「日銀は政府の省になれ」に一理 政府と一体になりアベノミクス推進でデフレ脱却

田村秀男のお金は知っている
国債発行残高

 アベノミクス開始以来5年が経つが、脱デフレのメドは立たない。息を吹き返しているのが、中央銀行がカネを大量に刷っても物価を上げられない、と主張する「日銀理論」派だ。(夕刊フジ)

 代表格の一人が元日銀金融研究所長で法政大学客員教授の翁邦雄氏だ。11月26日付の日経新聞朝刊で、黒田東彦(はるひこ)総裁の現日銀執行部を批判した。日銀が「政府の別動隊になっている」と決めつけ、「政府・与党と短期的な目標を一体化して追求するなら、独立性はなくし、『中央銀行省』のように政府の一部門とした方がよい」と断じた。

 かつては、「大蔵省(現財務省)日本橋本石町(日銀本店所在地)支店」と揶揄(やゆ)されるほど大蔵官僚に支配されてきた日銀が、1997年の日銀法改正によって政府からの独立を勝ち取ったというのに、今や安倍晋三政権の言いなりになっている。「日銀を政府の省にせよ」というのはそんな怒りがこめられた隠喩(いんゆ)だろうが、考え方自体、別に悪くはない。

 日銀が政府と文字通り一体となってアベノミクスを推進するしか、脱デフレを成し遂げることはできないからだ。

 黒田日銀の異次元金融緩和政策はアベノミクスの「第1の矢」であり、日銀資金を年間で最高80兆円、国内総生産(GDP)の15%前後相当のカネを創出して、主に国債を金融機関から買い上げてきた。インフレ目標2%の達成を目指してきたが、インフレ率が上昇したのは消費税増税分が物価に上乗せされた2014年度だけで、あとは0%前後と元の木阿弥だ。

 失敗の原因は、財務官僚上がりの黒田総裁にある。総裁は財務省の意向通り消費税増税推進を唱え、増税による景気へのマイナス効果は金融の異次元緩和によって相殺されるので大丈夫、と安倍晋三首相を説得した。ところが、結果は惨憺(さんたん)たるもので、アベノミクスは大きく失速した。大失態だ。以来、黒田日銀はマイナス金利政策にも踏み切ったが、金融機関の経営悪化など負の副作用が目立つ。異次元緩和自体、マンネリ化し、何の新味も出せない。カネを刷っても使われないなら無駄だ。

 打開策はただ一つ。財政出動しかない。だが、国債など政府債務が膨らんでGDPの2倍以上という数字に脅えて安倍政権も緊縮財政路線をとらざるをえない。子育て・教育支援も2年後の消費税再増税を前提にするという始末だ。増税による失敗を繰り返す恐れは十分だ。

 ならば、ものは考えようだ。国債残高は確かに巨額だが、日銀が政府の一部に組み込まれると、日銀が保有する国債分は政府負債から帳消しになる。グラフはそれを示す。最近時点で、国債残高は920兆円だが、日銀保有を除外すると430兆円となる。そこで生じた財務上のゆとりを生かし、政府は国債を発行すればよい。100兆円規模の国債を新規発行し、子育て・教育支援、インフラ整備、防衛力増強、基礎技術強化に向け投資する。(産経新聞特別記者・田村秀男)