いよいよ枝野時代到来? 盟友・前原誠司氏と分かれた明暗

野党ウオッチ
選挙報道を見て笑顔の立憲民主党・枝野幸男代表=22日午後、東京都港区(古厩正樹撮影)

 22日投開票の衆院選は、9月に「ポスト蓮舫」レースを争った初当選同期の2人の明暗がくっきりと分かれた。立憲民主党を1人で立ち上げた枝野幸男代表(53)は、遊説に出向いた各地で“枝野旋風”を巻き起こし、公示前勢力(16議席)から3倍以上の55議席に躍進し、野党第一党の党首に登り詰めた。一方、民進党の前原誠司代表(55)は、希望の党への合流に突き進んだ結果、民進党が瓦解し、二大政党制の夢は破れた。

 「終盤になってより大きくなってきたと実感した」

 枝野氏は投開票日の22日夜、東京都内のホテルで記者会見し、全国各地で「枝野コール」が巻き起こった現象についてこう感想を述べた。

 枝野氏は選挙戦を通じて安倍晋三政権が行っている政治は民主主義ではないと糾弾し、「まっとうな政治を取り戻そう」と繰り返し訴えた。党公認候補のほか、無所属で出馬した民進党系候補も精力的に応援し、演説後には、枝野氏に握手を求める人々が殺到するほどの人気ぶりとなった。

 枝野人気は、立民のツイッターの公式アカウントのフォロワー数にも現れた。

 10月4日に開設したアカウントは、2日目で自民党のフォロワー数13万を抜き、23日時点で18万8千まで増加した。希望の公式アカウントのフォロワー数が1万3千程度になっていることを踏まえれば、その人気ぶりは明らかだ。

 枝野氏も記者会見で「フォロワーの皆さんが自らの判断とやり方で、さらにうまく活用していただくという良い循環が生まれた」と語り、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を活用した支持拡大の手応えを口にした。

 安全保障法制や憲法改正をめぐる「踏み絵」を拒否したことで、“男気”を称賛する声も上がった。

 タカ派で知られる石原慎太郎元東京都知事(85)は自身のツイッターで「今度の選挙では候補者達の卑しい人格が透けて見える。戦の前に敵前逃亡、相手への逃げ込み、裏切り。まるで関ケ原の合戦の時のようだ。その中で節を通した枝野は本物の男に見える」と投稿した。

 10月2日の結党時は枝野氏1人だったが、その後、行き場を失った元民進党の仲間などが加わり、公示日には選挙区と比例代表を合わせて78人を擁立するまでに成長。ふたを開けてみれば、公示前勢力の3倍以上の議席を獲得する大躍進を果たした。

 ただ、公明党の山口那津男代表(65)が「一見民主党」と揶揄するように、旧民主党時代の懐かしい面々が勢ぞろいする。当時の菅直人首相(立憲民主党最高顧問)が率いた政権を振り返れば、枝野官房長官(代表)、福山哲郎官房副長官(幹事長)、辻元清美首相補佐官(政調会長)、長妻昭厚生労働相(代表代行)といった具合だ。枝野氏は「右でも左でもなく前へ」と主張するが、左派の集まりであることは間違いない。今後、無所属で出馬した民進党元代表の岡田克也氏(64)らとの連携を模索しており、さらに勢力を拡大しそうだ。

 前原氏は対照的だ。

 「野党が分裂して政権選択の選挙になり得なかった大きな責任の一端は私にある」

 衆院選の大勢が判明した23日未明、前原氏は党本部でこう語り、同党の希望の党への合流構想について見直す考えを示した。進退については「今後の党の方向性を決めた段階で責任を取る」と述べ、辞任する意向を表明した。

 それもそのはずだ。前原氏は安倍政権に対抗できる二大政党制の実現に向け、9月28日の民進党の両院議員総会で「全員合流」を条件に希望との交渉を取り付けた。ところが、すぐさま希望の党代表の小池百合子東京都知事(65)に「排除の論理」を突きつけられると、支持母体の連合が反発。一つにまとめるどころか、党が希望、立民、無所属に3分裂した揚げ句、与党大勝に貢献してしまったのだから。

 無所属で出馬した元民進党前職は「1対1の構図に持ち込むと大見えを切っておきながら、ここまで党を分断させた責任は万死に値する」と怒りをあらわにした。

 党が事実上解体したことを「すべて想定内」と語ったことも火に油を注いだ。

 前原氏は今回、無所属で出馬した地元の京都2区で当選こそしたが、衆院解散後に初めて地元で街頭演説した際には「帰れ」「ウソつき」などとヤジを浴びる始末で、踏んだり蹴ったりだ。

 だが、中には前原氏を評価する声もある。

 橋下徹前大阪市長(48)は自身のツイッターで「小池さんと前原さんにとっては敗北だろうが、民進党を2つのグループに整理し、政党を行ったり来たりするチョロネズミが駆除され、今後の国会においては憲法改正論議や安全保障論議が現実的なものになるという結果を生み出したことは日本にとって良かった。両名の大功績」と述べた。

 もともと右派と左派が混在していた民進党が分裂したことで、構図を分かりやすくしたという成果はあった。だが、前原氏の支持者をはじめ同僚からの信頼を失った代償はあまりにも大きい。 (政治部 広池慶一)