慰安婦問題 日本はいつまで「土下座外交」を続けるのか 山岡鉄秀

iRONNA発
韓国大統領府での晩餐会で、抱き合ってあいさつするトランプ米大統領(中央)と元慰安婦の李容洙さん=11月7日、ソウル(聯合=共同)

 韓国国会が8月14日を「慰安婦の日」と定める法案を可決した。日韓合意を無視した独善的な韓国の動きに、歴史問題をめぐる日本との溝は一段と深まった。日本政府はこじれた慰安婦問題とどう向き合えばいいのか。(iRONNA)

 訪韓した米国のトランプ大統領を歓迎する晩餐(ばんさん)会の最中、元慰安婦と称する女性がトランプ氏に抱き着いたことが記憶に新しい。多くの日本人は心底あきれ、苦々しく思ったことだろう。ただ、西洋社会で長く暮らした人なら分かることだが、トランプ氏は元慰安婦を「ハグ」などしていない。失礼にならない程度に受けただけで、むしろ右手で元慰安婦の腕を押さえて距離を取っている。あれはハグとは言わない。

 こんな陳腐なことを国家レベルでやってみせるのが真の「韓流」ということらしい。ただ、一つだけ言えることは、日本統治時代に教育を受けた韓国人に会うと、今の日本人よりもずっと立派な人が多いということだ。そのような人たちは文在寅(ムンジェイン)政権の幼稚な振る舞いを心底軽蔑している。

 韓国の演出に憤るのは無理からぬこととはいえ、もっと大事なことがある。それは、日韓合意が一方的に破られているというのに、日本はいつまで「土下座外交」を続けるのかという点である。

「定義=立論」

 海外暮らしが長い筆者が、日本政府の立場に立ったなら、まずは1次資料に基づき、政府が認識する「慰安婦制度の実態と問題点の定義」を述べ、それを軸に議論を展開する。つまり、立論から始めるのである。それをせずに「償った」とばかり繰り返しても、ごまかしているように聞こえてしまう。

 慰安婦問題が浮上した1990年代ならともかく、現在までには研究もかなり進み、慰安婦制度とは何だったか、それがかなり正確に分かってきた。1次資料に基づいて、「強制連行は行われず、慰安婦は性奴隷ではなかった」ことを明確に説明することは困難ではない。日本政府は明確で簡潔な「定義=立論」を作成し、それを一貫して使い続けるべきだ。

 あのトランプ氏に抱き着いた元慰安婦も、証言が頻繁に変わることで知られるが、哀れな存在であることに変わりはない。あのような女性の背後には、満足な教育も受けられないまま親に売られてしまった人も数多く存在した。日本政府に法的責任はなくとも、同情するから何度も謝罪し、お金を払ってきたと説明すべきである。

罪を認めた犯罪者

 筆者はこれまで一貫して「反論よりも立論が大事」と主張してきた。明確な立論は、それ自体が有効な反論になり得るのである。日本政府は「誠意をみせて許してもらおう」とするあまり、何度も謝罪したり金を払ったりしては「罪を認めた犯罪者」呼ばわりされる愚を犯している。察するに、かつて保守系知識人が米紙に出した意見広告が反発を買ったことがトラウマ(心的外傷)になっているのかもしれない。

 センセーショナルな物言いをする必要はまったくない。あくまでも淡々と1次資料に基づく立論を行うのだ。今年8月、筆者は米ジョージア州議会議員に資料を見せながら「慰安婦制度とは何か」を説明する機会を得た。2人ともひどく驚いた様子で、「日本政府は強制連行や性奴隷を否定する証拠を持ちながら謝罪しているのか?」と聞いてきたのが印象的だった。

 「抱き着き慰安婦」に立腹するのはよい。無理やり「独島エビ」を晩餐会メニューに含めた韓国政府に何を言っても無駄だろう。しかし、大切なことは、トランプ氏をはじめ、第三国のキーパーソンに誤解が生じないように「慰安婦制度とは何だったのか?」を明確な立論を持って説明することである。

 国の名誉を守るのに、反発を恐れてはいけない。謝ってばかりでは、犯罪者認定されてしまうのがオチである。「罪を認めるなら責任を取れ、もっと賠償しろ」と言われ続けるのが国際社会の常識だ。ゆめゆめトランプ氏に、あのオバマ前大統領のように「何が起きたのか、正確で明快な説明が必要だ」と言わせてしまってはならない。

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 【プロフィル】山岡鉄秀(やまおか・てつひで) オーストラリア・ジャパン・コミュニティー・ネットワーク(AJCN)代表。昭和40年、東京生まれ。中央大卒。2014年、豪州ストラスフィールド市において慰安婦像設置計画に遭遇し、現地日系人を率いて設置阻止に成功した。著書に『日本よ、もう謝るな!』(飛鳥新社)など。