救助犬の「やる気」「発見した喜び」をAIが推定 東北大などがスーツ開発

びっくりサイエンス
犬のやる気が3段階でグラフ表示される装置のデモンストレーション=1日、東京都千代田区(原田成樹撮影)

 「本当にこの下に被災者がいるのか。信頼性はどのくらいか」。がれきなどに埋もれた被災者の位置を特定するには人よりはるかに嗅覚や聴覚に優れる救助犬の助けが欠かせないが、人と会話できないためにその確度が分からず、ときには、もどかしさが救助隊の士気にも影響する。活動中の救助犬の「やる気」を高い確度で知る技術の開発に東北大、麻布大などのチームが成功した。

 犬も人間と同じ生き物であり、ときによって集中度が途切れたり、疲れたりする。発見して本気でほえていると分かれば救助隊のやる気も増すし、集中力が低下していれば適度に休憩させたりすることも犬のために必要だ。

 開発を主導した大野和則・東北大准教授(ロボット工学)によると、一般に災害救助犬は約10分探査すれば次の犬と交代するようなルーチンで活動しているが、天候やがれきの状態なども変わるため、早く休ませてコンディションを回復させるなど適切な運用をすれば次の探査の信頼性が上がる。東日本大震災の救助では、無理をさせたがために優れた嗅覚を失った救助犬もいるという。

 同チームはこれまで、がれきなどの下の映像や音声、探査の軌跡などを遠隔で知るため救助犬に着せるサイバースーツを開発してきた。カメラやマイク、GPS(衛星利用測位システム)受信機、慣性センサーのほか、センサーのデータを記録・解析するコンピューターが搭載されている。今回、犬の体表に心電計測用の3つの電極が常に密着するように配置されたインナーウエアを開発。専門的な知識がなくても着せるだけで、活動中でもずれずに心電が計測できるように工夫され、データが無線でサーバーに送られる。

 心拍数は活動量によっても上昇するが、感情がやる気のある「ポジティブ」の状態になったときも自律神経系を介して上昇する。活動量による変動と感情による変動のゆらぎパターンは異なるため、人工知能(AI)の機械学習手法を使って感情を推測する。これにより、走行時でも高い精度で「やる気」のあるなしを判定できるようになった。

 東京都内で1日、救助犬の訓練を受けていないスタンダードプードル(雄、2歳)を使ったデモンストレーションが行われた。スーツ姿の男性やカメラに囲まれた中で歩かされると、スクリーンに表示された判定は明らかにネガティブとなったが、餌をやったりほめたりしたときはポジティブに変わった。

 大野准教授によると、救助活動も犬にとっては遊びの延長。実際に上級の災害犬になると餌でなく、ボールで遊んでやったり、声でほめたりすることがほうびとなるが、被害者を見つけたときは訓練によってそれが条件付けされているので、ものすごく喜ぶのだという。ポジティブになっているかどうかで本当に発見しているかが判定できると考えられ、一部の実験で仮説が実証されつつあるという。

 また、被災者を見つけたときだけでなく、被災者につながるような証拠物や匂いを拾ったときにポジティブ判定が出やすく、探査の途中でときどきポジティブな判定が出ている場合は集中できていると判断できる。逆に、暑くてやる気を失い、探査をしている振りをしているのも見破れると期待している。

 以前から開発してきたサイバースーツは来年から実際に提供する予定だが、犬の感情が分かる機能についても今後2年後めどに搭載したいとしている。また、一般のペットの飼い主でもこうした感情を知りたいニーズがあるため、それに応えたいとしている。

 この研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT=インパクト)のタフ・ロボティクス・チャレンジの一環で実施。被災者などを捜索するヘビ型ロボットやがれきを除去する建設ロボットなどと並び、人と犬の能力をロボティクス知能を融合することで引き上げるという観点で進められている。(科学部 原田成樹)