10・22総選挙 「現実を直視せよ」最大の争点はこれだ 岩田温氏

iRONNA発
衆議院が解散され、万歳する議員と安倍晋三首相(奥中央)=9月28日(斎藤良雄撮影)

 小池新党の登場で政局が目まぐるしく動き出した。安倍晋三首相の電撃解散に始まった「10・22総選挙」の行方に注目が集まるも、その争点はすっかりかすむ。いま国民に信を問うべき本当の争点は何か。(iRONNA)

 今回の総選挙の最大の争点は何か。それは朝日新聞が9月26日付社説で批判した「憲法と立憲主義をないがしろにする首相の政治姿勢」などという、抽象的な問題ではない。現実を直視するか否か、それこそが最大の争点である。

 戦後わが国の平和と繁栄を守ってきたのは、自衛隊と日米同盟の存在である。自衛隊、日米同盟なしに戦後日本の繁栄はありえなかった。しかし、こうした現実を直視せずに、戦後日本の平和を「憲法9条」のおかげであると信じ込もうとする人々がいまだに存在している。彼らは日本国憲法を「平和憲法」と呼び、「平和憲法」を守ることが日本の平和を守ることにつながると信じ込んでいる。

 日本国憲法では、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とうたう。だが、これは事実に反する言葉だと言わざるを得ない。日本国民の誰が核武装への道をひた走る北朝鮮の「公正と信義」に「信頼」しているのだろうか。

 「日本列島の4つの島は、チュチェ思想の核爆弾によって海に沈むべきだ。もはや日本は私たちの近くに存在する必要はない」などと公言する国家にわが国の平和を委ねるわけにはいかない。実際に「われらの安全と生存を保持」しているのは、自衛隊の方々が日夜平和のために汗を流しているからであり、堅牢(けんろう)な日米同盟が存在しているからだ。

政治は悪さ加減の選択

 安倍総理は、自民党の公約に憲法9条への「自衛隊の明記」を盛り込むことを公言した。保守派の中でも批判が多いことを私も承知しているし、本来、憲法9条の第2項を削除すべきであるとも認識している。

 だが、政治とは、あくまで漸進的な営みだ。自分たちの望むすべてが実現できなければ、直ちに全面否定するという、教条主義的姿勢は政治には似つかわしくない。現実にわが国を守っている自衛隊を憲法に明記するというのは、憲法が自衛隊について全く触れていない現状よりはいい。「政治は悪さ加減の選択である」と喝破したのは福沢諭吉だが、その通りであろう。国家を守る自衛隊を憲法に位置づけるのは、少なくとも自衛隊の存在が閑却されている現行憲法よりはいいだろう。

 自衛隊の存在を憲法に明記せよという自民党に対し、民進党は「9条に自衛隊を明記することは認められない」と対決姿勢を明らかにした。不思議でならない姿勢だ。なぜ、自衛隊を憲法上に明記することに反対するのか、その論拠を明らかにすべきであろう。まさか、彼らも自衛隊の存在を違憲だとまでは主張しないであろう。

 それならば、なぜ自衛隊を憲法に明記することに反対するのか。いつまでも「平和憲法」を維持せよとの主張を繰り返すだけでは、民進党はかつての社会党のように消滅すると思っていたら事実上解党してしまった。当然の流れだろう。

見識示す「希望の党」

 小池百合子東京都知事が立ち上げた「希望の党」に国民が一定の期待を寄せているのは、この政党が安全保障の問題で見識を示しているからだ。彼らは共産党とは明確に一線を画している。自民党とは理念を異にする政党ではあるが、共産党とも異なる政党である。民進党が愚か極まりなかったのは、自衛隊を「違憲」の存在だと位置づけている共産党と共闘し、「非自民反共産党」という幅広い中道層の支持を得られなかった点にある。

 自衛隊と日米安保によって日本の平和が維持されているという現実を見つめ、平和のために具体的な行動を起こすのか。それとも「平和憲法」に拝跪(はいき)し、空想的観念的平和主義という感傷に浸っているのか。それが選挙の最大の争点だろう。

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【プロフィル】岩田温(いわた・あつし) 政治学者。大和大政治経済学部専任講師。昭和58年生まれ。早稲田大大学院政治学研究科修了。専攻は政治哲学。主な著書に『逆説の政治哲学』(ベスト新書)、『平和の敵』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)など。