「政権交代が確実でない限り都知事は投げ出さない」保身、誤算、ボタンの掛け違い…希望の党の敗因を再検証

野党ウオッチ
初の両院議員懇談会であいさつを終え一礼する希望の党の小池百合子代表(奥前列中央)=10月25日午後、衆院第1議員会館(斎藤良雄撮影)

 衆院選は自民党が単独で過半数(233)を大きく上回る議席を獲得し、連立を組む公明党と合わせて定数の3分の2(310議席)を維持する与党の大勝に終わった。政権奪取を狙い235人もの候補を擁立した希望の党はわずか50議席にとどまる惨敗を喫し、政権どころか野党第一党にも届かなかった。一時は自公を脅かすほどの勢いを見せた希望はなぜ失速したのか。

小池氏の保身

 第一に、代表の小池百合子東京都知事(65)自身が衆院選に出馬しなかったことが挙げられる。首相指名候補不在の党内で待望論がくすぶる中、小池氏は公示の約1週間前に「(立候補は)百パーセントない」と断言。政権交代をうかがう政党としての希望への期待感は急速にしぼみ、党勢拡大への道は決定的に閉ざされた。

 与党側が最も恐れていたシナリオは、小池氏自らが衆院選に出馬して首相候補となり、希望を中心とした「非自民・非共産」勢力の結集と無党派層の取り込みを一気に進める-というものだった。ところが、側近らによると「政権交代が確実でない限り知事職は投げ出さない」が小池氏の一貫した本音だったという。

 こんな都合のいい話が有権者や希望の候補に受け入れられるはずがなかった。党首が、少なくとも都知事の地位は維持できる安全地帯に身を置いていたら、いくら声高に政権奪取を訴えても迫力に欠けるし、選挙戦に身を投じる候補者たちの士気も上がらない。

去就めぐる誤算

 小池氏の去就をめぐっては、誤算や関係者との思惑のずれもあった。

 そもそも小池氏は、表向きには代表就任時から「あくまでも都知事として、党の代表として戦いに臨んでいく」と自身の出馬に否定的な考えを示していた。それでも出馬の観測が広がったのは、都知事と国政政党の代表の「二足のわらじ」を履くことへの批判が高まる中、小池氏がそれを逆手に取って一転出馬するのではないかとの臆測が消えなかったからだ。

 小池氏には昨年7月の都知事選で、当時所属していた自民党の方針に反して立候補し、同党の推薦候補を大差で破って当選した経緯もある。その大胆不敵さ、勝負強さにしてやられた自民党は「小池氏のことだから最終的には勝負に打って出るのでは」と警戒し、衆院選が公示されるまでやきもきしていた。

 一方、希望内や、同党への合流を進めていた民進党には待望論が広がった。「公示直前に不出馬がはっきりしたら、ふくらんでいた期待がしぼんでしまう。そのまま選挙戦に入ればとても戦えない」。そう考えた側近の若狭勝前衆院議員(60)は10月1日のNHK番組で、党として政権奪取を狙う時期について「次の次(の衆院選)」と述べた。

 小池氏出馬への期待感をトーンダウンさせるのが目的だったが、この発言で希望は今回の衆院選を政権選択の選挙と位置づけていないとみなされ、政権奪取への本気度を疑問視されるようになる。小池氏は翌2日の産経新聞のインタビューで、若狭氏の発言を「あり得ない」と否定したが、近しいとされた両氏の間でも意思疎通ができないほど党内がゴタゴタしているとの印象を与えた。

ボタンの掛け違い

 「小池新党との合流は結果的にボタンの掛け違いもいくつかあって結果が伴わなかった。この世界は結果が全て。責任を痛切に感じている」

 希望への合流を進めた民進党の前原誠司前代表(55)は、10月27日の両院議員総会で深々と頭を下げた。

 前原氏は「首相指名選挙で小池に一本化すれば政権交代も夢ではない」と考え、小池氏の衆院選出馬を前提に合流へと一気に舵を切った。だが、小池氏は出馬せず、民進党は希望、立憲民主党、無所属議員の3つに分裂。漁夫の利を得た自公に大勝を許した。一世一代の大勝負で詰めが甘かったと言わざるを得ない。

 前原氏は公示の5日前まで「小池氏は最終的に出馬する」と信じていた。小池氏に出馬を要請したのも、2人がひそかに合流構想を温めていた9月下旬に仲介人を通じて「都知事を辞任する選択肢もある」との意向が伝わってきていたからで、信じる根拠がないわけではなかった。

 合流も、共産党との共闘に固執する左派5~6人を除く全員を希望に移籍させるか、共産党を除く野党統一候補として無所属で出馬させるつもりだった。小池氏の「排除」発言で民進党が分裂し、立憲民主党が躍進したことは、前原氏にとり目算外れだったのだ。

 保身、誤算、ボタンの掛け違い…。さまざまな思惑が交錯した結果、野党が目指した「安倍1強政治」の打破は今回も夢と消えた。再編論もあるが、野党第一党の立民は「野党再編を考えた瞬間に失速する」(枝野幸男代表)と消極的で、二大政党制の実現は遠のくばかりだ。 (政治部 豊田真由美)