きょう2月7日は「北方領土の日」 ゆるキャラ、「北方領土問題」を語る

 
産経新聞の取材に応じる北方領土のイメージキャラクター、「北方領土エリカちゃん」(本間英士撮影)

 2月7日は「北方領土の日」。なぜこの日なのかを含め、北方領土に関心を寄せる人は多くないのが実情だ。「北方領土問題」とは何か。どういう経緯をたどり、現在に至ったのか。北方領土のイメージキャラクター、エリカちゃんに話を聞いた。

“直球”ツイートで話題

 北方領土は、北海道の北東に位置する、北から▽択捉(えとろふ)島▽国後(くなしり)島▽色丹(しこたん)島▽歯舞(はぼまい)群島-のことだ。1945年からロシア(当時ソ連)が実効支配している。

 択捉島より北の得撫(ウルップ)島などの島々については、「千島列島」(ロシア名・クリル列島)と呼ぶのが一般的だ。千島列島は1875年に明治政府がロシアと交わした樺太千島交換条約後は日本領になったが、1951年の「サンフランシスコ平和条約」で日本政府は、これら千島列島における諸権利を放棄した。

 だが、北方四島に関しては、日本政府は領有権を放棄していない。

 「北方四島は(歴史上)外国の領土となったことがない、日本固有の領土なんだピィ」

 語尾に「ピィ」がつく独特の口調でこう強調するのは、「北方領土エリカちゃん」。北方領土のイメージキャラクターだ。

 北方四島の調査や啓発活動、旧島民への支援などを行っている独立行政法人「北方領土問題対策協会」(荒川研理事長)によればエリカちゃんは女の子で、北海道根室市納沙布岬(のさっぷみさき)の崖に住んでいる。ちなみに好きな食べ物は、根室産のサンマに北方領土のサケ、マス。悩みはペンギンに間違えられること、だという。

 エリカちゃんは、主にツイッターやフェイスブックなどインターネットのSNS(会員制投稿サービス)を通じ、北方領土の情報を分かりやすく発信することに努めている。

 2015年2月につぶやかれた以下のツイートがインターネット上で話題になったので、覚えている人もいるのでは。

 「北方領土に関するクイズを出すピィ~♪まずは初級編だピ! 【第1問】北方領土を不法に占拠しているのはどの国でしょう?」

 見た目や言葉遣いのかわいらしさと、“直球”の設問とのギャップが話題を集め、リツイート(引用発信)数は3万を超えたのだ。

北方領土問題はなぜ起きたのか

 外務省の公式サイトなどによると、北方四島が国際的に「日本領土」と位置づけられたのは1855年2月7日。日露両国が調印した「日露和親条約」により、択捉島とその北にある得撫島の間に国境が定められた。この日付が、1981年に制定された「北方領土の日」になる。

 だが、大戦末期の45年、ソ連が「日ソ中立条約」の破棄を宣告。その後国境線を破り侵攻し、北方四島と千島列島を占拠した。51年、日本と米英など連合国の間で交わされた「サンフランシスコ平和条約」でも、ソ連は参加しなかった。

 終戦から11年後の56年、日ソの関係改善の交渉が行われた際、平和条約こそ締結されなかったが、「日ソ共同宣言」で色丹、歯舞の2島を「平和条約締結後に引き渡す」ことが明記された。

 しかし、戦後73年たった今も平和条約は結ばれておらず、北方領土は返還されていない。ソ連・ロシアによる法的根拠のない“占拠”が今日まで続いている-。これが、日本政府の見解だ。

なぜ解決しないのか

 なぜ、今も北方領土問題は解決していないのか。

 エリカちゃんへの取材に同席した同協会上席専門官の宮原慶彦さんは、「外交交渉の結果であるため、さまざまな学説がある」と前置きしたうえで、「北方四島が地理的・防衛的な要衝に位置する」ことを挙げる。

 国後島と択捉島の間にある海峡「国後水道」は水深が深く、軍艦が通行しやすい。ロシア側から見れば、北方四島は艦隊がオホーツク海から太平洋に出るための要衝なのだ。

 同協会主事の尾中理樹さんは、北方領土問題を知る必要性について、次のように説明する。

 「(ロシアなどとの)外交交渉を力強く後押しし、返還を実現させるには、国民の皆さんの“世論”が必要なのです」

 エリカちゃんの活動も、その一環だという。SNSを通じて積極的に情報を発信したり、北方領土に関する各種イベントに出席したり、時にはゆるキャラの集うイベントにも参加する。

 エリカちゃんは、自身について「単なるゆるキャラではないピ。言うべきことは言っていくピィ」と主張。そのうえで、「硬軟織り交ぜた話題で、世代を超えて皆さんに北方領土問題に興味を持ってもらえるとうれしいピィ♪」と意気込む。

おいしい海産物の宝庫

 北方領土の問題に対して、世間的な関心が低い理由は何なのか。

 宮原さんは、「日本固有の領土が、他国に占拠されている。普通に考えたらおかしな状況ですが、(地理的に遠いため)多くの国民の皆さんにとって、直接的な影響はないことが理由なのではないでしょうか」と指摘する。

 では、北方領土が返還された場合、具体的にどのような利点があるのか。宮原さんは、「最大のメリットは、今はビザなしでしか行き来できない元島民の方々が、自由に故郷に帰ることができる。これが一番の目的です」としたうえで、「漁業権の復活も重要です」と語る。

 北方領土周辺の海域は、千島寒流と対馬暖流が交じわっており、「非常に豊かな漁場」だという。この海域では、サケにマス、タラ、スケトウダラなどが多く採れる。ウニやタラバガニ、ハナサキガニなどの高級食材も豊富だ。

 「日本人の食生活にいい影響を与えると思います」(宮原さん)

 豊かな自然も魅力だ。温泉もあるといい、「太平洋を見ながら温泉につかるのは、すごく気持ちがいい」(尾中さん)。

 また、付近の海域には対馬暖流が流れているため、冬の平均気温は零下5~6度と、冷え込みもそれほど厳しくない。その一方で、夏の気温は8月で平均16度程度。避暑地としての需要も喚起できそうだという。

北方領土の若者も「漫画・アニメ好き」

 今年は日露両国にとって、「日本におけるロシア年」「ロシアにおける日本年」だ。政治や経済に加え、文化やスポーツなどの各分野で交流が進むことが期待されている。

 近年、北方領土に住む若者の間でも、漫画やアニメなど日本発のポップカルチャーのファンが増えているという。エリカちゃんも、現地の人たちが日本に親しみを持っていることを肌で感じているという。

 「『ワンピース』に『ナルト』、『スラムダンク』…。現地でも漫画・アニメ文化は、本当に盛んだピィ。友好関係や交流活動は盛んになってほしいし、北方領土問題についても皆さんに関心を持ってもらえるとうれしいピィ♪」(文化部 本間英士)

 北方領土エリカちゃん 2008年、内閣府が政府広報のためパソコンで表示されるキャラクターとして制作。北方領土問題の普及活動に努めるイメージキャラクターとして全国各地の関連イベントにも出席している。道東や北方領土周辺に生息する鳥「エトピリカ」が名前の由来。北方四島それぞれに友達が住んでいる。

 北方領土の日 北方領土問題に対する国民の関心と理解を深め、北方領土返還の機運を高めようとする記念日。1981年1月に毎年2月7日を北方領土の日とすることが閣議了解された。東京で官民一体となった北方領土返還要求全国大会が開かれるなど、この日を中心に各地で啓発活動が行われている。2月7日は、1855年の日露和親条約締結日で日露国境が定められ北方四島が日本の領土と確定した。