「まだしてなかったの?」九州北部豪雨でネットに書き込み 安倍政権の激甚災害指定は遅かったのか

安倍政権考
子供たちは警察官に抱きかかえられながらパトカーの待つ安全な場所に向かった=7月6日午後、福岡県朝倉市(恵守乾撮影)

 福岡、大分両県に甚大な被害をもたらした7月の九州北部豪雨。政府は発災から1カ月以上たった8月8日の閣議で激甚災害に指定する。しかし、政府は発災から約2週間後の7月21日、福岡県朝倉市と東峰村、添田町、大分県日田市の4市町村について激甚災害指定する見通しを示していた。指定が正式に決まる閣議決定の前に見通しを示すのは異例の対応だったが、インターネット上では「まだ指定していなかったの?」「対応が遅いのでは」といった批判も相次いで書き込まれた。果たして、安倍晋三政権の災害対応は遅かったのか-。

 「被害額が基準を満たしたものについて速やかに指定見通しを公表した。運用上可能な限り、公表が早くできるような体制を作った」。松本純防災担当相(当時)は7月21日の記者会見で、指定見通しの公表に至った経緯をこう説明した。

 災害発生1週間後の同月12日には、外遊を切り上げて帰国した安倍首相が大分、福岡両県の被災現場を視察した。首相は土石流や流木などによる大きな被害を目の当たりにし、激甚災害の指定について「一刻も早く行いたい。国、自治体が一緒になって最短で作業を進めていく」と表明した。異例の指定見通しの公表は、この首相の表明を踏まえてのものだ。

 激甚災害に指定された場合、被災自治体は公共土木施設の災害復旧費用の国庫補助率が引き上げられるほか、農地や公立社会教育施設、私立学校施設の復旧でも国から財政的な支援を受けることができるようになる。今回の九州北部豪雨でも政府は指定後に橋や道路、農業施設などの復旧事業に対する国の補助率を通常より1~2割程度引き上げ、被災自治体を財政面で支援する。

 災害発生から今回の見通しの表明までに約2週間を要した。その間、被災地の過酷な現状が連日報道されており、ネット上の「対応が遅い」といった批判にもつながった。ただ、過去の豪雨災害のケースと比較すると、今回の対応が遅かったというわけではない。

 平成26年7月9、10日に長野県南木曽町や宮崎県椎葉村を襲った台風8号と梅雨前線による暴風雨・豪雨の被害では、約1カ月後の同8月15日に激甚災害指定が閣議決定され、農地などの災害復旧事業を補助する特別措置が適用された。27年8月24~26日の台風15号でも、被害の大きかった三重県大台町と紀北町の指定の閣議決定は約1カ月後の同9月25日だった。

 こうした災害で指定に時間がかかる理由の一つは被災した自治体側が被害の状況を把握し、復旧費用を算出して国に報告することが求められていることが挙げられる。災害からの復旧にかかる費用が、指定の基準を満たしているかを確認するためだ。

 また、梅雨の期間の豪雨災害では、被害が全国各地に広がる可能性がある。そのため、豪雨災害の被災自治体を激甚災害指定する場合は各地の梅雨明けを待ち、被害状況が確定した後に指定されていた。

 今回の九州北部豪雨では各被災自治体から早期指定を求める要望が相次いだ。そのため、現地に入った国土交通省の緊急災害対策派遣隊「TEC-FORCE(テックフォース)」が防災ヘリコプターからの航空写真やドローンを活用し、農地に堆積している土砂を推計。被災自治体が被害状況をいち早く把握できるように支援し、被災自治体の復旧費用の調査を簡素化した。さらに梅雨明けを待たずに、基準に達したことが判明した地域から指定見通しを公表することとした。

 日田市の担当者は「被害額の算定やテックフォースによる支援など、弾力的な運用をしてもらえた。(指定見通しを受けて)市としても財政面の不安なく、どんどん復旧事業を進められるし、住民にも『国が支援してくれる』という心強いメッセージになる」と国の対応を評価する。激甚災害の早期指定をめぐっては法改正を求める声も上がっているが、内閣府の担当者は「激甚災害の早期指定の必要性は認識しており、不断の検討を行っている。現段階では運用方法を改善するなどして早期指定を実現していきたい」としている。

 毎年のように各地で相次ぐ豪雨被害。同じ地域で、間を置かず次の災害が発生するケースも想定される。被災自治体が財政面での不安なく復旧復興に取り組み、同じ被害を繰り返さないよう素早く備えるためにも、今後も国の迅速な対応と継続的な支援が必要だ。(政治部 大島悠亮)

 激甚災害指定制度 地震や台風、豪雨などの災害で被災地域や被災者に著しい被害が発生し、特別な助成が必要と判断される災害を「激甚災害」に指定し、国が被災自治体を財政面で支援する制度。激甚災害法に基づいて政令で指定される。全国規模で災害そのものを指定する「本激」と市町村単位で指定する「局激」があり、中央防災会議が定めた基準に基づいて判断される。過去には東日本大震災(平成23年)や熊本地震(28年)なども指定されている。