「かまってちゃん」全開のエビ外交、「報復」で忙しい内政…あまりに“韓国らしかった”1カ月

ソウルから 倭人の眼
トランプ米大統領夫妻歓迎晩餐会のメニュー。マツタケ釜飯、韓国産牛肉のカルビ、「独島エビ」の和え物が並ぶ(韓国大統領府のホームページより)

 トランプ米大統領の訪韓、文在寅大統領による東南アジア歴訪と中国の習近平国家主席との首脳会談など、慌ただしく11月前半の外交日程が過ぎた韓国。トランプ氏の訪韓では、文大統領が晩餐(ばんさん)会に元慰安婦の女性をわざわざ招待し、“トランプ・元慰安婦の抱擁”まで実現。反米市民団体は反トランプのデモを展開するなど、官民それぞれが“韓国らしさ”を前面に出しきった。また、冷却状態だった中国をめぐっては、首脳会談を経て関係が復活したかのような安堵の半面、不安感も残っている。国内では連日のように、「政治的報復」との批判もよそに旧保守政権たたきが続く。韓国らしい1カ月が過ぎた今、また韓国らしい出来事が日々展開されている。(ソウル 名村隆寛)

(※11月26日にアップした記事を再掲載しています)

韓国の思いを!

 この1カ月の間に何度も報じらたことなのだが、「歴史に残る出来事」であるから、もう一度、ソウルでの米韓首脳会談とその前後を振り返ってみる。

 「トランプ大統領の韓国滞在が1泊2日で、日本より1日少ない」という不満が渦巻いていた韓国では、日本を意識してか、訪日直後の国賓歓迎に相当な気合が入っていた。文大統領は史上初めて、直々に在韓米軍基地でトランプ氏を出迎え、“サプライズ(驚き)”を演出。晩餐会に元慰安婦の女性を招き、日米首脳会談を終えたばかりのトランプ氏や米側来賓に竹島(島根県隠岐の島町)の韓国名である独島(トクト)を冠した「独島エビ」を使った料理を出した。

 市民団体も左派右派それぞれが、派手に韓国らしさを発揮した。親米保守派はトランプ氏を乗せた車が通るソウル中心部で白昼、拡声器を使い派手に歓迎集会を開催。かと思えば、反米左派は晩餐会を終えたトランプ氏の車を待ち構え、道路にいろいろなものを投げつける始末。トランプ氏の車は迂回(うかい)を強いられた。

 訪韓2日目、韓国国会でのトランプ氏の演説では、保守系の議員が突然、席から立ち上がり、逮捕、起訴された朴槿恵前大統領の釈放を求める英文のプラカードを掲げ、つまみ出されるというハプニングもあった。

 「韓国の思い」を伝えたい一心からの、官、政、民挙げての、それぞれバラバラのサプライズの連続であった。笑顔も見せ、米韓同盟関係を強調したトランプ氏ではあったが、約25時間滞在し目の当たりにした韓国はさぞ驚きの国であったことだろう。

手際の悪さ

 トランプ氏を見送った文在寅大統領は、慌ただしくその日のうちにインドネシアを皮切りとする東南アジア歴訪に向かった。一転して静かになった韓国社会からは、無難に米韓首脳会談を終えた安心感と、限られた時間に“やりたいこと”をやりきった末の満足感や疲労感が伝わってきた。

 トランプ氏の日韓中訪問で、韓国が最も気にしていたのは「コリア・パッシング(韓国素通り)」だ。韓国での滞在が日中よりも1日少ないことにこだわっていたことに、その胸中がうかがえた。韓国が重視されていないことことへの不安感だ。韓国は無視されることを非常に気にする。たとえ無視されていなくても、かまってもらえないことが不安なようだ。

 しかし、トランプ氏は歴訪国のうち唯一、韓国で国会演説をし、コリア・パッシングをしないことを示してくれた。トランプ氏は韓国を安心させ、韓国を後にしたわけだ。

 首脳会談前に、韓国大統領府は「国賓であるトランプ大統領を温かくお迎えしましょう」などと国民に呼びかけていた。にもかかわらず、市民団体は騒いだ揚げ句の末、トランプ氏の車にものを投げつようとした。さすがにこの非礼に対しては、韓国メディアの多くが恥ずかしさを込め振り返り、批判していた。

 一方で、首脳会談をめぐって韓国の保守系メディアからは、日本との比較に明け暮れ形式にこだわったことを戒め、米韓首脳会談に中身があったのかを疑問視する指摘もあった。

 韓国の存在をアピールしたいがため、やり過ぎてしまう。思いついたら後先考えず、やっちゃおうという、韓国にありがちのパターン。しかも、手際が悪い。

バツの悪さなどなし

 トランプ氏は、晩餐会の終わりに抱きついてきた老女を、その瞬間まで元慰安婦だとは思っていなかったそうだ。トランプ氏に元慰安婦とは認識させないまま抱擁に至った。まさに“瞬時の技”だが、首をかしげたくなる“サプライズ”だ。しかし、これについて韓国は意に介していない。

 日本政府は「独島エビ」と元慰安婦の招待について、晩餐会があった7日のうちに韓国側に抗議した。しかし、翌朝の韓国紙はどうだとばかりに抱擁シーンの写真を掲載。一部の韓国紙電子版は「安倍に衝撃を与えた」「安倍首相にひと泡吹かせた」「慰安婦・拉致被害者、韓日首脳がトランプの前で勝負」などと、喜々としてその様子を報じていた。

 ここでも、“憎き安倍”に吠えづらをかかせたつもりなのだ。“日韓味比べ”じゃあるまいし、常に日本を意識し続けた韓国はまぎれもなく、自らの習性となっている「日本との比較」をトランプ氏にも強いようとした。韓国を称賛してもらい悦に入りたかったわけなのか。

 米国大使館はトランプ氏と元慰安婦の抱擁について「単なる人間的なジェスチャーで、政治的な観点から見たくはない」(ナッパー駐韓代理大使)と踏み込まずに寛容な姿勢を示した。

 だが、明らかに韓国によく見られる手法だ。特に日本がからめば何でもあり。相手のことを顧みず、ドサクサ紛れのスタンドプレーで、お仕着せ的なやり方。外交的非礼であれ、韓国では“日本との勝負”となれば何でも許される。日本国民がどう思っていようが。

 「独島エビ」と元慰安婦の招待について、「韓国国内では韓国外務省に相談せず大統領府がやった」などとの水掛け論もあったが、覆水盆に返らず。やっちゃったことはやっちゃったのだ。しかし、米国に対するバツの悪さは無論、日本に対する配慮や遠慮などみじんも感じられない。

拉致問題と慰安婦問題を並列

 米韓首脳会談から2週間になろうとする20日、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一・外交・安保特別補佐官はソウル外信記者クラブでの懇談会で「独島エビ」について「決して意図したものではない。非常に誤解している」と釈明。日本が過剰に反応していると反論した。文氏は「独島エビはメニューに出ていない」とも述べた。

 だが、日本政府関係者によると、韓国側は日本の抗議には反応しなかったものの、日本の抗議を把握した米国の指摘を受け、メニューから「独島」名を外したという。

 元慰安婦の招待について文正仁氏は「政治的メッセージが含まれている可能性はある」とし、「日本が拉致問題を世界中で提起できるように、慰安婦女性を招待して問題を強調したかった可能性もある」と語った。

 元慰安婦の招待について抗議した日本に対し、韓国世論は「日本だってトランプ氏に拉致被害者家族を会わせたじゃないか」といった主張が主流だ。未解決の日本人拉致問題と、政府間で「最終的かつ不可逆的な解決」を確認済みの慰安婦問題を同列に並べているのだ。

 しかも、日本政府は米国政府との事前協議と合意の末に、拉致被害者家族との面会を実現させた。これに対し韓国は、自分の都合でやりたいことを速攻でやり、自己満足に浸っている。韓国の首脳会談を利用した手法や発想は、明らかに日本とは全く異なっている。

 しかし、韓国ではそんなことは関係ない。まさに「やった者勝ち」だ。サプライズ接待の連発に、トランプ氏が喜び満足し、首脳会談が成功したと思い込んでいる。独り相撲をとり身内で盛り上がった韓国。心配していたトランプ氏のコリア・パッシングがなかったことに、国民も妙に納得し、満足感に包まれているようだった。

またやられた!中国に

 トランプ氏を招いての米韓首脳会談を“無難”に終えた韓国。次は、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備問題で冷え込んだ中国との関係修復だ。

 文在寅大統領は中国の習近平主席とベトナム・ダナンで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場を利用し、会談。中韓関係の関係改善を図っていくことで一致した。中韓は10月末に、関係改善で合意したことを発表済みで、首脳会談ではこれを確認したかたちだ。

 韓国政府は、習氏から「文大統領の12月訪中の招請があった」ことをなどを挙げ、「本格的な関係正常化の基盤ができた」と自賛した。

 しかし、中国側は、THAAD追加配備の不可▽米国のミサイル防衛システムへの不参加▽日米韓の軍事同盟には発展しないの3点に韓国側が合意し、約束したと解釈している。文大統領の訪中招請に大喜びの韓国政府に対し、韓国では「中国が戻ってきてそんなにうれしいのか」(朝鮮日報)といった冷ややかな見方も少なくない。

 THAAD配備問題をめぐり、中国から経済制裁というえげつない仕打ちをさんざん受けたというのに、この喜びよう。中国との関係が元に戻ろうとしているだけであり、韓国が得たものはない。韓国はまたしても、中国にやられてしまったわけだ。悲しいかな、その自覚も薄いようだ。

 康京和(カン・ギョンファ)外相は北京で22日、中国の王毅外相と会談し、文在寅大統領の12月中旬の訪中を調整することで合意。今回の訪中で「意味ある成果を上げた」と評価した。

毎日誰かが捕まって

 文在寅大統領の外遊中、韓国では首脳外交に続き、最近すっかり見慣れた出来事が続いた。李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)の元前保守政権下での不正追及だ。

 検察は11日、李明博政権(2008~13年)で起きた軍部隊による世論工作事件に関与したとして、当時の国防相で前国家安保室長の金寛鎮(キム・グァンジン)氏を軍刑法違反(政治への関与)などの疑いで逮捕(その後、釈放)した。

 引き続き検察は、朴槿恵政権当時に情報機関、国家情報院が大統領府に裏金を上納していた事件で、朴政権当時の国情院長3人を取り調べ、このうち南在俊(ナム・ジェジュン)、李丙●(=王へんに其)(イ・ビョンギ)の両容疑者を国庫損失や贈賄の疑いで逮捕した。

 旧政権の不正追及の最終的ターゲットは李明博氏と目されている。李明博政権では、文在寅大統領の弁護士時代の仲間であった盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が不正資金疑惑により検察の事情聴取を受け、その直後に自殺した。

 李氏自身、文在寅政権の旧政権の不正追及について「改革か政治報復なのか」と不快感を示している。前政権の高官らのあら探しに忙しい韓国では、連日のように、旧政権の高官に対する取り調べや逮捕、起訴などがニュースとなっている。保守系紙は「毎日、家宅捜索や逮捕が続いている。韓国は捜査共和国なのか」と文在寅政権の“あだ討ち”への執念を皮肉っている。

まともな対応も

 一方、文在寅大統領が帰国したちょうど15日、韓国を揺るがす出来事があった。南東部の慶尚北道浦項(ポハン)付近で起きた地震だ。

 マグニチュード(M)5・4で、韓国観測史上では昨年9月に続き2番目の規模。ソウル市内でも揺れは感じられた。地震に慣れている日本人としては、驚くほどではなかったが、慣れていない韓国では、余震が続いたこともあり、社会に衝撃が走った。

 翌日に予定されていた韓国のビッグイベントである全国一斉の大学入学試験(修能)は1週間延期され、テレビのトップニュースもほぼ1週間、地震関連の日が続いた。

 東日本大震災の際、中央日報など一部の韓国紙は、1面トップに「日本沈没」とまるで自然災害に見舞われた日本の災難を喜ぶような大きな見出しを掲載した。だが、いざ自然災害がわが身に降りかかってきたら、そうはいかないらしい。

 メディアは避難所の様子を伝え、余震に注意するよう呼びかけていた。韓国政府も、外遊から帰国したばかりの文在寅大統領が緊急会議を招集し、疲れた表情を見せつつも、状況把握や対策に務めていた。当局とメディアの対応は当たり前なもので、地震に限っては国は正常に機能している。

 負傷者が出たものの、幸いなことに犠牲者はなし。ただ、地震は思わぬところで相変わらずの韓国の姿を見せてしまった。手抜き工事の発覚だ。建物の外壁やレンガが崩れ落ち、路上に駐車してあった車は直撃され、屋根が陥没。建物のコンクリートにはたくさんのヒビが入り、鉄筋がむき出しになったところもある。

日本に学べ。でも、日本にだけはやられない

 日本ではM5・4程度の地震で、鉄筋コンクリート製の建物がこれほどのダメージを受けることはまず考えられない。だが、韓国では現に起きている。さっそくメディアからは恒例のバッシングが続出した。

 同時に見られたのが、また日本との比較だ。数多くの地震を経験してきた日本の対策に学ぶべきだとの主張で、自然災害はもちろん、百貨店の崩壊、橋の崩落、大型旅客船事故など、手抜きなどが原因の事故が起きるたび、韓国ではこの手の「日本を見習え論」が必ずといっていいほど登場する。

 米中との首脳会談を終え韓国政府からは、文正仁大統領特別補佐官をはじめ、「政権発足半年で、朴槿恵政権末期からの外交の空白を取り戻した」との自己評価の声が聞かれる。「よくやった」といったところだろうが、韓国の内政や外交は、1年余り前の朴槿恵政権のスキャンダルが発覚する前から、進歩はうかがえない。相変わらずの状態で、よく言っても「これから」というところだ。

 国内では旧政権のあら探しと追及など、身内(韓国内)での足の引っ張り合いや政争が続き、手抜き工事は相変わらず発覚。中国にはやられっぱなしでも、歴史上繰り返してきたように、やはり強く出られない。

 その一方、中国にはやられても、日本にだけはやられないし、やられたくない。日本が韓国に何もしなくても、である。

 対中関係改善に続き、文在寅政権は対日関係の改善を模索しようとしている。ただし、日本へのアプローチがあっても、相変わらずの韓国の対日歴史観を根底にしたものであることは間違いない。当然、歴史問題を盾にした“対日反則技”もあり得る。米韓首脳会談で見せた韓国の手法がそれを予期させる。これまで韓国が繰り返した対日姿勢に加えて。