「インスタ映え」がGDP押し上げの立役者は本当か? 日本経済との関係を探ってみた

 
今年、注目を集めたナイトプール。としまえんは、30年ぶりの夜間営業だったが大いににぎわった。これもインスタ映え効果?(としまえん提供)

 SNS(インターネットの共有サービス)が日本経済を押し上げているとインターネットやテレビで話題になっている。牽引(けんいん)役とされるのは写真や動画にコメントを添えて投稿し、共有するサービス「インスタグラム」(インスタ)による「インスタ映え」だが、さて、この話本当なのか?

個人消費好調

 話題になったのは、内閣府が8月に2017年4~6月の実質GDP(国内総生産)の速報値を公表してから。6四半期連続のプラス成長で、内閣府はGDPの約6割を占める個人消費が好調だったからだとした。

 個人消費の好調に貢献したのがインスタをはじめとするSNSによって伸びた外食だ。そんな報道が出たこともあり、インスタがGDPを押し上げたと話題になったわけだ。

 「いや、今回GDPを押し上げたのは、やはり自動車やテレビ等家電の販売でしょう」と話すのは、IT企業、楽天(本社・東京都世田谷区)のECカンパニー事業戦略チームアシスタントマネージャーの清水淳さんだ。

 「トレンドハンター」の肩書ももつ清水さんは、同社のインターネット通販「楽天市場」の消費データの解析も担当している。

 清水さんは続ける。

 「今回の押し上げ要因になったかはともかく、インスタなどのSNSが消費者の購買意識を変えていることは確か。とりわけ(1)旅行(2)外食(3)ファッション-への影響は大きい」

「レインボー」人気

 消費者庁の調査が清水さんの言葉を裏付ける。7月に発表された「平成28年度消費生活に関する意識調査」(3月に15歳以上の男女3千人を対象にインターネット調査)によれば、SNS利用者は49・9%。うち写真や動画を投稿している人は50・7%。高校生以上の4人に1人が、画像を投稿していることになる。

 そして、投稿のためにとった行動の上位3つは次の通り(複数回答)。

 ・旅行(日帰りを含む)=45・6%

 ・外食=38・7%

 ・友達と集まる=26・9%。

 インスタなどのSNSに投稿する写真を撮影するため、消費行動を起こしているのだ。

インスタ映え

 清水さんによると、「楽天市場」で今年8月、「レインボー」という単語が検索された数が昨年8月の1・5倍に増えたという。 

 「インスタに投稿した際に映える“カラフルな商品”が探されたのでは」

 インスタで映える。すなわち“インスタ映え”する商品が注目されているのだ。

 楽天市場は浜辺やプールサイドで使う円形のタオル「ラウンドビーチタオル」を扱っているが、15年はほとんど売れなかった。が、著名人がこのタオルの写真をインスタに投稿。注目され、16年の販売数は前年比60倍以上と爆発的に増えた。今年も引き続き好調だという。

商品・サービス続々

 インスタ映えを狙った新商品・サービスは、続々と誕生している。

 この夏、インスタ映えの象徴としてテレビやネットで大いに話題になった「ナイトプール」。ホテルなどによるプールの夜間営業で、華やかな照明や写真映えする小道具の貸し出しもあり、若い女性たちが水泳そっちのけで、水着姿をスマートフォンなどで撮影し、インスタに投稿した。

 遊園地の「としまえん」(東京都練馬区)も30年ぶりに夜間営業を試みたが、期間(7月28日~8月27日)中、想定の7千500人を上回る9千人が殺到した。

 大手旅行会社「エイチ・アイ・エス」(東京都新宿区)は旅行者が撮影した写真を集めた「タビジョ」をインスタグラムで展開している。昨春から始め、画像の延べ投稿数はすでに33万点にのぼるという。

 タビジョの担当で、同社コーポレートコミュニケーションチームのチームリーダー、丹下陽一郎さんは「投稿される写真は旅行会社と違った視点が新鮮」。投稿者の中から「タビジョレポーター」を選び、韓国のカフェめぐりなど、共同で旅行商品の開発に着手している。

 8月にオープンしたばかりの東京・原宿のソフトクリーム店「coisof(コイソフ)」のソフトクリームの写真は、1600点以上がインスタに投稿された。

 香川県の伝統菓子で直径1センチの丸いあられ「おいり」をトッピング。ピンクや白、淡い青などパステルカラーなので「かわいくて写真映えする」と10~20代の女性に人気に。「中高生を相手にはやらせるため、インスタ映えを意識した」と同店の広報担当者は話す。

 さらに、ピンクを基調とした店内に、色とりどりのカラーボールを敷き詰めた撮影エリアを設けたのもアイデアだ。

さらなるビジネス展開も

 「インスタ映えする商品の開発は、アイデアで乗り切れることも多いので、従来の商品開発、広告宣伝より費用を抑えられる。企業が取り組みやすい理由です」

 企業とインスタ映えの関係をこう分析するのは、明治安田生命保険のエコノミスト、尾家小春さん。

 インスタ映えビジネスは、さらに広がりそうだ。

 マーケティング会社「ジャパン・カレント」(東京都千代田区)は7月、インスタに投稿された画像を人工知能(AI)で解析し、消費動向やトレンドを分析するビッグデータビジネスを始めた。

 同社マーケティングディレクターの中大路智崇さんは「写真からは、投稿者すら意識していない本音が見える」と話す。

 たとえば、料理の写真を解析すると、食べ合わせの人気傾向が見えてくる。コメント欄まで解析すれば、写真に込められた感情も分かるという。

 この結果から人気の高い食材を抽出し、生徒を集められそうなクラスの新設を検討する料理教室があるという。

 また、楽天の清水さんは「次は動画投稿が主役になるでしょう」と予想する。(文化部 油原聡子)