「山尾幹事長」断念に離党予備軍…出だしでつまずく前原民進 幹部も再編立場バラバラ

野党ウオッチ
民進党の前原誠司代表(中央)は枝野幸男代表代行(左)との政界再編のスタンスの違いを乗り越えられるか=5日午後、東京・永田町の民進党本部(斎藤良雄撮影)

 民進党が5日、新執行部を発足させた。前原誠司代表(55)は、幹事長に内定していた山尾志桜里氏(43)の起用を土壇場で断念し、さっそく多難の船出となった。しかも断念の理由について「総合的な判断だ」と言葉を濁して説明を回避し、「柔軟性を持った『ニュー前原』だ」と開き直った。

 なんとも格好のつかない波乱のスタートとなった新体制だが、前原氏には、より大きな難関が待ち構えている。民進党を核とした政界再編に意欲を示す前原氏と新執行部のメンバーの再編へのスタンスに温度差があるからだ。しかも小池百合子東京都知事(65)に近い若狭勝衆院議員(60)らが国政新党結成に動く中、党内に「離党予備軍」を抱えており、難しい党運営は避けられそうもない。

 「自民党しか選ぶものがない、あるいはまだ形の分からない何かに対する期待が集まっている。こんな危うい政治状況は、われわれの力で変えていかなくてはならない」

 1日午後、前原氏は代表選の投開票を行った臨時党大会の壇上で、新代表としての意気込みをこう語った。この言葉には、自民党の「1強多弱」が続く現状への危機感と、年内の新党結成を目指して若狭氏が立ち上げた政治団体「日本ファーストの会」への警戒感がにじむ。

 前原氏はかねて「民進党の名前にはこだわらない」と発言するなど、政界再編論者として知られている。ただし念頭にあるのは、民進党を中心とした非自民勢力の結集だ。新代表として初めて臨んだ1日の記者会見でも「民進党の理念・政策に共鳴してくださるところであれば協力するのは当然だ」と述べ、あくまでも民進党主導を強調した。

 しかし、5日に発足した新執行部には、前原氏とは異なる考えを示してきたメンバーもいる。政権交代可能な新党をつくるとして民進党を離党した細野豪志元環境相(46)と新執行部メンバーの距離感を例に比較してみよう。

 前原氏は代表選出馬を表明した8月7日の記者会見で、すでに離党表明していた細野氏について「心からかわいいと思い、能力の高い素晴らしい政治家だと思って敬愛している。その気持ちに何ら変わるところはない」と持ち上げた。連携についても「細野さんとはまた協力できるのではないかと期待を持っている」と意欲を示した。

 そして執行部人事では、細野氏が平成26年に立ち上げた党内派閥「自誓会」所属の階猛衆院議員(50)を政調会長に起用した。代表選で前原氏を支持した自誓会に配慮するとともに、細野氏との将来的な連携に含みを持たせる布陣を敷いたと言える。

 一方、代表選で前原氏との一騎打ちに敗れ、代表代行として執行部入りした枝野幸男元官房長官(53)は、細野氏との連携に否定的だ。日本記者クラブが8月22日に開いた代表選候補の公開討論会で、枝野氏は「(離党者の選挙区に)対抗馬を立て、けじめをしっかりつけていかないと党はまとまっていけない」と語り、細野氏ら離党者への敵意をむき出しにした。

 国対委員長に就任した松野頼久元官房副長官(56)は日本維新の会在籍当時から一緒に勉強会を開催するなど、細野氏と親密な関係にある。その松野氏は自由党の小沢一郎代表(75)とも近い。旧民主党政権時に党を割った小沢氏への忌避感は現在の民進党内でも根強いが、松野氏は連携に前のめりだ。産経新聞の7月のインタビューで、野党再編を唱える小沢氏の「オリーブの木」構想に関し「個人的な意見を言えば、社民党も自由党も一つになっちゃうことだ。民主主義は数。それは割り切らなきゃ」と肯定的な考えを示している。

 山尾氏の起用断念で重責が回ってきた大島敦幹事長(60)は代表選で前原氏の選対本部長を務めた。前原氏を徹底的に支えるだろうが、新執行部内で再編への見解を統一することさえ苦労することになるだろう。

 民進党が代表選や人事で混乱する中、若狭氏や細野氏らの新党構想は着実に進んでいる。この動きに民進党内は浮足立っている。代表選では国会議員から8票もの無効票が出た。「離党予備軍」とみられ、依然「離党ドミノ」の危機を抱える内情を改めて浮き彫りにした。前原氏の党運営次第では、7月の東京都議選前後に起きた「離党ドミノ」が再び訪れる可能性がある。

 前原氏は1日のBSジャパン番組で、8票の無効票について「心配だなという思いが先に立った。『いろんな思いを持つ議員がいることを受け止めて党運営に当たれ』というサゼスチョン(示唆)だ」と率直に語った。

 いずれにせよ、前原氏が求心力を高めて党を結束させないことには何事も前に進まない。前原氏に再編主導を期待する議員は「民進党の支持率が上がれば離党する人はいない。若狭氏らもこちらと話をせざるを得なくなる。逆に上がらなければ、話をするだけの価値はない」と強調する。

 ちなみに、共同通信社が代表選直後の2、3両日に実施した全国電話世論調査によると、民進党の支持率は前回8月調査と比べ0・2ポイント増の7・5%、毎日新聞が同じ日程で行った全国世論調査は5%だった。毎日は8月調査までの固定電話に加え携帯電話も対象としたため、単純に比較できないとのことだが、8月の民進党支持率は7%だった。 (政治部 豊田真由美)