5本腕のクモヒトデ型ロボット登場 想定外にも対処、東北大など開発

びっくりサイエンス
東北大などが開発した「クモヒトデ型ロボット」(同大提供)

 ロボットには人型やヘビ型など、さまざまなタイプがあるが、クモの脚のような長い5本の腕を持つヒトデの一種「クモヒトデ」をモデルにしたロボットが登場した。外敵に襲われ腕を数本失っても動ける「本物」の機能を模倣し、東北大などが開発。想定外の事態で故障しても即座に自分自身で対処し、そのまま移動を続けられるという。

5本の腕が協調

 自分自身で自律的に移動できるロボットは、災害現場や宇宙環境など人間が到達できないような過酷な環境下でも、適切に能力を発揮することが期待されている。しかし、多くのロボットは少しでも故障が発生すると全体に影響が及び、機能が停止してしまうことが大きな課題となっていた。

 現時点での対策は2つある。1つ目は、あらかじめ起こり得る故障を考えて対応策を用意しておくこと。だが、これでは想定外の故障に対応できない。2つ目は、学習や試行錯誤を通じてロボットが故障に応じた動き方を習得することだが、複雑な計算が必要になるため、適応するまでに数十秒から数分もの時間がかかってしまう。

 そこで研究チームは、動物の動きを参考にすることにした。多くの動物は、身体の一部に障害が生じても即座に対応することが可能だからだ。そして、数ある動物の中からクモヒトデを選びだした。

 クモヒトデは、盤と呼ばれる体の中心部分から、細い5本の腕が放射状に伸びた棘皮動物の一種だ。外敵に襲われるなどして腕を何本か失っても、残りの腕を即座に協調させて動き回れることが知られている。

 クモヒトデは、「脳」と呼べるほど発達した中枢神経を持っていない。そのため、一部の腕を失ってもスムーズに移動することができるのは、残った腕から得る局所的な感覚情報に基づいているらしい。

ハンマーで壊しても前進

 チームは、腕を除去したり短くしたりしたクモヒトデの行動観察で、残った腕の動きについて、こんな仮説を立てた。

 クモヒトデが前進する際はまず、放射状に伸びた5本の腕で地面を押し、それぞれが地面から押し返される力を検出。進行方向に向けて踏ん張れると感じた腕にはさらに力を込めて地面を押し、前方へ進む。一方、踏ん張っても進みたい方向に行けないと感じた腕は、そのまま力を込めず何もしない。どう動くかは、個々の腕が判断している。

 この実にシンプルな制御機構をプログラムに置き換え、開発したクモヒトデ型ロボットに搭載。5本の腕を使って前進している最中に、1本の腕をハンマーで破壊したところ、即座に残り4本を協調させて前進を続けた。さらに続けて腕を破壊していっても、前進は可能だった。

 ロボットの腕が協調するパターンなどは、実際のクモヒトデの動きとおおむね一致したという。

 この研究成果は、災害現場などの過酷な環境下でも人間による修理をあてにせず、自律的に活動できるロボットの開発につながる。しかも、脳のような中央集権的で高度な制御機能を使っていないことから、極めてシンプルな形で、素早く故障に対応できる点が大きなメリットだ。

広がる「生物模倣」研究

 近年の製品開発の現場では、生物が持つ優れた機能を模倣して活用する「生物模倣(バイオミメティクス)」という開発手法が大きな流れとなっている。

 壁や天井を平気で歩けるヤモリの脚がヒントの粘着テープ、光をほとんど反射しない蛾の目の構造を参考にして生まれた無反射フィルム、水中を高速で泳げるマグロの皮膚特性から開発された船舶用塗料など、実用化したケースも数多い。今回のクモヒトデ型ロボットも、典型的な開発例だ。

 一見、生物とロボットは対極の存在であるように見えるが、これからも意外な生物から、私たちの生活に役立つ優れた機能が見つかるかもしれない。(科学部 伊藤壽一郎)