CIAの「冥土の使い」に爆撃機「死の白鳥」が訪韓 金王朝の権威の象徴爆破の日は近い? 

野口裕之の軍事情勢
平壌市内の錦繍山議事堂=1990年10月

 中国の民主活動家・劉暁波氏(1955~2017年)の遺骨を納めた容器が海に沈められた。劉氏の「海葬」は、劉氏が眠る墓所が聖地となる事態を恐れた中国共産党が、遺族に「脅し」をかけたと、民主国家のメディアは確信をもって報じている。小欄は、一党独裁国家・中国の“メディア”がこんな“報道”をするのではないかと、構えていた。

 《『火炎放射葬』も珍しくない北朝鮮に比べれば、格段に慈悲深い》

 確かに、北朝鮮では謀反を犯した分子は無論、「目障りという容疑」で火炎放射器で焼き殺すやら、本来対空砲である高射砲で木っ端みじんに吹き飛ばすやら、犬に喰わせるやら…事実とすれば「狂気の沙汰」だ。

 ただし、海に沈められた劉氏の遺骨に、最も「心痛め」ているのは、「狂気の沙汰」を命じた北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩・委員長自身かもしれない。

 この際、米トランプ政権には、米海軍が誇る世界最大級の原子力航空母艦カール・ビンソンを核とする第1空母打撃群の北朝鮮近海派遣命令発出を期待したい。さすれば、「無法者の先輩」に対する斬首作戦による惨めな最期も思い出し、震え出すこと請け合いだ。空母カール・ビンソンこそ、米海軍特殊作戦部隊が急襲→殺害した米同時多発テロ(2001年9月11日)の首魁にしてテロ・ネットワーク=アルカーイダの総司令官ウサマ・ビン・ラーディン(1957?~2011年)の遺体を「どこかの海」で水葬にした「霊柩母艦」であったからだ。米国政府はウサマ・ビン・ラーディンの遺体を奪回され「英雄」に祭り上げられる芽を摘んだのだった。墓が建てられていれば、やはり「聖地」になる可能性は高かった。

 折しも、米国より「冥土の使い」が訪韓してもいて、金委員長の内心は穏やかであろうはずがない。

 「冥土の使い」とは、5月にCIA(米中央情報局)内に新設された対北朝鮮工作の司令塔《朝鮮ミッション・センター=KMC》のボスに就任したアンドルー・キム氏の尊称。米韓首脳会談(6月30日)後~7月6日まで、韓国で隠密活動をしたもようだ。

 金委員長だけでなく、日本のインテリジェンス関係者も「冥土の使い」の動きを、これまで以上に注目し始めた。何しろ、キム氏はCIAのみならず世界を代表する対北工作者で、今年初めに退官したが、KMC立ちあげで現役復帰したほどのエキスパート。現役復帰情報は同盟国・非同盟国を問わず主要国情報機関に駆け巡り、「朝鮮半島情勢に相当の変化が起きる」と緊張が走った、という。

 日本のインテリジェンス関係者は、知ってか知らずか、キム氏が訪韓中に接触した相手の名前を挙げ(られ?)なかった。が、「北朝鮮内の協力者・工作員の実力。特殊作戦部隊の北への侵入路。韓国・文在寅政権の対北傾斜度&北の韓国内諜者と呼応する危険性。北の核・ミサイル開発中止を説得している中国のヤル気度…などを、情報交換したと観るのは自然だ」(日本のインテリジェンス関係者)。

金王朝の霊廟爆破を立案する米軍特殊作戦部隊

 キム氏の協議内容に関し、筆者がとっさに考えたのは、平壌市内にそびえる《錦繍山太陽宮殿》に対する米軍の特殊作戦部隊や無人爆撃機による爆破作戦。錦繍山太陽宮殿には、金正恩・委員長の祖父=金日成・国家主席(1912~94年)と父=金正日・総書記(1941~2011年)の遺体が安置されている。特に金日成・国家主席は「永遠なる領袖」として推戴され、遺体が永久保存される。錦繍山太陽宮殿は金王朝の権威の象徴なのだ。

 錦繍山太陽宮殿の爆破は金王朝の権威の失墜を意味し、金正恩・委員長の体面も大いに傷付く。同時に、北朝鮮の軍・党幹部や人民に動揺が走り、クーデターの起こりやすい環境を創り出す。しかも、いかに秘密主義の金正恩政権でも、爆破の事実を隠蔽できない。錦繍山太陽宮殿はもともと、金日成・国家主席の公務や生活をする国家主席官邸+公邸(錦繍山議事堂)で、平壌市内に所在するが故に多くの人々の目に触れる。宮殿爆破は、CIAなど米国の情報機関が選択肢の一つとして立案済みだと観測されている。

 爆破作戦を敢行するとすれば、実行部隊の有力候補は米海軍特殊作戦部隊《ネイビー・シールズのチーム6》であろう。

 チーム6は、冒頭で述べた米同時多発テロの首魁ウサマ・ビン・ラーディンが潜伏するパキスタンのアジトを急襲し、銃撃戦の末、仕留めたエリート部隊中のエリート部隊。ウサマ・ビン・ラーディンに仕掛けた「斬首作戦」は《ネプチューン・スピア=海神の槍》と名付けられたが、実のところ《ネイビー・シールズのチーム6》との既述表現は正確ではない。ネイビー・シールズは地域別に担任が決まっているナンバーリングされた複数のチームを抱えるが、チーム6は独立した存在。部隊名も《DEVGRU》と変更されて久しいものの、米国政府はDEVGRUの存在自体を認めていない。知性・判断力も要求されるシールズの現役隊員より選抜され、1週間もの間、不眠不休で任務を完遂するなど、驚異的な体力・精神力を問われる。訓練時での死者・脱落者も多いと聞く。 

 かくも猛者揃いのDEVGRUをもってしても、作戦は大きな困難を伴う。宮殿は水堀や高い城壁で囲まれ、特殊作戦部隊を含む多数の警備兵が配置に就いているのだ。金委員長は宮殿の防御を厚くし、警備兵を増強している。祖父&父の名誉を守るためではない。自らの保身のためだ。

 DEVGRUかどうかは確認できないが、米軍特殊作戦部隊は、協力する韓国軍特殊作戦部隊とともに、精ちに製作された錦繍山太陽宮殿の模型で訓練を積んでいる、とされる。急襲→爆破成功率が低ければ、日常的に北朝鮮上空を偵察飛行している無人機による爆撃に切り替わるが、無人機では爆発規模に制約があり、特殊作戦部隊を使った作戦ほどは、軍・党幹部や民心の動揺を引き出せない。 

 従って、もっとソフトな作戦も考えられる。

 人民が飢える中、官邸+公邸(錦繍山議事堂)が10億ドルの巨費を投じて建設され、あまつさえ、官邸+公邸を霊廟にリフォームする際も2億ドルも費やした。加えて、ロシアの技術者に依頼している金日成・国家主席の遺体の維持管理には年間80万ドル以上も掛けている。こうした巨額の実態をビラに書き込み、何も知らぬ人民に向け、無人機で投下するのも効果的だ。

 金正日・総書記の葬儀(2011年12月28日)翌日の韓国紙・東亜日報社説(日本語電子版)に、脱北詩人・張真晟氏の詩が掲載されていたので、紹介しておく。張氏は北朝鮮・統一戦線事業部で政治宣伝・対南工作を目的にした金正日・総書記を称える詩を作り、総書記に評価された。この功績で、金総書記に面会を許される「接見者」に昇進したが、2004年に脱北した。 

 《あの宮殿は/生きている人のためのものではない/数兆ウォンを得ようと億万ウォンを投じたのでもない/死んだ人を埋めるために/三百万が飢えて死ぬ中/華やかに立ち/高く聳(そび)え立ち/誰もが/沈痛に見つめる/三百万の墓だ》

「半島有事前夜」に加計問題の審議に酔う野党

 キム氏は「冥土の使い」の他にも「死に神」という異名があるが、そのキム氏が韓国を離れて2日後、今度は「死の白鳥」と恐れられる米空軍の戦略爆撃機B-1B(愛称ランサー=槍騎兵)2機と、随伴した韓国空軍のF-15K戦闘爆撃機がおのおの、朝鮮人民軍の弾道ミサイル発射台と地下施設に見立てた標的を爆撃。米空軍のF-16多用途戦闘機も加わり精密爆撃訓練を行った。日本海上の空域で訓練後、米韓空軍編隊は北朝鮮との軍事境界線(MDL)近くを威嚇飛行した。4日に試験発射された北朝鮮の大陸間弾道ミサイル=ICBM《火星14型》への警告であった。

 「霊柩母艦」に「冥土の使い」に「死の白鳥」。並の人間なら、恐怖でやせ細るはず。ところが、金委員長は肥えたまま。そこで、というワケではないだろうが、米国防総省内ではこんな「奇策」が練られている。

 《在韓米軍の軍人家族の一斉撤退》

 それも隠密裏ではなく、北朝鮮に分かるように。

 北朝鮮攻撃を決心した米軍が、いの一番にクリアしなければならぬ任務が、在韓米軍の軍人家族を国外に撤退させる措置だ。逆説的には、在韓米軍の軍人家族の国外撤退は、開戦が近い緊張情勢を意味する。

 でも、金委員長が「開戦間近」だと感じても核・ミサイル開発を放棄するとは思えない。むしろ、朝鮮人民軍に出動を下知する。

 それならそれで、部隊移動後の臨戦態勢が判明するし、乏しい燃料・兵糧の消費も強いる。米軍サイドとしても、いつでも対北攻撃に踏み切れるフリーハンドを得る。

 かくなる朝鮮戦争(1950~53年休戦)以来の緊張をよそに、隣国・日本の政界では、学校法人《加計学園》の獣医学部新設計画に関する問題ですったもんだしている。おまけに、獣医学部新設や国家戦略特区の意義についての審議ならともかく、野党は安倍晋三首相のイメージダウンを謀る、およそ政策論議から遊離した攻め方に酔いしれていて、あきれてしまう。

 仮に、学部新設で官僚たちが勝手に安倍晋三首相の友人関係を「忖度」しても不思議ではなく、国家も滅びはしない。けれども、「忖度」する相手によっては、国家は滅ぶ。例えば、金委員長の顔色や「言葉の裏」をうかがう朝鮮人民軍の将軍たちが、勝手に「忖度」して日本に向けミサイルを発射…。筆者が関係者と、金委員長の性格を「忖度」して実施したシミュレーションでは、結果の一つとして現れた。

 全体、野党の国会議員は、12キロトン級(広島型は15キロトン)の核ミサイルが、加計学園の審議を行っている国会議事堂を襲えば、爆心地周辺で42万4千人近くが一瞬にして死ぬ、米国におけるシミュレーションを直視できていない。

 国会議事堂といえば、《紀元前4世紀のトルコ西方域・カリア国の王を葬ったマウソロスの霊廟がモデルだった》との、信頼できる建築史学上の見方が存在する。

 朝鮮半島有事に備えた戦略の熟議を怠り、墓を模した国会議事堂が攻撃され本モノの墓場と化したら、「墓穴」を掘った「加計学園追及専門議員」は責任を取れるのか。国民を墓アナへと道連れにする行為は絶対に許されない。