京都港区で創業したコンテナ販売会社だった。

 薬師神容疑者らは別の勧誘業者と連携。24年11月ごろから70代以上の高齢者を“メーンターゲット”として、コンテナの所有権を販売する事業をスタートさせた。勧誘の名目として、23年3月に発生した東日本大震災を使った。

 「震災の影響でコンテナの需要が広がっている」「出資すれば運用益を還元する。安定して配当が得られる」などと誘いかけ、コンテナのリース事業への出資を呼びかけた。コンテナ1基の値段を500万円とし、それを10口に分割。1口50万円で所有権を売りさばいていたという。

 だが、香川県などでの強引な勧誘手法が問題視され、25年5月、同県から業務停止命令を受けて事業は破綻。集めた出資金の多くは返還されないままとなった。

 関係者の男性は「彼ら(詐欺グループ)は、名簿業者から入手した名簿を基に、心身に障害を抱えた子供を持つ高齢者を中心に勧誘を繰り返していた。子供の将来を心配する親心につけこんだ格好だ」と振り返る。

詐欺ツールは、コンテナ→仏具→偽コイン

 しかし、薬師神容疑者らの手口はこれで終わりではない。

 関係者によると、金集めのための“ツール”は「コンテナ」から数珠や鈴などの「仏具」、そして「英国ロイヤルベビー記念コイン」と称する偽コインへと変遷していったという。破綻したコンテナ所有権のリース事業で損害を被った被害者らに、「被害が回復できる」と二重三重の詐欺を仕掛けたのだ。

 コンテナの次に売り出した仏具は「金で作った仏具に投資すれば税金対策になる」と称して勧誘。偽コインを売り出したのは仮想通貨が話題になり始めたころで、「必ず価値が上がる」と持ちかけたとされる。捜査関係者は「一度だました相手は何度でも引っかかるという感覚だ」と怒りを込めて話した。

 警視庁生活経済課の調べによると、数度にわたる詐欺によって薬師神容疑者らが被害者から巻き上げた金は約40億円にも上る疑いがあるという。

 多額な詐取金を手にしたとみられる薬師神容疑者の暮らしぶりについて、前出の男性は「東京・恵比寿に居を構え、運転手付きの高級ミニバンを乗り回し、六本木のクラブに毎晩のように繰り出していた」と振り返る。

 かすめ取った金を享楽の宴の原資としていたのか-。被害者の無念を晴らすためにも、事件の全容解明がまたれる。