錦織圭との比較でメディアが優位強調 鄭現の登場で韓国にテニスブーム 一過性?

スポーツ異聞
全豪テニスで韓国初の4強入りした鄭現。一気にブームが到来した(AP)

 テニスの四大大会今季第1戦、全豪オープンで、鄭現(チョン・ヒョン、21)が韓国選手として初めて男子シングルスでベスト4に進出すると、韓国メディアは錦織圭(28)よりも急速に成長したなどとお得意の比較論で悦に入っていた。テニスにあまり関心がなかった韓国国民もにわかテニス・ファンに変貌し、テニス商品市場は鄭現の試合後の24時間で前年の96%の売り上げを記録したという。その一方で、韓国のネットユーザーは何かと比較しなければ収まらないメディアの体質を批判している。

 全豪オープンで、鄭現が脚光を浴びる最大の要因は男子シングルス4回戦で元世界1位でグランドスラム12勝のノバク・ジョコビッチ(30、セルビア)に7-6、7-5、7-6でストレート勝ちしたことだ。スポーツ東亜は「テニス不毛の地と呼ばれるアジアから来たスーパースターだからこそ、より多くの関心が集中している」と賛辞を込めた。

 さらに「今大会以前は無名に近かった」(東亜日報)存在がベスト4に進むと、1932年の全豪オープンで日本の佐藤次郎(1908~1934年)以来となるアジア選手の4強を海外メディアは「どう報じたか」と題して朝鮮日報は報道した。英紙ガーディアンは「優れた選手であるだけでなく、外交官並みの話術も持っていると報じた」と紹介。米メディアは「『鄭現が決勝に進出すれば、アジア人選手で唯一、メジャー大会準優勝を果たした錦織圭と同じ列に立つことになる』と報じた」と朗報を並べた。

 スポーツ東亜は、四大大会で鄭現に先立って最も良い成績を挙げた選手として、2014年の全米オープンで準優勝の実績がある錦織を取り上げて、鄭現と比較。2007年にプロ転向した錦織がベスト4に初めて進出したのは準優勝した全米オープン。7年かかっている。これに対し、2014年にプロ転向した鄭現はわずか4年で四大大会4強という結果を出しており、「これは同じアジアの選手たちと比較して、かなり早い成長である」と指摘。「鄭は錦織より3年も前にメジャー大会4強という敷居を踏んだ」と優位性を誇った。

 韓国では、国際大会での韓国人選手の活躍によって、今まで顧みられなかったスポーツに急にスポットライトが当てられ、競技人口が急増する状況が生まれている。女子ゴルフの朴セリ(40)が1998年に20歳6カ月という当時の史上最年少で全米女子オープンを優勝すると、韓国内でゴルフ熱が沸騰。現在、日米ツアーで活躍する女子選手は朴セリの活躍を見てゴルフを始めたという選手が多い。2010年バンクーバー五輪でキム・ヨナ(27)が女子フィギュアスケートで金メダルを獲得すると、韓国内で「不毛」と言われたフィギュアが脚光を浴びようになった。

 海外メディアによると、今回の鄭現の活躍で、道具をそろえる費用やコート不足を理由にテニスを始める市民が少なかった韓国内の商品市場はラケットやバッグ、ウエアの売り上げが跳ね上がる活況になっているという。鄭現の準々決勝は高視聴率を記録したと報じられる。

 今回の躍進で、鄭現のATP(男子プロテニス協会)ランキング(1月29日時点)は58位から29位にジャンプアップ。全豪オープンの4強進出で賞金88万豪州ドル(約7560万円)を獲得した。これまでの賞金総額が170万9608ドル(約1億8634万円)だったので、1大会で生涯獲得額の半分近くを稼いだことになる。

 ただ、今回の“鄭現ブーム”は一過性なのか。スポーツ東亜は「真のアジア・ナンバー・ワン」に成長するには「全豪後も安定した成績を残さなければならない」と強調した。実際、鄭現はATPツアーでまだ1つのタイトルしか取っていないのだ。