菅直人元首相が怪気炎「原発ゼロ派と維持派に分党を」 混乱の中での呼びかけに民進党は黙殺…

野党ウオッチ
平成28年7月23日、東京都知事選に立候補した鳥越俊太郎氏の応援演説後、聴衆と握手する民進党の菅直人元首相=東京都立川市

 民進党の菅直人元首相(70)が、7月の東京都議選惨敗、蓮舫代表(49)の辞任表明で混乱する党内にあって「原子力発電ゼロ」を旗印にすべきだとの主張をブログを通じて繰り返している。原発ゼロ派と維持派による分党論もぶち上げたが、元首相の呼びかけは黙殺され、菅氏に近い議員も「党代表選の最中、極端なことは発信しない方がいい」とつれない。菅氏の原発ゼロにかける思いは独り相撲の様相を呈している。

 「原発ゼロを明確する代表を選び、次期国政選挙で最大の争点とするチャンスだ。原子力ムラと真正面から立ち向かい、原発容認派の票なぞあてにせず、その姿勢を国民に示す」

 菅氏は党代表選告示2日前の今月19日、自身のブログにこう書き込んだ。

 原発ゼロを訴える菅氏の代表選にかける思いは熱い。菅氏は首相当時の平成23年3月11日、東京電力福島第一原発事故に直面し、原発施策を推進してきたそれまでの立場を一転させ、反対派の急先鋒に転向した。ただ、菅氏の思いをよそに党内で原発ゼロ施策は思うように進まない。蓮舫執行部が今年3月の党大会に合わせて目指した「2030年代の原発ゼロ」の年限前倒しは党最大の支持組織である連合への根回し不足から、反発を招く結果となり見送られた。

 だからこそ、菅氏は党内の原発推進派議員について、原発の利益集団である「原子力ムラ」と揶揄してきた。

 そうした中、民進党は7月の都議選で、前身の民主党時代を含め平成10年の結党以来最低の5議席に終わり、党執行部の責任を問う声が高まった。菅氏はこの混乱を党の施策に「原発ゼロ」を売り込むチャンスが訪れたととらえたようだ。

 菅氏はブログで「脱原発を明確にして政党の再建をすべき」「脱原発など党の政治姿勢が不鮮明なことが(支持率の上がらない)大きな原因だ」と立て続けに発信し、都議選惨敗からの党勢立て直しは「脱原発」を明確にすべきだと訴えた。仮に「2030年原発ゼロ」を公約に掲げられなかった場合には、「脱原発党(=緑の党)」結党の必要性も訴え、「原発関連業界の労働組合と妥協して原発を実質的に維持する政策を認めるのなら、原発ゼロ派と原発維持派に分党すべきだ」(7月23日付)とも呼びかけた。

 菅氏の分党構想は多くの議員が知ることになった。ところが、首相経験者のアピールにもかかわらず党内で反響は得られていない。

 菅氏と距離を置く中堅議員は「離党予備軍を抱えている中で、党代表経験者が軽々に発信する言葉ではない」と批判し、別の党関係者は「正直に言えば、菅氏は終わった人。小池百合子都知事ならついていくが、菅氏が分党してもなびく人はいない」と手厳しい。菅氏の主張は「無視」を飛び越え、「迷惑」にすらなっているようだ。

 7月28日に蓮舫代表が辞意を表明し、党内は代表選モードへ突入した。前原誠司元外相(55)が代表になれば党内でリベラル系の議員の居場所がなくなるとして、2030年原発ゼロを訴える原発事故時の「部下」だった枝野幸男元官房長官(53)の支持にまわった。枝野氏当選のために連日、電話攻勢に出ており、枝野陣営関係者は「首相経験者なのに下働きもいとわない。ある意味尊敬する」と皮肉を込めて語る。

 ただ、求心力の低下か、自らが率いる菅グループ(約5人)はまとめられず、自主投票となった。原発ゼロをめぐり盟友関係にある阿部知子衆院議員(69)も「政治家の思想信条は尊敬に値する」と述べた上で「原発ゼロは進めるべきとの考えは自分も持っているが、菅氏のやり方は代表選で分岐を作ってしまい、自民党安倍政権を利することになるのでは」と疑問視する。

 枝野氏は国会議員票をはじめ前原氏に水をあけられている。仮に前原氏が代表に就任した場合、菅氏は再び分党構想を打ち出すのか。

 菅氏は産経新聞の取材に「代表選で微妙な時期だから枝野氏支持以外のことは取材では答えない」と述べるにとどまった。しかし、26日付のブログには「従来的な政治の枠組みを超えたテーマ型の政治的結集が必要ではなかろうか」と書き込み、野党再編の中軸に反原発という環境重視のテーマ型の政党を結党する必要性を説いている。

 元首相の叫びは今後、党内で共感を得られるのか、それとも自ら「原発ゼロ」のための分党を実践するのか。いろいろな意味で元首相から目が離せない。(政治部 奥原慎平)