家計に対する増税主義の策謀にだまされるな 97年度の増税後にデフレ不況突入、財政収支悪化の失敗

田村秀男のお金は知っている
民間給与所得者の階層別人数と比率

 大方のメディアは政府・与党が合意した所得税増税容認だが、拙論は別だ。(夕刊フジ)

 米国トランプ政権と議会は大規模な減税の方向で一致し、景気拡大を加速させようというのに、依然としてデフレ圧力が止まない日本が停滞する個人消費を押し下げる議論しかしないのは異様だ。どの国でも、経済成長の責務を持つ政治・政策としてはお粗末に過ぎやしないか。

 政府・与党は今週初め、年収850万円超の会社員を対象にした所得税増税で合意した。国税庁の統計によると、年収800万円超、1000万円以下の会社員は全体の4・6%、1000万円超は4・3%なのに対し、500万円以下は71%、500万円超800万円以下は20%弱だ。

 この構成比はアベノミクス開始前の2012年に比べほとんど変わらないが、数では800万円超が69万人、500万円以下は155万人それぞれ増え、格差は拡大気味だ。

 メディアがおとなしいのは、(1)増税対象は「高額所得者」に分類される(2)家計の税負担増は年間900億円で小規模(3)実際の増税対象者は公務員も含め、子育て・介護世帯を除くので、全給与所得者の5%程度-などの口実がある。建前だけは「平等」にこだわり、「金持ち」に冷たい大衆迎合メディアらしい反応だが、ちょっと待てよ。もっともらしい化けの皮を剥いでみれば、本合意の正体は家計に対する増税主義そのものではないのか。

 思い起こせば、財務省の策謀に弱い歴代の政権はことあるごとに、パブロフの犬のごとく財源すなわち増税と反応してきた。11年の東日本大震災が起きるや、民主党の菅直人政権(当時)はただちに増税し、全国の家計に負担を押し付けた。

 次の野田佳彦政権は自民、公明両党を巻き込んで消費税増税の3党合意に踏み込んだ。慢性デフレの泥沼は完全に無視し、野田氏は「増税すれば景気はよくなる」とうそぶいた。増税して社会保障財源を確保すれば、家計は将来不安が少なくなり、消費に励むという論法だが、1997年度の消費税増税後、デフレ不況に突入、肝心の財政収支が悪化した失敗を一切省みなかった。

 公正に言えば、この増税主義は自民、公明両党内にも根付いている。

 所得税増税は19年10月予定の消費税再増税実現の手段である。消費税率10%時に食料品などに軽減税率が導入されるのだが、軽減分だけ消費税増収見込み額が減る。タバコ増税をしても穴埋め必要額はおよそ6000億円と財務省は騒ぐ。その財源確保のための増税という理屈を与党は受け入れた。今回合意の小規模所得税増税は次から次へと繰り出す増税の前触れなのだ。

 19年5月には平成に代わる元号に改まる。10月には消費税増税、翌年1月が所得税増税実施、夏は東京五輪だ。各国の例から見て、五輪は終われば消費が冷える。増税主義者たちは新元号時代もデフレにしようとしている。(産経新聞特別記者・田村秀男)