選挙とメディア 公平無視した罪深きワイドショー番組 安倍宏行

iRONNA発
パリ出張から帰国し、記者に囲まれる小池百合子東京都知事=25日午前、成田空港

 3年ぶりの衆院選は自民・公明与党の圧勝劇で終わった。国民は安定政権の継続を支持したわけだが、それにしても期間中にこれほど風向きがころころ変わった選挙も珍しい。その主たる原因は既存メディアの偏向報道にある。これでいいのか。(iRONNA)

 「テレポリティクス」という言葉が、かつてあった。テレビを意識した政治、という定義だが、最近とんと聞かなくなった。とはいえ、政治家がテレビを意識していることに変わりはない。

 そして、インターネット選挙が解禁となってから既に4年がたった。最も変わった点といえば、政党や政治家のメディア戦略が進化したことである。国会討論はテレビ中継を意識したものとなり、大きなフリップを使って視聴者が一目で分かるように各議員が工夫するようになった。

 政党がインターネットを使いこなすようになってきたのも顕著だ。自民党の動画チャンネル「Cafe Sta」はその典型だ。生放送もあれば録画で見逃し視聴もできる。有権者は、より多くのメディアで政治情報に触れることができるようになった。

 一方で、テレビの役割は全く進化していない。いや、むしろポピュリズム(衆愚政治)を助長しているとしか思えない。とりわけ、朝や昼過ぎのワイドショーには大きな問題がある。政治に多くの時間を割くこと自体は問題ない。しかし、それはあくまで「公平公正」に扱っている限りにおいて、である。

 特に、一部の局で「モリカケ問題」にほとんどの時間を割いたことに違和感を抱いた視聴者も多かろう。問題の本質が何なのか、今でも分からない人は多いのではないか。「オトモダチ」への優遇が悪いといっても、世の中そんなことはごまんとある。やはり法的にどのような瑕疵(かし)があるのか、それを明確にするのがメディアの役割だろう。

ポリシーなきテレビ

 当事者の言うことを断片的に垂れ流すだけでは視聴者をミスリードするだけでなく、政局すら左右しかねない。本来テレビは慎重の上にも慎重を期すべきだろう。キャラが立つ人物が現れると出しまくり、潮目が変わると一斉に手を引くのがテレビの常套(じょうとう)手段だ。

 小池百合子東京都知事についての報道も同じである。都知事選、千代田区長選、都議選と、「小池旋風」が吹いているときはそれほどでもなかったが、希望の党を立ち上げ、民進党の前原誠司代表と手を組んでから風向きがガラッと変わった。小池都政1年の検証はそっちのけで小池批判に舵(かじ)を切った感がある。そこにはなんのポリシーもない。

 北朝鮮問題もしかりだ。最大の脅威というなら、日本の安全保障はどうすればいいのか、拉致問題をどう進展させるべきなのか、政治家に問う報道が必要だろう。一部政党の消費税先送りや原発ゼロといったポピュリズム政策をちゃんと検証しているといえるだろうか。自民党の政策でも、消費税の使途変更で国の借金返済は遅れることが明白だ。政策ごとに各党の公約をちゃんと比較・評価して視聴者に届ける努力をしているだろうか。

必要なのは品質管理

 そうした中、日本でも偽ニュースを検証する、ファクトチェックの動きがようやく出てきた。国内初の本格的な検証団体「ファクトチェック・イニシアティブ」が立ち上がり、ネットメディアだけでなく、既存メディアもそれぞれの報道内容や政治家の発言などを検証し始めた。これは健全なことであり、メディア同士のチェックもこれからますます進んでいくだろう。

 もはやメディアは「第4の権力」などといってあぐらをかいている場合ではない。ネット上で誰でもニュースを検証でき、その結果をSNSで拡散することが容易になった。ファクトチェックはますます進むだろう。

 今後、テレビはワイドショーやドラマ、バラエティーなども含め、発信する情報全ての品質管理を厳しくしていかねばならない。さもなくば、テレビだけ置いてけぼりを食らうのは間違いない。

 iRONNAは、産経新聞と複数の出版社が提携し、雑誌記事や評論家らの論考、著名ブロガーの記事などを集めた本格派オピニオンサイトです。各媒体の名物編集長らが参加し、タブーを恐れない鋭い視点の特集テーマを日替わりで掲載。ぜひ、「いろんな」で検索してください。

【プロフィル】安倍宏行(あべ・ひろゆき) ジャーナリスト、ウェブメディア「Japan In-depth」編集長。昭和30年、東京都生まれ。慶応大卒。平成4年にフジテレビ入社、総理官邸や経済・政治担当キャップ、ニューヨーク支局長、報道番組「ニュースジャパン」キャスターなどを経て独立。iRONNAの特別編集長も務める。