20年ぶり株高 「日本株バブル」はいつまで続く?  武者陵司

iRONNA発
26年ぶりに東証終値2万4000円台を回復したことを示す株価ボード=1月23日午後、大阪市中央区(奥清博撮影)

 「バブルが起きているという状況ではない」。日銀の黒田東彦総裁がこうクギを刺すほど、日経平均株価は今年に入っても上昇傾向にある。とはいえ、2万4千円台というバブル崩壊以来の高値をつけた強気相場に波乱の芽がないわけではない。日本株市場の先行きを読む。(iRONNA)

 世界同時好況に弾みがつき、世界経済に陰りが全く見られない。国際通貨基金(IMF)をはじめ各調査機関は軒並み、日米欧先進国経済の2017年、18年見通しを上方修正した。消費に加えて投資の増加趨勢(すうせい)が顕著になっている。

 それは日本の機械受注、半導体製造装置のBBレシオ(出荷額に対する受注額の割合)、米国の耐久財や非国防資本財受注などにも表れている。一様に先進国の失業率は大きく低下し需給ギャップは着実に縮小しており、賃金・物価に上昇圧力が高まるのは必至であろう。

 金融政策は米欧で超金融緩和の転換が始まりつつあり、日本でも一段の緩和は見合わされている段階である。1980年以降、30年以上にわたって続いた長期金利の低下トレンドは2016年に底入れしたが、今年は緩慢とはいえ、金利上昇傾向がさらに顕著になるだろう。

日本企業の強み

 この趨勢をリードする米国では需給ギャップの顕著な縮小と賃金物価圧力の上昇がみられる。レーガン期以来、30年ぶりの本格的税制改革がさらに需要を押し上げるので、それは当然ドル高をもたらす。加えて、中国がハイテク「爆投資」に邁進(まいしん)している。中国は投資によって経済成長が維持されている国だが、換言すれば投資を止めた途端、経済成長も止まり、直ちに経済危機に陥る心配がある。その国がハイテクに照準を絞って巨額な投資を始めている。

 ハイテクブームにおいて日本は極めて有利なポジションに立っている。新たなイノベーションに必要な周辺技術、基盤技術のほぼすべてを兼ね備えた産業構造を持つ国は日本だけである。中国、韓国、台湾、ドイツはハイテクそのものには投資していても、その周辺や基盤技術の多くを日本に依存している。

 言い換えれば、日本のエレクトロニクス企業群は、このイノベーションブームの到来に際して、最も適切なソリューション(解決策)を世界の顧客に提案、提供できるという唯一無二の強みを持っている。

オンリーワン戦略

 日本企業の技術品質で優位性を持つ「オンリーワン分野」への特化という特徴は、観光などサービス業、内需産業においても当てはまることである。中国人の人気旅行先で日本がトップになったとの報道があった。豊かになったアジアの中産階級が「高品質」日本に向かっているのである。

 このオンリーワン戦略の結実が、空前の企業収益をもたらしている。直近の企業収益は、営業利益対国内総生産(GDP)比11・9%で過去最高となっている。また、日銀短観による大企業製造業の売上高経常利益率は、17年度は8・11%と予想され、それはバブル期を大きく上回るものである。

 こうしたことから日本株には大きな転換点が訪れていると思われる。日経平均株価は昨年9~10月に16連騰という「ギネスブック級の連騰」を記録し、さらに日経平均が高値からの半値戻しを達成した。「半値戻しは全値戻し」との格言に従えば、バブル期の史上最高値3万8915円が視野に入ってきたともいえる。デフレマインドが和らぎ、人々が極端なリスク回避、安全志向を改め、積極的なリスクテイクで高いリターンを求めるようになってきたことの表れであろう。

 日本の投資の中心は、圧倒的に現預金、いわゆる安全資産で国民金融資産の実に7割を占める。これに対して、米国の金融資産内訳は、安全資産2割、リスク資産7割強と全く逆である。米国の方向へ少し向かうだけで、大幅な株高が期待できる。これは「歴史的大相場」に入っていることの証拠といえるのではないか。

 【プロフィル】武者陵司(むしゃ・りょうじ) 投資ストラテジスト。昭和24年、長野県生まれ。横浜国立大経済学部卒。大和証券に入社後、大和総研アメリカチーフアナリスト、ドイツ証券副会長などを経て、平成21年に武者リサーチを設立。近著に『結局、勝ち続けるアメリカ経済 一人負けする中国経済』(講談社+α新書)。

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