気になる「第2民進」→「失望の党」?希望の党・玉木体制発足、執行部人事を読み解く

野党ウオッチ
両院議員総会を終え、記念撮影に臨む希望の党の玉木雄一郎代表(右から2人目)と、代表を辞任した小池百合子東京都知事(中央)ら=14日午後、東京・永田町の衆院第1議員会館(斎藤良雄撮影)

 希望の党の玉木雄一郎代表(48)率いる新執行部が14日、発足した。執行部の顔ぶれをみると、現実的な外交・安全保障政策の提言を唱える玉木氏の意志が込められている。ただ、同じ日の小池百合子東京都知事(65)による鮮やかともいえる“代表ほうり投げ”で、共同代表から代表に昇格した玉木新体制発足のニュースはかき消された。内紛の芽を摘むべく党内融和に腐心した苦労もうかがえる陣容だが、インパクトは弱い。現に政党支持率は低迷しており、「失望の党」からの脱却が課題となる。

 玉木氏の人事は無難だった。幹事長には、衆院当選8回と党内で最も当選回数が多い一人の古川元久・元国家戦略特区担当相(51)を充てた。古川氏は共同代表選で玉木氏陣営の選対本部長も務め、幹事長起用は論功行賞の趣もある。代表代行には大島敦前幹事長(60)が用いられた。

 当初、代表代行には大島氏のほか、細野豪志元環境相(46)の起用も検討されていた。これには小池氏側の意向があった。

 玉木氏は共同代表選出直後の10日夜、小池氏に執行部の骨格人事について相談した。小池氏は民進党出身議員の顔も名前もよく分からない。フムフムとうなずくだけだった。ただ、同席した小池氏の側近の党事務職員が「チャーターメンバーを外さないでほしい」と異論をはさんできた。

 「チャーターメンバー」とは、新党の結党を具体的に準備してきた細野氏や若狭勝前衆院議員(60)、松沢成文参院議員(59)、長島昭久元防衛副大臣(55)らを指す。

 ただ、細野氏は玉木氏による代表代行就任要請を断った。代表代行が事実上の名誉職であるからだとみられる。代表代行の代わりに細野氏たっての要望で憲法調査会会長に就いた。

 小池氏側近には、希望の党が「第2民進党化」する懸念があったようだが、玉木氏は長島氏の政調会長起用によって民進党合流組とチャーターメンバーとの融和を図った。もっとも長島氏も今年4月までは民進党に所属していたのだから、客観的に見れば「第2民進党」の印象はぬぐえない。

 長島氏は当選4回、48歳と若い玉木氏の後見人役を自任する。先の衆院選直後には早々に玉木氏に共同代表選への出馬を持ちかけた。政策面でも玉木氏を支える。長島氏が民進党の大野元裕参院議員(54)と月刊誌「中央公論」12月号(11月10日発売)で発表した「憲法9条改正試案」で打ち出した「9条に自衛権明記」の考えは、共同代表選期間中の玉木氏の持論にもなった。

 安全保障の論客である長島氏は安全保障調査会会長や幹事長での起用も検討されていた。ただ、長島氏の幹事長起用にはあからさまな党内分裂を引き起こすリスクがあった。

 共同代表選で玉木氏の対抗馬となった大串博志衆院議員(52)は共同代表選で現行の安全保障法制について「容認しない」、憲法9条改憲は「必要ない」と明言し、小池氏や長島氏の考えに真っ向から異論を唱えた。大串氏の共同代表選での得票数は玉木氏陣営が想定していた10票程度から上積みし、14票だった。大串氏陣営の離党リスクも考え、長島氏の幹事長起用は流れた。

 挙党態勢の構築のためには穏当に大串氏陣営を執行部に取り込むことも想定されたが、玉木氏の判断は違った。大串氏を支持した山井和則衆院議員(55)は認知症対策推進本部の本部長、小川淳也衆院議員(46)は社会保障制度調査会の会長とし、党の意思決定ラインから外した。大串氏は共同代表選後、玉木氏に「選挙期間中での考えは貫くが、協力できるところは協力したい」と伝えたが、要職起用は結果として見送られた。

 玉木執行部の特徴は、要職がすべて選挙区当選者で占められていることだ。希望の党の衆院議員51人のうち選挙区当選者は37%の19人に過ぎない。玉木氏には、2年後の参院選を見据え各議員の選挙基盤の強化を図る狙いがある。玉木氏に近い今井雅人衆院議員(55)も比例復活当選のため、国対委員長代理に落ち着いた。

 参院選に向けた態勢作りを担う選対委員長には古本伸一郎衆院議員(52)の起用が検討された。本人が固辞したため、大西健介衆院議員(46)が当初予定した選対委員長代理から昇格した。大西氏は玉木氏がその能力を絶賛した党規約検討委員会、共同代表選の選挙管理委員のいずれにも名を連ねている。

 大西氏は惜敗率97%ながら比例復活できずに落選した馬淵澄夫元国土交通相(57)の側近でもある。大西氏起用には民進党時代に選対委員長を務めた馬淵氏の力を借りる考えもあるようだ。

 希望の党にとって国会運営の焦点は、立憲民主党との野党第一党の座をめぐる争いになる。国会運営を取り仕切る国会対策委員長には泉健太氏(43)を起用した。続投が取り沙汰された笠浩史前国対委員長(52)は日本維新の会に近過ぎるなどの理由で見送られた。泉氏は民進党時代に衆院議院運営委員会の理事を務めており、国会運営で立憲民主党も含め他党に顔が利く。

 気がつけば、希望の党にまだ勢いがあったころに前面に出ていた細野氏や若狭氏、そして民進党の解党による希望の党への合流を画策して失敗した前原誠司前民進党代表(55)は幹部から消えた。主要役員では、参院議員団代表に就いた松沢氏以外は全員、民進党出身者で占められた。ただ、松沢氏も旧民主党出身者である。

 自民党系の中山成彬衆院議員(74)、恭子参院議員(77)の夫妻や、小池氏の「お友達」として比例近畿で優遇された井上一徳衆院議員(55)の名前もなく、少なくとも人事上は見事なまでに「民進党色」を引き継いでいる。ちなみに井上氏は第1次安倍政権で国家安全保障担当の首相補佐官だった小池氏に仕えた元防衛官僚だ。

 いずれにせよ、玉木氏による人事は事前に報じられることがなかった。玉木氏は情報管理にも成功したといえる。

 もっとも、その大きな理由には、世論の注目度が格段に下がっていたこともあるだろう。衆院選公示前から失速した希望の党だが、選挙後はさらに加速している。

 小池氏が希望の党の結党を表明したのは9月25日だった。その後「排除」発言などで一気に失速したわけだが、それでも産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が衆院選期間中の10月14、15両日に実施した合同世論調査で、比例代表の投票先で希望の党は15・0%で、自民党(32・9%)に次ぐ2位だった。立憲民主党(14・6%)をも上回っていた。

 同じ調査での政党支持率も自民党(34・5%)、立憲民主党(11・6%)に続いて3位の9・5%だった。

 それが玉木氏が共同代表に選出された直後の今月11、12両日の調査では3・9%に転落し、公明党(4・1%)にも抜かれた。世論調査の上では、もはや「希望」が「失望」に変わったと言われても仕方がないだろう。

 玉木執行部は、民進党との差別化を図る意味でも、半年以上かけても安倍晋三首相(63)の直接の関与が特定できなかった加計学園獣医学部新設の不毛な追及から足を洗い、外交・安全保障、社会保障で現実的な国会論戦に思う存分力を発揮すべきではないか。

 しかし、それも危うい。衆院選後初の本格論戦となった今月15日の衆院文部科学委員会で、希望の党を代表して質問に立った山井氏は相変わらず「安倍首相の友達だから認可されたという疑惑が払拭されていない」といった印象操作に励んだ。国民に希望をもってもらう政党になる道のりは険しいようだ。 (政治部 奥原慎平)