実は、人材難のプロ野球界 侍ジャパンはまた監督未経験者 3月のWBC4位の総括もまだしてないのに

スポーツ異聞
稲葉氏(左)は小久保体制でコーチ経験はあるが、球団の監督未経験のまま、侍ジャパンの指揮を執る(仲道裕司撮影)

 ようやく、侍ジャパン野球の日本代表監督が決まりそうだ。プロ野球日本ハムでスポーツ・コミュニティ・オフィサーを務めている稲葉篤紀(あつのり)氏(44)である。あれ、監督経験ってあったけ、と疑問に思った方も多いはず。そう、小久保ジャパンのコーチではあったが、プロ野球球団の監督経験はないのだ。

 これで、前任監督の小久保裕紀氏(45)に続くプロ野球球団の監督未経験者の就任。母国開催で金メダルはノルマのはずだが、大丈夫なのか…。

 もちろん、稲葉氏の手腕にケチをつけるつもりは毛頭ない。リーダーシップがとれ、人柄については、どの選手も悪くいう人はいない。気難しい面のあるマーリンズのイチロー外野手でさえも、同じ愛知県出身もあって「稲葉さん、稲葉さん」と慕っている。ヤクルト-日本ハムの現役時代の成績は通算2167安打で名球会入り。261本塁打、1050打点の数字を残している。

 選手として、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に2度、五輪は2008年北京大会に出場している。09年WBCでは世界一のメンバーになった。守備・走塁にも定評があった。実績を見れば、打撃コーチ、守備コーチとしてなら申し分ない。ところが、監督となると、采配を振るわねばならない。

 なぜなら、小久保氏は、プロ野球監督経験なしから、いきなり監督に就任。悪戦苦闘したからだ。チームをまとめることや、選手との距離感、相手チームを分析し、どの選手を使うかなど。やらねばならないことは多い。

 巨大戦力の巨人が低迷している原因は多々あるが、その一因になっているのが、高橋由伸監督が選手からいきなり監督になったことによる“経験不足”にあることは誰の目にも明らかだろう。

 さらに、気になるのは、今年3月に開催されたWBCの「総括」が公式になされていないことだ。4位は良かったのか、悪かったのか。確かに、ライバル韓国や台湾などが相次いで敗退した中での準決勝進出でノルマは果たせた。米国とも接戦を演じた。だが、目標は世界一奪還だったのではないか。それが実現できなかった以上、原因を追究すべきだ。

 選手は頑張った。良くやったで、終わっている気がする。喉元過ぎれば何とやら。どこの世界も同じだが、反省、総括なくして次へのステップへ立ち向かえない。

 もちろん、稲葉氏が監督就任の見通しとなったことで、図らずも浮き彫りになったのは、日本代表の候補になる人材が見つからない事実である。

 候補には元WBC日本代表監督で巨人でも長年、指揮を執った原辰徳氏(59)、日本ハムを監督として日本一にするなど名将・栗山英樹氏(56)、前DeNA監督でアテネ五輪で長嶋茂雄監督(当時、現巨人終身名誉監督)に代わって采配をふるった中畑清氏(63)らの名前が挙がった。が、結局、決まったのは稲葉氏だった。

 脂が乗った50代~せいぜい60代前半だとすると、「選手として実績があり」「監督経験もある」の条件にかなうのは、工藤公康氏(54)=ソフトバンク監督、秋山幸二氏(55)=元ソフトバンク監督、伊東勤氏(54)=ロッテ監督=らになるのだろうが、いずれも現役監督としてバリバリやっている世代。日本代表監督を引き受けられる状況ではない。

 日の丸を背負う監督は、プロ野球監督と比べ、過酷だ。重圧もある。国民的な英雄だが、手のひら返しで、バッシングを浴びる。リスクを背負いながら、“火中の栗”を拾う人はなかなかいない。

 侍ジャパンの候補者が見つからない。日本のプロ野球界は、意外と人材難といえる。