臆面もなく共産党と手を組む自民党のあきれた二枚舌 堺市長選がとんでもないことになっているゾ!

松本学の野党ウオッチ

 「ブーメラン」といえば民進党のお家芸だとばかり思っていたが、自民党だって負けてはいない。民進、共産など野党4党の選挙協力を「野合だ」と繰り返し批判してきた自民党が、人口83万人の政令市長選で臆面もなく共産党と手を組もうというのだから、その二枚舌には恐れ入るばかりだ。

 「政権打倒と言っている共産党と自民党がタッグを組んでいる。民進党、社民党も乗った。政治家の身分を変えることに大反対の『野合談合チーム』だ」

 日本維新の会の松井一郎代表(53)は9月5日、大阪市内のホテルで開いた維新傘下の地域政党「大阪維新の会」のパーティーでこう怒りをぶちまけた。

 松井氏が矛先を向けたのは、任期満了に伴う堺市長選(9月10日告示、24日投開票)の構図である。この選挙は、3選を目指す現職の竹山修身(おさみ)氏(67)と、大阪維新の会新人の元大阪府議、永藤英機氏(41)の一騎打ちとなる見通しだ。竹山氏に対しては、自民、民進、日本のこころの各党と社民党大阪府連が推薦し、共産党系市民団体が支援に回っている。公明党は自主投票とする方針を決めた。

 共産党は表立って推薦こそしていないものの、関連組織をフル稼働させて竹山氏当選に向けた戦いを展開している。9月4日には小池晃書記局長(57)が堺市に乗り込み、集会で「安倍暴走政治の応援団である維新に厳しい審判を下そう」と気炎を上げた。

 「応援団」どころか「張本人」である自民党と手を組んでおいて何を言っているんだ、というツッコミはさておき、この冗談のような「自共共闘」は、近年の大阪の選挙や住民投票ではお決まりの図式になりつつある。維新の地盤が強い大阪では、各党が「維新憎し」の一点で手を携えるケースが珍しくないのだ。

 維新の党是である「大阪都構想」の是非が問われた平成27年5月の大阪市の住民投票の際は、自民党の柳本卓治参院議員(72)が共産党の山下芳生副委員長(57)=当時は党書記局長=らと一緒に同党の街宣車の上で演説し、山下氏らを「兄弟」とまで持ち上げた。あまりの節操のなさに、菅義偉官房長官(68)が「全く理解できない」と苦言を呈したほどだ。

 同年11月の府知事・市長ダブル選では、自民党推薦候補が民主党(当時)と共産党の支援を受け、松井氏らと争った。普段は厳しく政府を批判している市民団体なども同調し、自民党推薦候補の街頭演説会で「アベ政治を許さない」のステッカーを掲げた聴衆が拍手を送るというギャグのよう光景すら見られた。

 もちろん、維新が掲げる施策への批判はあって当然だ。地域の事情に沿って国政とは異なる枠組みで政党が協力することも理解できる。

 竹山氏は「(大阪府と大阪市で制度案の議論が進む)都構想が実現すれば、その影響はすぐに堺市に及ぶ」と主張し、維新と対決することの意義を強調する。自民党の二階俊博幹事長(78)は、共産党を含む野党との連携について「ケース・バイ・ケースで地元の意向に沿うような形でやった」と説明している。

 とはいえ、相反する理念を掲げる政党が「反維新」だけを共通項に連携する姿は、憲法やエネルギー政策に関する隔たりを棚上げにしたまま「アベ政治を許さない」の一点で結束する野党4党と全く同じに映る。

 前述した府知事・市長ダブル選の際に実施した産経新聞社の出口調査によると、自民党推薦候補に投票した同党支持者の割合は知事選で50・9%、市長選で64・8%にとどまった。なりふり構わぬ共闘に対する忌避感の表れにほかならない。

 「民進党は共産党と候補者を統一して戦っている。理念も政策も違うのに、おかしい。典型的な野合だ」

 昨年の参院選での安倍晋三首相(62)の訴えが、ブーメランとなって自民党に突き刺さっている。 (政治部 松本学)

 堺市 古くから商都として知られた大阪を代表する都市。室町時代以降は日明貿易、南蛮貿易の拠点として栄え、外国の宣教師は「東洋のベニス」と呼んだ。中世は鉄砲、刃物生産で有名だったが、近代以降は金属や造船、化学などの重工業都市となった。人口は約83万人で、山梨県や佐賀県を上回る。平成18年に政令指定都市に移行した。市内には仁徳天皇陵などの古墳が多数あり、「百舌鳥古墳群」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界文化遺産への登録を目指している。