民進党代表選は本当に「保守vsリベラル」なのか? 左派色強い枝野幸男氏の思想を読み解く

野党ウオッチ
民進党主催の憲法集会で、党憲法調査会長として発言する枝野幸男氏=8月5日、さいたま市大宮区(福島範和撮影)

 前原誠司元外相(55)と枝野幸男元官房長官(53)が争う民進党代表選(8月21日告示、9月1日投開票)は、メディアで「保守vsリベラル」の構図だと報じられることが多い。確かに、保守系のイメージが強い前原氏と、リベラル派の党内グループに支援される枝野氏の立ち位置は対照的だ。ただ、枝野氏は「リベラル」というレッテルにいささか困惑しているようで…。

 「代表選の有権者のうち、国会議員に限れば前原氏を支援する者が多い。枝野氏は『リベラル』『左派』のイメージが強く、特に若手から敬遠されている」

 ある民進党幹部は代表選の情勢をこう分析する。

 実際、前原氏がすでに党内の5グループから支援をとりつけているのに対し、枝野氏支援を決めたのは1グループにとどまっている。

 その陣容も対照的だ。前原氏陣営には、自身が率いる「凌雲会」(約20人)や、高木義明元文部科学相(71)を中心とする旧民社党系グループ(約15人)、離党した細野豪志元環境相(45)が創設した「自誓会」(約15人)など、保守色が比較的濃い勢力が目立つ。一方で枝野氏は、赤松広隆前衆院副議長(69)が束ねるリベラル派の旧社会党系グループ(約20人)の支援を受ける。

 支援グループの性格は、両氏が打ち出した政策にも反映されている。エネルギー政策では、前原氏が現在の党方針である「2030年代原発ゼロ」の堅持を掲げているのに対し、枝野氏は年限前倒しも検討する構えだ。共産党を含む野党共闘に関しては、前原氏は「その是非も含めて見直していきたい」と軌道修正を示唆し、枝野氏は「協力、応援してくれる人を排除する理由はない」と訴えている。

 これらの要素を踏まえると、「保守vsリベラル」という表現は、ある程度的を射ているようにも思えるが、枝野氏はぬぐいがたい違和感を抱いているようだ。8月6日に東京都内で開かれた憲法関連のトークイベントでは次のような持論を口にした。

 「保守とリベラルって対立概念じゃないですから。リベラルという言葉は多義的だから。新自由主義的な色合いの強い古典的なリベラルから、多様性を認めて社会保障に力を注ぐソーシャルリベラリズムまで、リベラルだっていろいろあるし」

 「保守といったって、何を保守するんだ、と。僕は(聖徳太子の十七条の憲法にある)『和を以て貴しとなす』からの日本を保守するんだったら分かるけど、安倍晋三首相は明治維新以降の欧米化された日本を保守しようとしてるから、保守する対象が違う」

 党内外に流布されたイメージにはそぐわないが、枝野氏は「日本流保守」を標榜する政治家だ。

 村落共同体を基盤に互助の精神で田植えや稲刈りを行ってきた日本の「伝統的保守」の立場は、むしろ一般的に言われる「リベラル」と親和性が高く、明治維新以降の「欧米型保守」は日本の伝統的保守とは相いれない-。枝野氏の「保守」観をざっくりと解説するとこうなる。

 枝野氏は「多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う日本」を代表選のスローガンとして打ち出している。「日本流保守」のあり方を、あえて「保守」という言葉を用いずに表現したフレーズなのだと私は理解する。

 枝野氏の言動には、自身が唱える「日本流保守」の思想が保守層の賛同を得られないことへの忸怩(じくじ)たる思いもにじむ。昨年6月5日に開かれた参院選向けの街頭演説会では次のように声を張り上げた。

 「『自民党が保守だ』という刷り込みによって、日本の歴史と伝統をぶっ壊している自民党に投票してしまう人がたくさんいます。この人たちを剥がせるかどうかが、この選挙の勝負なんです。私たちこそ保守だ! 安倍首相は保守ではない!」

 枝野氏の持論への賛否はさまざまあるだろう。しかし、少なくとも「保守とリベラルは対立概念ではない」という部分にはおおいに賛同できる。リベラリズム(自由主義)は「革新」や「左」と同義ではなく、「保守」や「右」と対をなす立場でもない。安直な図式化は論戦の争点をかえって見えにくくしてしまうのではないか。

 さて、気になる代表選の戦況だが、前述したように国会議員票に関しては前原氏が優勢だ。前原氏支援の5グループの人数を合算すると約80人に達する。枝野氏に対しては、旧社会党系グループの他に岡田克也前代表(64)らが支援する構えだが、合わせても50人程度にとどまりそうな情勢だ。

 民進党代表選は「ポイント制」で争われ、総ポイントの約半数は地方議員と党員・サポーターで占められる。「地方票」で優位に立たなければ枝野氏が活路を見いだすことは難しい。

 政権を失ってもなお民進党(旧民主党)を支え続けてきた党員・サポーターらに、枝野氏の「保守」思想はどう響くのか-。(政治部 松本学)

 枝野幸男(えだの・ゆきお) 昭和39年5月31日、宇都宮市生まれ。東北大卒業後、司法試験に合格し弁護士に。平成5年、日本新党の候補者公募に合格し、衆院選旧埼玉5区で初当選。以後、当選8回。新党さきがけなどを経て8年の旧民主党結成に参加、幹事長や政調会長を務める。21年の政権交代後は行政刷新担当相、官房長官、経済産業相を歴任。官房長官時に発生した東日本大震災・東京電力福島第1原発事故では連日記者会見を開いて対応した。民主党下野後は26年に再び幹事長に就任。民進党結党後も28年9月まで幹事長を務めた。中学、高校と合唱部に所属し、中学校ではNHK全国学校音楽コンクール全国大会で優勝した経験を持つ。現在も趣味はカラオケで、アイドルの歌を好む。