新しい中小金融で日本経済は蘇る 大銀行首脳は一様に「資金需要が弱い」と口をそろえるが…

田村秀男のお金は知っている
銀行の企業向け貸し出し 前年比伸び率と円・ドル相場

 さあ、新年だ。今年の景気はどうなのか。好循環を生むためにはカネ、つまり銀行融資の活発化が欠かせないのだが、大銀行首脳は一様に「資金需要が弱い」と口をそろえる。本当にそうなのか。(夕刊フジ)

 「そうではありません。中小企業・零細業者向け貸し出し需要はいくらでもあります。掘り起こせばよいのです」と語るのは第一勧業信用組合(本店東京・四谷)の新田信行理事長だ。確かにグラフを見れば、銀行融資の伸びは中小企業向けが大企業向けを圧倒している。1ドル=100円を超える円安水準で中小企業の資金需要が伸びるのだ。

 大企業は内部留保を大幅に増やし、大口の銀行借り入れは東芝など経営危機に見舞われた特殊なケース以外はほとんどない。大銀行は中小企業向け融資拡大を目指すが、バブル崩壊後のリストラ過程で審査部門を大幅に縮小したために、貸出先の選別ができる「目利き」がほとんどいない。おのずと、不動産担保の有無など従来の選別基準に頼る。それでは、資産のない若手が新規ビジネスを立ち上げようとしても、融資を受けられない。

 ベンチャー投資ファンドのリスクマネーがふんだんにある米国では、若者たちが投資家向けに新規のビジネスモデルのプレゼンに成功すれば、資本を手に入れることができる。投資ファンドも投資先が株式市場に新規上場すれば、投資額を大幅に上回るキャピタルゲインを獲得できる。

 それに比べ、日本ではベンチャー投資が低調だ。金融の構造を米国型に変えようとして、政府が過去20年以上もの間、旗を振ってきたが、銀行依存の金融システムはほとんど変わらない。

 5年前に始まったアベノミクスは日銀の異次元金融緩和によって、年間で最大80兆円規模の資金を追加発行し、銀行に流し込んできたが、銀行融資は年間10兆円程度しか増えない。

 どうすればよいのか。答えは簡単、新しい日本型銀行融資モデルをつくればよい。その芽は膨らみ始めている。前出の新田さんは、「不動産担保や財務諸表がどうだとか言わず、貸出先に直接会ってビジネスモデルを話し合い、さらに事業の現場を見ればよい」。

 融資先はベンチャー起業を志す無一文の若者から、喫茶店を開業したい芸者さんまで多種多様、貸し出しに値する実需はふんだんにある。不動産担保なしでも金利2~3%で貸し出す。

 新田さんはさらに、全国の信組をネットで結び、地方の新ビジネスを大消費地首都圏に結びつけようと奮闘している。資金と流通ルートを結びつけ、各地の特色に合ったビジネスを沸き起こす試みだ。消費の裏付けさえあれば、各地独特の美味で高付加価値の野菜や果物、魚介類、ジビエ、地酒、手工業品、工芸品など、ビジネスが刺激され、成長する。若者が地方に定着する環境が整う。

 国内総生産(GDP)の2倍以上、1350兆円にまで膨らんだ現預金のほんの数%を目覚めさせるだけで、日本再生、地方創生は可能なのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)